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全く異なる被害者

短くてすみません。

挨拶をした後にさりげなく謝るのが良いか、最初から全力で謝るのが良いかを考えながら寮のホールへ向かう。

遠くにルージェンスが見えた時点で全力で謝ろうと決めた。

しかしルージェンスの後ろに転入生がいるのを見て、謝るという決意はどこかへとんでいった。


仲が、良さそうだな。

転入生の両手がルージェンスの首に回っており、かなり密着していることが分かる。

ルージェンスも笑顔で話している様子からも親密な関係であるということが伝わってきた。

好き好んで見たい光景ではないので、気配を消して寮からでた。

ルージェンスは点呼ギリギリになってようやく教室に入ってくる。

恐らく私がいるかを探すために辺りを見回しているが、無視を決め込んで友人と話す。

ルージェンスは私を見つけて怒ったようにこちらに向かってきたが、ちょうど点呼の時間になったので椅子に座る。


その後も避け続け、3限の途中で魔獣が現れたという音が鳴った。

風紀委員長が対応するから授業に出ていて良いと言われたが、気になって授業に身が入らない。

4限まであった授業をすべて受けた後風紀室へ走る。


「どうなりましたか?」


息を切らして風紀室へ入った私の様子に風紀委員が驚いたようにこちらを向いた。

目的であるオリア先輩や風紀委員長は見つからない。

近くにいた風紀委員にオリア先輩たちがどこにいるかを聞く。

どうやら風紀委員長室にいるらしい。

風紀室の中にある風紀委員長室の扉をノックし、中に入る。


「リュウカか。」


魔獣の事件の話をしていると空気が重くなることは良くある。

しかし普段よりもなお重い空気に嫌な予感がする。


「今回の被害者は生徒会の副会長だ。」


「ふ、副会長!?」


なぜそんな人物が狙われるのか分からない。

今までとは襲われる人が違いすぎる。

女子生徒である事は間違いがないが、他に共通点が見いだせない。


「副会長は婚約者がいたのですか?」


「いや、いない。婚約者どころか付き合っている人すらいないとのことだ。」


「えっ、それでは……。」


「被害者の共通点が全くもってなくなったな。もう次に狙われるのが誰だかオレには分かる気がしない。」


頭を押さえる風紀委員長の横でオリア先輩もため息をつく。


「とりあえず闇魔法と召喚魔法が使える生徒と教師を上げる作業は終わったわ。隅から隅まで調べて生徒は5人で教師は1人しかいなかった。これからは被害にあう人を未然に防ぐというよりはこの6人の中で怪しい動きをしている生徒がいないかを調べた方が良いかもしれないわ。」


「とりあえず教師を中心に見張るつもりだ。」


なるほどな。

この6人の中では教員が犯人の可能性が高いだろう。

何しろ学園の召喚魔法の授業では自分で召喚用の魔法陣を書いて召喚を行うことなどない。

召喚魔法の研究室では実際に召喚の魔法陣を書いて発動するかまで行ったりするらしいが、今回名前の上がった生徒の中で研究室に入っている生徒はいない。

ともなれば教員以外に魔獣を召喚できる人はいないかもしれない。


「見張るという事は護衛をやめるという事ですか?」


「いや、護衛はもう少しの間つけておく。今回の襲撃が捜査を攪乱するためのものでないと言い切れない。 見張りには別の風紀委員をつける。副会長が襲われた以上、魔獣の襲撃事件が明るみに出るのも時間の問題だろう。」


風紀委員長のいう事には説得力があるため頷く。

気になる事を聞いたところで、ルージェンスがいない事に気づいた。

私の疑問を読み取ったようでオリア先輩が紅茶を入れながら口を開く。


「今回生徒会が襲われたから生徒会長はしばらくの間風紀室に来れないと言っていたわ。」


「生徒会長が来れないとなっても今後は風紀委員も使っていくつもりだから問題ないだろう。いまだ風紀委員が事件に関与してないと言い切れないが、事件が大々的に広まる前になんとか食い止めたい。危ういかけだが、オレは風紀委員を信じている。」


「もし犯人が風紀委員ならば情報が漏れてしまって犯人を捕まえるのが遅くなってしまうわ。けれど風紀委員が犯人だとしても簡単には魔獣で人を襲えないように単独行動を禁じる予定よ。流石に私生活までそうしてもらう事はできないけれど、風紀委員の仕事の時は3人1組で行動してもらうわ。」


2人とも辛そうな表情を浮かべており、苦渋の決断であるという事がうかがえる。

もし魔獣の襲撃が召喚魔法によるものだとしたら犯人は6人に絞られるのだがな。

6人のリストに視線を落とす。

その中に転入生の名前が入っていたのがやたらと印象的だった。

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