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お怒りの黒猫

今までのと異なりスノーウルフが出現したことに色々な憶測が飛び交う。

しかし犯人に迫るような事は何一つ分からなかった。


「そういやさ、前に結界内に仮死状態の魔獣を入れる事件があったって言っただろ? どうやら魔獣を仮死状態にするのがかなり大変らしいが仮死状態にさえすれば亜空間に魔獣が入れられるらしい。そういう論文が見つかった。」


「大変ってどうやったら仮死状態になんてなるのかしら? 訳が分からないわ。」


「闇で魔獣を覆い、重圧すると仮死状態になるんだとか。実際にできるのかは知らん。」


はじめて聞く内容に興味が湧き出てくる。

闇で魔獣を覆うという事は闇魔法を使うという事だ。

精霊魔法の中の闇でも可能なのだろうか。

目を輝かせて話しを聞いていると、ルージェンスが頷いた。


「可能ですよ。私もその仮死状態にする事が出来るという話を以前聞いた事がありまして、その際に試してみました。結果は仮死状態になりました。まぁ、私がやったのはFランクのホーンラビットですのでスノーウルフほどの魔獣でも可能かは分かりませんが。」


「なるほどな。あー、他に報告と言えば教師は白の可能性が高い。犯人と思われてた教師は今日エレンツ王国の魔法の軍事練習の結界を張るために留守だ。」


「教師が白ですか……。そうなると召喚魔法を使って魔獣を召喚する可能性は低いという事ですか?」


投げやりな様子の風紀委員長に問いかける。

すると風紀委員長の眉間のしわが増えた。


「使われている魔獣がウルフ以外いない事から召喚魔法を使っていないとは言い切れない。普通に魔獣を捕まえてくるのならばもっと種類がばらけているはずだ。」


「確かに……。」


「とりあえず犯人が空間魔法と闇魔法を使える可能性が高い。両方とも珍しい魔法だから使える人を上げてみるか。それ以上今のところ言えることはない。解散!」


重くなりそうな空気を吹き飛ばすように風紀委員長が声を上げる。

それに合わせて風紀委員長以外の3人で風紀委員長室から退室した。


「私も何か手伝いましょうか?」


ブレザーが届いていないためいまだローブであるものの書類整理くらいならできる。

そう思ってオリア先輩を見たが、オリア先輩は首を横に振った。


「いいえ、今日はもう休んでいいわ。スノーウルフとも戦って疲れたでしょう?」


パチンとウインクまでしてきたオリア先輩の厚意に甘え、寮に戻る事にする。

ルージェンスも生徒会室へ行くようで一緒に風紀室を出た。

よく考えてみるとルージェンスとこうして歩くのは久しぶりだ。

並んで歩いているとどうしても喧嘩してしまった事を思い出す。


「あー、その、えっと、なんだ、心配してくれただけなのに意固地になってルージェンスを無視してしまった。本当にすまない。」


歯切れ悪く言葉を紡ぐ私にルージェンスが笑う。

ニッコリという笑い方ではなく何か悪巧みでもしていそうな黒い笑顔だ。


「それだけじゃなくて、ここ数日俺の事を避けていたよな?」


「うっ、そ、それはルージェンスが転入生と仲睦まじげだったから邪魔したら悪いというか、どんな顔して話せばいいか分からなかったというか……。」


「ふーん?」


「ほ、本当だぞ。べ、別に何かやましい気持ちがあったわけじゃない。」


ふらふらと視線を彷徨わせるとルージェンスが普通に笑った。


「別に責めてない。最初は言い過ぎたせいかと思ったが、転入生に抱き付かれているのを見られていたと噂に聞いた。今日転入生を抱き寄せたのはわざとだがな。」


「なっ、なんで?」


驚いてルージェンスを見るが、ルージェンスは不敵に笑った後、私に背を向け生徒会室の方へ進んで行ってしまう。

追いかけて聞いたところで答えてくれないだろうと思い悶々としながら寮へ歩き出す。


なぜルージェンスが転入生を抱き寄せたのだろうか?

転入生の事が好きなのだろうか。

その事ばかりがループする。


寮が近づいてきた時、ふと清涼な気配を感じて辺りを見回す。

すると水貴みずきが転入生と話しをしていた。

ここからでは水貴の表情は分からないが転入生は頬を赤く染め、いかにも恋する乙女といった様子だ。

精霊が人間に恋をする事などあるのだろうか?

よく分からないが、あちらこちらの男性にすり寄る転入生が何とも不思議だった。


寮に帰ったとたん黒い猫がとびだしてくる。

抱きとめると思い切り胸に顔を擦りつけてきた。


「ナァーオ。」


おさまる気がしないぐりぐりをそのままに部屋の中に入る。

靴が泥だらけだったので精霊魔法を使って綺麗にした。

ソファーに座ると一気に疲れがやってくる。

このまま眠ってしまいそうだ。

目を閉じようとすると、抱えていたルナが不機嫌だとでも言うように猫パンチを繰り広げてきた。


「んー? どうかしたか?」


「ナー、ナーオ!」


何かに怒っているらしい。

何かしたか?

睡魔に襲われている頭では思い当たる節がなく、ルナの頭を軽く撫でる。


「ナオーン! ナァー。」


物まねを始めたルナを見てようやくスノーウルフに襲われた時に呼ばれなかったのが気に食わないのだと分かった。


「悪かった。今度は呼ぶ。今回は気がどうてんしてしまってな。やはり旅をしていた頃よりも色々と衰えているようだ。明日からは鍛錬をするから許してくれ。」


最後はもう何を言っているかよく分かってないような状態だったが、ルナはしょうがないなという顔になる。

ルナは強い精霊ではないため私の居場所を特定する事はほとんどできないが、弱すぎる訳でもないため何かと戦っていると気づくことはできる。

契約のあり方にもよるが、私とルナは遠く離れていても互いの魔力の推移が分かり、近くにいれば感情まで分かるという魂の契約を結んでいる。

そのため戦いに呼ばれなかったのがかなり悔しいのだろう。

今度はしっかり呼ぼうと思いながら目を閉じた。

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