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枯れ専女子が中年王国にトリップ!?  作者: 権左衛門
枯れ専女子中年王国にとぶ
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失礼いたしました

「ねえねえ、あの新しく来た体育の先生かっこよくない!?」


「えー、私は数学のあの先生のほうがかっこいいと思うけどなぁ」


「あんなじじくさいのがいいの~?まったくあんたは。。相変わらずおっさん好きだよね~」


「だから!おっさんじゃなくておじさんって言ってよね!ちなみに、あの少し人生に疲れてくたびれている感じがいいの!」


「なによ、そのこだわり(笑)」


友達の笑う声がする。




「あ、先生!彼女いるんですか~?」


話していると向こうから友達お目当ての先生がやって来て、積極的に行動する友達。

私は友達みたいに話しかけに行く勇気はないから、ペコリと頭を下げ

「こんにちは」

と挨拶するだけだ。


先生も「こんにちは」って返してくれる。

恋愛の好きじゃなくていい。

憧れはあるけど、実際に年の差で結ばれるのはかなり大変なことだし周囲の目もある。

こうやって先生に挨拶を返してもらえるだけでいい。

もう少しだけ贅沢を言うと、もっとおしゃべりをしたいのだけれど。



「あー、やっぱりかっこいいよ~!でも、彼女いるって」

前半はテンション高く、後半は下がったように言う友達に私は笑った。


「残念だね~」


「ほんと、それなー。」

彼女いなかったら立候補するのにー、そんな言葉に

「略奪すれば?」

と冗談っぽく返す。


「そこまでしてほしくない」

と友達も冗談と思ったらしい。

ここで、そうしよーとか言われたらドン引きだ。

友達がそういう考えでなくて、よかった。

私も先生の幸せは奪いたくない派だし。






そうこうしていうちに数学のテストが帰ってきた。


「乙田ー」

と解答用紙を手渡される。


「満点だ、よくできてる」

その一言にきゅんとする。


「ありがとうございます」

と小さく呟き、自分の席に戻った。


心臓のバクバクは止まらない。

100点をとったからではない、先生に誉められたからだ。

更に頭を撫でられていたら私は爆発していただろう。

撫でてほしかったけど、顔の赤みが隠すことが出来なくなりそうだったのでこれはこれでよかった。





日は変わって昼休み。

開いている数学準備室を覗き込むと

「おう、乙田」

と声をかけられた。


「先生?なにしてるんですか?」

準備室に入る。


「将棋だよ。あ、お前できる?」


「少しだけなら。。詳しいルールは分かんないですけど」

と一人将棋盤の前に座っている先生の向かいに椅子を持っていき座る。


「教えるから相手してくれんか?お前ならすぐ覚えるだろう」


「私なんかで良ければ……」


先生に教えてもらいながら将棋の相手をぱちぱちする。


ふと先生が声を発し

「この学校もなぁ……」


「はい?」


「この学校も、若い先生が多くなって将棋の相手がおらんくなってなぁ」

そんなことを小さく呟く。


「じゃあ、私が相手をしますよ!」

そう言うと先生は、そうか嬉しいなぁと笑ってくれた。



何度も先生と昼休みにあったりすると、気持ちが大きくなってきた。

膨らんで膨らんでしぼませることができなくなった。

もうすぐで爆発してしまいそう。

そう思った日。


私が良い手を指したらしい。

「お、乙田もやるようになったなぁ」

先生が頭を撫でてくれた。


その時、爆発した。私の感情は。

先生の幸せを奪うつもりなんてなかったのに。

この関係を崩したくなかったのに。

私は。


「先生?」

私の頭の上にある先生の手をとる。


「ああ、すまん。セクハラとかじゃなくてなぁ……」


「わかってます!先生…私………」












ガタガタガタッ


「いたたたたた。久々にやってしまった……」


私は腰をさする。


「ベッドから落ちるなんていつぶりだろ……」

呟いた言葉は部屋の空気に消えていく。

カーテンを閉めている窓からは気持ちの良さそうな朝日が入ってきている。


「それにしても懐かしい夢を見たなぁ。先生……」


夢を思いだし、ぼーっとしていた。


だんだん頭が冴えてきて、ああああああ、と恥ずかしさに身悶えた。


何てことをやってるんだ、私!!!

