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頻発する魔獣被害

犯人を絞って見張りをつけたものの、ここ数日の間に次々と被害者が増えていく。

副会長の次に襲われたのは生徒会の書記でその次は全く違いオリア先輩が狙われた。

私は除くとしても風紀委員にまで手が伸びているのは驚きだ。

オリア先輩の次に襲われたのは2年Sクラスの学級委員だった。

役職持ちが狙われるのかと思ったら、今度は風紀委員長のファンクラブの会長が襲われる。

死者こそ出ていないが、実家に帰るという生徒まで出る始末。

もう授業すらまともにできていない。

教師陣は学園を閉鎖することも視野に入れているようだ。

現状を確認するためにぶつぶつと呟いていると、風紀委員長が待ったをかけた。


「いや、学園は閉鎖させないだろう。学園を閉鎖すれば犯人が誰だか分からないまま野に放たれる事になる。魔獣を放つような危険人物を野放しにするなど、ほとんどの国が許さないはずだ。例え学園内で死者が出ようとも犯人を確保する事の方を重視するだろう。」


風紀委員長が書類を読みながら紅茶を飲む。

野性味を帯びたその顔は少しやつれている。

魔獣の件で教師や生徒から責められているのが原因だと思う。

忙しいというのに転入生に付きまとわれている事もやつれる要因のひとつかもしれない。


「ルージェンスもそのような事を言っていました。学園を檻として犯人を閉じ込めるだろうと。」


「学園が檻か……。言い得て妙だな。」


風紀室にいても特にやる事がないため気分転換もかねて庭を歩く。

学園全体が重い空気に覆われており極力1人で行動するなという理事長の指示が出ているため、庭には人の気配がほとんどない。

心なしか淀んで見える空気を振り払うように浄化がかかっている指輪を触る。


「ねぇ、私と付き合って。今婚約者もいないのでしょう? 満足させてあげるわ。」


甘くねっとりとした声が聞こえて声の主を探す。

少し離れたところにルージェンスと転入生の姿が見えた。

驚き胸がはねる。


転入生は何て言った?

付き合う?

満足させる?

混乱しているうちに2人の距離が縮まった。

くっつく2人が衝撃的で視線が外せない。

ただ転入生とルージェンスを見ていると、手首を掴まれた。


「なっ!?」


突然の事に驚いて後ろを振り向くとオリア先輩がいる。

オリア先輩は怒りを湛えた表情のまま私の手首を掴みどこかへ向かって歩き出す。


無言で進んでいき、たどり着いた場所は学園のカフェだった。

ちょうどティータイムの時間ではあるが、人は少ない。

オリア先輩は従業員にここからここまでとケーキの欄を指して注文する。


「そうね、私は紅茶が良いわ、ストレートの。リュウカは何が飲みたい?」


「えっっと、私もストレートの紅茶でお願いします。後は季節のフルーツタルトを1ついただけますか?」


先輩のここからここまでは置いておいて、自分の食べる分を頼む事にした。

しかしオリア先輩が笑う。


「フルーツタルトなら入っているわ。でも季節のは入れてないわね。それは2つお願い。他は1つで良いわ。リュウカも一緒に食べましょう。私がおごるわ。」


私の席からでは先輩の注文した量が分からないが、恐らくかなりの量だと想像できる。

一緒にとはどの程度食べる事を意味しているのだろうか。

ケーキは好きだが、3個も食べれば限界だろう。

そうは思うものの先輩のおごりと言うので無碍にはできない。


「あ、ありがとうございます。」


「さて、どうやらあの生徒会長も転入生に付け狙われているみたいね。」


ちらちらとメニューを見ながら先輩が告げる。

まだ何か頼むのだろうか。

先輩の頼む量に恐怖を覚える。


「付け狙われているのかは分かりません。ルージェンス自身特に抵抗しているように見えませんから。」


前回の時も今回もルージェンスの首に転入生の手がまわっていた。

2回ともルージェンスが転入生の手を外そうとしているようには感じられない。

転入生をうらやましいと思う気持ちが湧き出てきたため軽く頭を横に振った。


「そうなの? まあ、あの生徒会長に限って本気という事はないでしょう。ただ、あの転入生ヴォルグにも手を出してきているのよ! 何股をするつもりなのかしら。信じられないわ!」


オリア先輩の額に青筋が出現する。

今日カフェに連れてこられたのはこれが原因か。

何となく理解して、どう慰めるか言葉を探す。


「風紀委員長は好き好んで転入生を近づけているわけではないと思いますよ。」


「そんなわけないじゃない。転入生が近づいてきた時のあのにやけた顔! 本当に頭にくるわ。」


オリア先輩が怒りに燃えているうちにケーキが運ばれてきた。

従業員の人が恐る恐るケーキを置いていく。

オリア先輩はフォークを手にとり臨戦態勢だ。


「さて、ケーキが来たことだし食べましょう。嫌な事は食べて忘れるのよ!」


とりあえず季節のフルーツタルトを手元に置き、ゆっくりと食べる。

私が一皿食べ終えた頃にオリア先輩は3皿のケーキを食べ終えていた。


お、おなかが苦しい。

クリームが喉元まできてるよ。

結局私が5皿、オリア先輩が18皿のケーキを食べた。

しばらくケーキは見たくない。

口元を押さえる私の横でオリア先輩は満足そうに笑っていた。

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