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枯れ専女子が中年王国にトリップ!?  作者: 権左衛門
枯れ専女子中年王国にとぶ
2/18

私はここの執事です

コンコンッ


サティさんの笑顔にバタバタと身悶えていたら、ノックの音がした気がした。


ノック?サティさんが戻ってきたのかな?


コンコンッ


もう1回。今度は確実にノックだ。


「はーい」と返事をしながら扉に近づき、開く。


「お休みのところ失礼します。お着替えを持ってきました。」


扉の向こうには、サティさんより少しだけ年上のブロンドの髪の毛をぴっしりとオールバックにして、スーツを着ている男性がいた。


「着替え……?」


「はい、サティ様に頼まれまして。ゆみ子お嬢様は落ちてきたままの格好だから…と。ちなみに私はここの執事です。」

私の呟きに答えてくれたあと、手を自分の後ろに向け、

「この者が着替えを手伝いますので。」


と執事さんの後ろにいる人を掌で示した。


執事さんの紹介で、前に出てきた子は私と同じ年くらいか少し上の女の子だった。

茶色の髪をひとつに結んでいる。


「ゆみ子お嬢様のお着替えの手伝いをさせていただく、ユリアンです。」


「乙田ゆみ子です。よろしくお願いします。」


「では、私はこれで失礼いたします。あとは任したぞ、ユリアン」


と言って執事さんは帰っていった。


執事にメイド!?

え、なに、サティさんってお金持ちなのかな。

もしかしてすごい人に助けてもらったのかな……?

そういえば、さっき王子って呼ばれていたような…。

しかも、お嬢様、だなんて。

私はただの一般ピーポーです!!!

あ、でも空から落ちてきたなら、ただの、じゃないか。


という心の声を隠し、


私は扉を背中で押し付け、ユリアンさんを中に入れた。


失礼いたします、と言って入ってくるユリアンさんの手には何もない。


あれ?着替えは……?

と思ったら

「もう、クローゼットは開けられました?」

と聞かれた。


「いえ、開けてません……。」


「そうですか。ゆみ子お嬢様のお召し物は全てクローゼットに入っているので」

と言い、ベッドの頭の方面を指し示す。


確かにそこはクローゼットだった。

サティさんの微笑みに悶絶していた以外は、基本的に寝ていたし、あとはサティさんとかがいたから全然気づかなかった。


ユリアンさんはまだ1度も笑わないまま、クローゼットに近づき中身を物色しながら、私と中身を交互に見る。


そして、気に入ったのがあったのか、コクンと一人で頷き1着の服を出してきた。


お嬢様とか呼ばれていたから、ドレスでも出てきたらどうしようと言う私の不安をよそに出てきたのはワンピースだった。


水色がきれいなワンピース。胸元と裾には可愛らしく刺繍が施されている。


「これなど如何でしょう?」


「わぁ、綺麗なワンピースですね」


私がはしゃいだ声を出すと、そうでしょうそうでしょうと言わんばかりにユリアンさんは頷いた。


「では、今お召しになっているものをお脱ぎください。」


その言葉で目が落ちるかと思った。


「ここで脱ぐ……!?」


なに言ってんるんだ?という冷たい目で見られた。


「当たり前です」

の言葉で逆らえないと思って、今着ているのを脱いだ。

今着ている物といっても、学校帰りだから制服だ。

私の学校の制服はセーラー服だ。

ただし、前が少し違う。半分の生地は半分の秩序を破り向こう側へと侵入し、金色のボタンで留められている。

全体的に白の制服だ。そして襟の部分には黒のラインが1本入っている。

その制服を脱ぐと、ユリアンさんがワンピースを手に近づいてきた。


今は下着の状態だ。部屋は丁度良い温度とはいえ、恥ずかしい。


私の羞恥をよそにユリアンはてきぱきと服を着せてくれた。


「少し大きいですかね……?」


とユリアンさんは見ている。


少しくるっとしてくださいの言葉で、私はくるっと1回転する。


「やはり、少し大きいみたいですね。他のも作り直してもらうので今日のところは我慢していただけますか?」


「もちろんです!」

と即答した私にユリアンさんはクスッと笑った。


「そんなにビクビクしなくても大丈夫です、襲ったりしませんから」

と微笑んでくれる。


だが、次の瞬間にはもとの表情に戻り、クローゼットを開け中身を全部取り出すと、失礼しますと言い、どこにそんな力があるのか一人で運んでいってしまった。



「うーん、ユリアンさんは優しいのか怖いのかわからないなぁ。同い年位だから仲良くなってみたい……」


あれ?とふと思う。


サティさんは体がよくなるまでいて良いって言ってたけど、それっていつまでだろう?

