ふとラジオをつけてみた
ちなみに私はプロレスを見たことはありません。
ザザッ
「おぉーーっと、これをかわしたーー!!いやー中々激しい試合ですねぇ!」
「そうですねぇ澤選手、昨日ご結婚されて今は女ヶ沢選手ですが、技の威力もさることながら、体の動き一つ一つにもキレがありますね。」
「確かに!ラジオの前の皆さんにこの動きを見せられないのが残念で仕方がありませんが、そこを頑張るのが実況のお仕事ぉ!と、ここで女ヶ沢選手、エルボーを繰り出す!相手選手は紙一重で避けるが……これはフェイントだったぁー!!体勢を崩した相手選手にガッチリ掴みかかり、ヒザ蹴り!ヒザ蹴り!ヒザ蹴りぃぃぃ!!」
「ですが相手選手もこのまま終えるとはまだ思えません。どうやら急所は外しつつ反撃の機会を窺っているようです。」
「おぉっと、相手選手、解説の言葉通り抜け出して一旦距離を取り……最接近!怒濤のラッシュだぁぁぁ!」
「ジャブ、ジャブ、フックの綺麗なコンビネーションですね。女ヶ沢選手も上手くかわしていますが、それに翻弄されずラッシュを叩き込み続ける相手選手も中々のものですね。」
「おぉっとここで相手選手の拳がクリーンヒット!女ヶ沢選手フラついています!」
「相手選手すかさず回り込んで……これは綺麗なバックドロップですね。」
「女ヶ沢選手、さすがに起きあがれない!」
「ここで相手選手、フォールに入ります。」
ワン!ツー!ス……
「ここで女ヶ沢選手、返したぁーー!」
「先程の激しいラッシュで消耗したスタミナがここで響いてきましたね。」
「女ヶ沢選手、ゆっくりと立ち上がる!『もう私は"澤"じゃない、100万倍の"女ヶ沢"だ!』の宣言通り力強さを見せつけるようだぁーー!……ところで、なぜ『100万倍』なんでしょうか?」
「あれ、気付いてなかったんですか?数の単位で『メガ』というのは『100万』を意味するんです。"さわ"選手が"メガさわ"選手、つまり"100万倍のさわ"選手になったんですよ。」
「成る程、よくわかりません!」
「えぇー……」
「っと、相手選手、タックルを仕掛けたようです!」
「あっ、この体勢は……」
「女ヶ沢選手、冷静にヒザを合わせたぁー!」
「これは焦りすぎましたね。ここは一旦距離を置いて出方を見つつスタミナの回復を図るべきでした。」
「相手選手、フラつきながらも立ち上がるが……女ヶ沢選手、ここでハイキック!クリーンヒットだぁ!」
「あぁ〜ほら無茶するから……」
「ですがなおも立ち上がらんとする相手選手のガッツを私は称賛したい!」
「ここで女ヶ沢選手、ダメ押しのトーキックです。」
「あぁっ!?だけれどこれは仕方がない!女ヶ沢選手、相手選手をがっちりフォール!」
「これはもう逃げられませんね。」
ワン!ツー!スリー!!
「ここで試合終了ぉぉ!澤選手こと女ヶ沢選手の勝利です!」
「教科書に載せたいくらい見事なフォールでした。」
「本日の試合を振り返ってみてどうでしょうか?」
「どちらも序盤から大技を繰り出す激しい展開で見ていて楽しかったですね。一方、中盤になると完全に相手選手のペースでしたが、思い返すとこれは、女ヶ沢選手が受けに徹してスタミナを回復、温存していたんでしょうね。それで終盤では、スタミナが切れかけ焦る相手選手と、残りのスタミナを着実に削っていく女ヶ沢選手という構図になったのだと思います。」
「成る程、女ヶ沢選手の策略勝ちという訳ですね!」
「ですが、中盤で相手選手が押し切れればそのまま試合が決まっていたことも思えば、容易には先がわからない、全体的に良い試合だったと思いますよ。」
「確かに!私も静と動を使い分ける試合展開だと実況していて楽しいですからね!またこのような試合を見せて欲しいですね!」
「はい、"100万倍の女ヶ沢"選手の今後に期待です。」
「以上!実況、解説は私達、寺沢兄弟がおおくりしましたぁー!」
「それでは皆さん、また次回お会いしましょう」
(2/23:改行位置、一部表現の修正)