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枯れ専女子が中年王国にトリップ!?  作者: 権左衛門
枯れ専女子中年王国にとぶ
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ニホン?どこだい、それ?

「はぁー。どっかに格好いいおじさんいないかなぁ。」


そんなことを学校の帰り道に呟くと隣いた友達が変な声をだした。


「ぎょえ!あんたおっさんがいいの?」


「おっさんじゃなくておじさんと言って!」


「そんなのどっちでもいいじゃん。」


「よくないの!!」


んもう、と心の中でぶつくさ言う。


おっさんだと禿げた人とか太った人を想像しちゃうでしょ。

私がいうおじさんはスラッとしてて優しくてかっこいい人のことなの!と理想のおじさんを頭の中で浮かべる。


浮かべたおじさんにニヤニヤしていたのが顔に出たのだろう。


「何ニヤニヤしてんの、この枯れ専めっ!」


何を言われても聞こえない~。


ふふーんと鼻唄を歌う。



「じゃ、私こっちだから。また明日ね」

と友達にバイバイを言った。


「また明日~。」


友達と別れ、一人妄想をしながら歩く。


お察しの通り、私は俗に枯れ専と言われる女子です。


枯れ専としてはまだまだで、駆け出しみたいなものです。


でも、イケメンのおじさんや優しそうなおじさん、ワイルドなおじさんにハスハスしてます。


枯れ専だから同い年や年下、少し年上なんて興味がない。そのせいか彼氏がいない。

友達にはそれだけじゃないだろ、なんて言われるんだけどね。


しかも、まだ未成年だからおじさんたちには相手にされない。


オトナノジョセイノミリョク、というのが足りないみたい。


でも、妄想するのはタダ。


こんな風に学校の帰り道で、おじさんとドーンしちゃってお知り合いになって。


という妄想。


おじさんとドーンしちゃったシーンを頭に浮かべると


ドーンっ


本当に何かにぶつかってしまった。


そしてそのまま吹っ飛んだ気がした……。







「んんんんん……」


パチッと目を開く。


天井は真っ白。


病院……?


いや、病院にしては下がフカフカしすぎているし、薬品の匂いなんてない。


視線を少しずらし壁を見ると、豪華な作りになっている。


なんと言えばいんだろう、庶民の私には説明する言葉も浮かばない。


とりあえず、豪華、の一言に尽きる。


更に視線を下にずらし、私は自分が何に横になっているのかを見た。


ふわふわしている敷き布団だ。


床から高さがあるからきっとベッドだ。

私の上には、軽い掛け布団のような物がかけられている。


「ここはどこなんだろう。」


と呟いた。


「おや、目覚めたのかい?」


え……


誰かがベッドに近づいてくる。


ベッドの傍にたった人は、髪の毛をオールバック風にし、白い服を着ている40代ぐらいのおじさんだった。

決してジャージなどではない。どこかの国の警察の方や貴族の人が着ているような服装だ。よく似合っている。

髪の毛は黒いが、少し日本人離れをしている顔だ。


「どこか痛いところはないかい?」


「あ……。はい、ありません……。」

初めてみるイケメンおじさんーいやこれはおじ様と言ったほうがいいーに声をかけられしおらしく返事をする。


「そうか、それならよかったが一応うちの医者に診てもらったほうがいいな。後で来てもらおう。」


おじ様はそう言った。


「いや、君が急に空から降ってきたときはびっくりしたよ。私が道を歩いていると、ひゅーって落ちてくるからなねえ。びっくりして受けとることができなかったよ。ごめんね。」


とおじ様はすまなさそうだ。


「あ、いえ……。」


ん?空から落ちてきた!?


「あ、あの私空から落ちてきたって……。」


「ああ、そうだよ。空から落ちてきたんだ。」


どうして空なんかから?と聞かれたけど私にもわからない。

こっちが教えてほしいくらいだ。

私は何かにぶつかっただけ。それだけなのに空から落ちてきた、なんて。ここは日本じゃないんだろうか。


首を横に振ると、そうだよねと頭をぽんっとされた。


「君の名前は?」


「乙田ゆみ子です。」


「ゆみ子ちゃん、って言うのか。珍しい名前だね。私はサティ・エクロルだ。サティって呼んでくれ。」


あ、やっぱり日本人じゃないんだ。


でも、話してるのは日本語だよね……?

私、日本語しか喋れないし。


「あの、ここってどこですか?日本ですか?」


「ニホン?どこだい、それ?今、君や私がいるここはビスキーという国のコクンという町だ。」


ビスキー?コクン?