ユリアンさんはサイズ調整のために服を全部持っていってしまったし、、、

それより、エルティスさんの診察ではもう大丈夫って言ってたから、もういいような……。


「でも、追い出されたらどこに行けばいいんだろう……」

全然知らない土地みたいだし…。

不安がつもり、とりあえずベッドに座る。


うんうん唸っていたら、開いたままになっていた扉がコンコンとノックされた。


はい、と返事をしそっちを見るとさっきの執事さんが立っていた。


「失礼いたします、ユリアンは……?」


「あ、ユリアンさんなら服のサイズ調整のためにどこかへ行っちゃいました。」


服のサイズ調整……?と思案顔の執事さん。


「サイズが合いませんでしたか?」


「あー……、少し大きくて。」


「そうですか、ぴったりに採寸したつもりが……。申し訳ありません。」


と頭を下げられたが、いつ採寸したんだろうというほうが気になった。


「ということは縫合室のカメルのところだな。」

と言って


「お嬢様、これを」と私にはお菓子のはいったトレイを見せてくれた。


そこには色とりどりのお菓子やケーキが乗っていた。

「今日はまだなにも食べてらっしゃらないでしょう。夕食まで時間がありますから遠慮せずに食べてください。」

と言って、窓際にある机まで運んでくれた。


「おいしそう~!!」

と喜ぶ私に、執事さんは微笑んでくれた。

執事さんも微笑むんだ……!?

破壊力すごい……


「もうすぐしたらサティ様も来られるはずなので。」


と言い失礼いたします、と出ていった。


今度は扉は閉められた。


私は窓際の机に近づき、向かい合った二つの椅子のうち、一つに座る。

ポカポカした日当たりが気持ち良い。


どれから食べようかな~と迷っていると再びノックの音。


コンコンッ


「ゆみ子ちゃん?いるかな?」


この声はサティさんだ。


「はい、います」


と答えると扉が開いた。

入ってきたのはやはりサティさんだった。


「おや、おいしそうなお菓子だね?私もいただいていいかな?」


「はい、是非!」

と、答えるとサティは向かいの椅子に座った。


私はカップケーキに生クリームがふんだんに乗ったのを手に取り食べる。


サティさんはクッキーだ。


「いただきます!」

「いただきます」

とふごふごもぐもぐ食べていると、唐突にサティさんがクスッと笑った。


ん?と食べながら小首を傾げると、ついてるよっという風に自分の口の横をとんとんする。


私が自分の口の横を拭おうとすると、全てが検討違いだったらしい。


サティさんは、手を伸ばすと親指でクリームを拭い、そのまま舐める。


「うん、甘い。」

と笑うサティさんに私は衝撃で固まっていた。


本当にこんなことをする人がいるんだと。

ということはこれは夢なのではないかと。

現実ではなく夢。

だってこんなに良い思いをしてるんだから、夢であってもおかしくない。


私は頬を引っ張る。


「いひゃい」


と言う私に、驚き目を見開くサティさん。


私が頬を引っ張るのをやめたら、そこを撫でてくれた。


やっぱり夢じゃないのか、これ。







「はぁー、美味しかったね。おや、おじさんが甘いものなんてって思ってないかい?」

と笑いながらサティさんは言う。


おじ様が自分のことをおじさんって言うなんて……!

やばい…!!来るなぁ、これ!!


心の中でハスハスしながら言う。

「そんなこと思ってないですよ!」

むしろ、ごちそうさまです!!

お菓子もその発言も!!



ところで、とサティさんはちゃんと座る。


「何か思い出したかい?」


「いえ。なにも。」


「そうか~。何も思い出せなかったらここを出ても大変だよね。」


すっと俯く私にサティさんがポンポンと頭を撫でてくれた。


これ癖なのかな?と思うと


「じゃあさ!」と明るい声を出すサティさん。


「ここで暮らさないかい?」


「サティさんのお家で!?」


嫌かい?としゅんとしそうになるサティさんに慌てて首を振る。


「全然嫌じゃないですけど、ご迷惑では……?」


「全然迷惑じゃないよ。大丈夫。ここにはメイドも執事もいる。しかも安全!何か思い出すまでここにいたらいいよ」


とサティさんは言う。


「じゃあ、お言葉に甘えさせていただきます……」

と言うと笑ってくれた。





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