何を思い出してるんだ!!!!


あのあとお互いがだんまりになって、どうなったんだっけ?


あー、思い出せないし思い出せなくていいや。


顔でも洗ってスッキリしようと手洗い場に向かった。




バシャバシャっ


顔を洗うと気持ちもスッキリしてきたような気がする。

タオルで顔をふき、昨日ワンピースのままで寝ていたことも思い出してクローゼットを開き新しいワンピースを出した。


ここってズボンとか履かないのかなぁと思い一人で着替える。

あ、ユリアンさんにパジャマがないか聞かないと。



コンコンッ

誰かがドアをノックしたらしい。


誰だろうと思ったが、反射で返事をしてしまった。


「はーい。」


返事をしたあとに気づく。

ワンピースを脱いだばかりで下着しか身につけていないということを……。


「あ、あ、ちょ……」

待ってください、という言葉は出せないままドアががチャリと開いた。



ドアに立っていたのは、執事さんだった。

執事さんは、何かを言う前にギョッと目を見開き、

なにも言わずに部屋を出ていく。


私は急いでクローゼットから出したワンピースを上からかぶり、髪の毛を手櫛で整えながらドアへ向かって小走りした。


ドアを開けると、執事さんがこちらに背中を向け右手で顔を覆っていた。

「すいません、お見苦しいところを……」

言った私に振り向き

「い、いえ!こちらこそ失礼いたしました……」

顔を真っ赤にし消え入りそうな声でボソボソっと言った。


慣れていそうな執事さんなのになぁ、と思ったがそれは口に出さずにしまっておいた。




いつまでたっても執事さんがなに言わないので私から聞いた。

「あの、なにかあったんですか?」

私の言葉で、はっとし、

「あ、はい。朝食はなにがよろしいかとお聞きしようと思って。。。」


「わざわざありがとうございます。えーと、じゃあ、雑炊とかできますか?」


「雑炊……?雑炊でいいんですか?」


「はい、大好きなんです。それに朝はあまり食べれないので……」

そう言った私に執事さんは微笑み


「かしこまりました。少しお部屋で待っててください。すぐにお持ちしますので」

廊下の向こうへ行ってしまった。





部屋に戻り、さっきまで着ていたワンピースを畳むと執事さんが朝食を持ってきてくれた。


「フルーツも内緒で持ってきました。あとのおやつでもいいので、是非召し上がってください」

と人差し指を口の前に立て、シーっという仕草をする。


これはこれは。

サティさんもしていたけど、執事さんがするとまた……!!


それもあるけど、執事さんは何て優しいんだ。


ニコニコしながら雑炊を食べ始める執事さんは私の隣に立っている。

「美味しいですか?」


「はい、すごく!!」

私は思わずはしゃいだ声を出してしまった。


「執事さんは食べないんですか?」


「私はもうとりましたので、お気遣いなく。いっぱい食べてください」


「明日も執事さんが持ってきてくれますか?」


「朝食は私の担当なのでそうなりますね」


「あの、お願いがあるんですけど……」

はい?と首をかしげる執事さん。


「明日、朝食を一緒に食べてくれませんか?椅子が目の前にあるのに誰も座ってないのは寂しいので…」


そういう私に執事さんは、困った素振りを見せた。


「それはサティ様に許可をいただかないとなんとも……」


「そうなんですか…。じゃあ、私がサティさんから許可をもらったら食べてくれますか?」


「ええ」

と執事さんはニコリと笑う。


私もつられて笑い、あとで来るだろうサティさんに聞こうと心を決めた。









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