聞いたことのない国名と地名だ。


でも、まぁ、私は地理が苦手だから私が知らないだけかもしれない。


「ビスキーってどこらへんですか?ヨーロッパ?辺りですか?」


「ヨーロッパ?そんな地名は聞いたことがないな。」


え!?ヨーロッパを聞いたことがない?


「アメリカの近くですか?それともアフリカ?」


「どこの地名も聞いたことがないなぁ。」


じゃあ、ここは地球じゃないの?

私は地球を飛び出しちゃったの?

ここが地球じゃないなら、ここは異世界?


おろおろしている私を見たせいかサティさんは頭を撫でてくれた。


「よくわからないけど大丈夫だよ。何かあったら私が力になってあげるから。とりあえず体調が良くなるまではここにいていいから。」


大丈夫なのか本当にわからない。大丈夫じゃない割合のほうが高い気がする。

でも、とりあえずお礼は言った。


「ありがとうございます。お言葉に甘えさせていただきます。」


うん、とサティさんは私に微笑んでくれた。

その微笑みに私は頭がクラクラするのを感じて、意識を手放した。










「もうだ………ぶですよ」


「そ…か。よか……た。」


意識が徐々に浮き上がっていく。


「ところで、どうしたんです?この女の子。」


まさか恋人ですか?と怪しむ声が聞こえる。


ははっと笑う声がし、「違うよ、空から降ってきたんだ。」


「はぁー?空からですか?またそんな嘘を……。恋人なら素直に言ってくださっても構わないのに。」


「だから、本当に降ってきたんだって。信じてくれよ。」


「はいはい。まぁ、少しの擦り傷もありますし信じるとしますか。」


どのタイミングで目を開いていいかわからず、狸寝入りをしていた。


「こら、盗み聞きはその辺にしたらどうですか、お嬢さん?」


という声で目を開けた。


「すいません、盗み聞きするつもりなんてなく……。」


と体を起こしながら言うと、はははっと笑い

「わかってるよ」と言われた。


「あんまりからかうんじゃないよ、エルティス。」


「すいません。可愛かったからついからかいたくなって」

と少し白髪の混じった灰色の髪に銀縁の眼鏡をかけ白衣を着ている、これまた顔立ちが整っているおじ様が言った。

こちらの男性もまた白衣がよく似合う。白衣の下はネクタイが見えるからスーツだろうか?



「いえ……。」と苦笑いする。


「ああ、紹介が遅れたね。ゆみ子ちゃん。こちらは医者のエルティスだよ。エルティス、こちらは乙田ゆみ子ちゃん。」


ペコッと会釈をした。


「初めまして、エルティス・ルドガーだ。よろしく。」


「は、初めまして。乙田ゆみ子です。よろしくお願いします。」


「んんんー、やっぱり若い女の子はいいですね~。」

とエルティスは笑う。


「やめろよ、エルティス。この変態医者。ゆみ子ちゃんが反応に困ってるぞ。」


「ああ、すいません。つい本音がポロリと。」


ははっと苦笑いするしかない。


「そうだ、ゆみ子ちゃん。痛いところとか気分悪いところとかない?」


やっと医者らしいことを言った。


「あ、はい。ないです。」


「じゃ、大丈夫だな。王子、異状はありません。大丈夫ですよ。」


「そうか、忙しいところありがとうな。また一緒に飲もう」

と言ったサティさんに、はいと返事をするとエルティスは失礼します、といい出ていった。


「ごめんな、悪い奴ではないんだけど。少し軽い奴でな。」


「いえ、全然。」

逆にごちそうさまです。と心の中で付け加えた。


「ところでサティさん。」


「なんだい?」


「サティさんって王子様なんですか?」


ギクッという音が聞こえたような気がした。


サティさんの目が落ち着きなくキョロキョロする。


「あー、いや、うん。そんなようなものだよ。」


とはっきりしない。



「あー、あ、誰かが私を呼んでいるような気がするなぁ。行かないと。」


と言い小走りで部屋の扉に近づいていった。


そして、出る直前で振り向き


「あ、そうだ。なるべくこの部屋からは出ないようにね。トイレとかお風呂はここにあるのを。暇だったらそこの本棚の本を読んでいいから。お腹がすいたらベルを鳴らして。」


と壁にある本棚と、ベッドの隣の小机の上のベルを指差す。


コクンと頷く私を見て、また微笑みに部屋を出ていった。


「あー、やばい。あの微笑みは反則でしょー…。」


と私は枕をつかみ顔に被せるとそのままボスンとベッドに沈んだ。




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