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拷問の森  作者: 凜音
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私は誘拐されたようだ

いわゆる自己満足のための小説です。

グロいのが苦手な方は見ないようにしてください。

頭が痛い。


割れるように頭が痛い。


もしかしたら本当に割れているんじゃないかと確認しようとして手を動かせなくなっていることに気づく。心因性のものとかではなく単純にどこかに縛り付けて固定してあるようだ。


どういう状況か全く理解できない。

五感を総動員して情報を集めてみる。


まず、視界はない。ただ暗黒が広がっているだけだ。人間の最も頼りにしている情報源が絶たれている状態といえる。

次に聴覚。しかし、聞こえるものといえば自分の息づかいくらいなものだ。いや、もっとよく聞いてみると微かに時計の秒針の音がする。


ちくたくちくたくちくたくちくたくチクタクチクタクチクタクチクタク…


時計の音を聞いていたところで時間が分かるわけでもないので意味はないだろう。


嗅覚に頼ってみる。湿った土のようなにおいがする。ここは屋外なのだろうか?しかし、触覚を意識せずともここが土の上でないということはわかる。空気は冷たいけど湿気も伴う冷たさで、あまりいい気分ではない。嗅覚に頼ることを諦めた。私は犬じゃないのだ。

味覚を意識してみると少し土の味がした。やはりここは屋外なのだろうか。さらに、土の味とともに若干血の味もする。余計気分が悪くなってしまった。

最後は触覚。今の状態では一番頼りになりそうである。

自分の姿勢から察するに私はどうやらいすに縛り付けられているようだ。

肘掛けのあるいすで、私の腕は肘掛けに何かで強く縛られている。ぴくりとも動かせないというわけではないがこの拘束はそう簡単に解けそうにない。両足はこれまたいすの脚に何かで強く縛られていて身動きがとれない。


ここまでで情報収集は終わりである。現状の打開策どころか現状すら把握できていない。

これからどうなるんだろうという恐怖がないでもないが拘束されて身動きできないという現実的にあり得ない状態にある今希望的観測はしないほうがいい。最悪、殺されるかもしれない。


…現状把握のために最も有効な手段として記憶をたどるという方法があることをたった今まで忘れていた。早速昨日?のことを思い出してみよう。


今日が昨日の明日であるとするならば昨日は土曜日で今日は日曜日のはずだ。

昨日私は休日であることを利用して外出をした。残念なことに一緒に出かけてくれる友達はいないので一人でだ。一人で街の中心部に行き、一人で買い物をして一人で家に…


なるほど。

昨日家に帰ろうと電車に乗ったところは覚えているけど、家に到着した記憶はない。これはつまり家に帰るまでの間に何かがあったということだ。私の家は街の中心部から電車で一時間、そこから徒歩10分という場所にある。電車内では買った本を早速読みあさっていたからここではなにもない。電車から降りたのも覚えている。いつもの帰り道で、いつもの看板を見て…

ここか。

いつもの「飛び出し注意」と書いてあってもう明らかに助からない位置関係に車と子供がいる看板を見た後、後ろに気配を感じた。そして後ろを振り向くまもなく意識が暗転し、目覚めたらこの様というわけである。


なんてこと、状況的に見てこれは誘拐ではないか。

しかしなぜだ?

私の家族は良くも悪くも一般人だ。身代金目的ではないだろうし、私の両親が子供を誘拐されるほどの恨みを買うとは思えない。お父さんは普通の会社員だし、お母さんは専業主婦だ。父の会社はいわゆる大企業だけどその下っ端で上のために頑張っているお父さんは人に恨まれる機会がないだろう。正直なところチャンスに弱いのでいいところはみんな周りにとられてしまっているようだし…


では、なぜだ?

高校生の女の子であるところの私がたまたま通りがかった犯罪者予備軍に見初められて犯罪者予備軍が名実ともに犯罪者となってしまったのだろうか。

うん、その方が納得のいく考え方ではある。


いや…おかしい。

監禁する場所とか、道具を準備してあったのだから突発的な犯行ではない。

どれくらいの時間がたったのか判然としないが、金曜日の夜は次の日が休みということでほとんど眠らなかった。つまり、睡眠不足だったのだ。それなのにいまそんな兆候は全くなく、むしろ頭はすっきりとしている。かなり長い間眠っていたのだろう。

当然一日家に帰ってこなかった時点で家族からも「友達いない認定」されている私は捜索されたはずだ。

それなのに私がまだ発見されていないということは結構見つかりにくい場所に監禁されているのだ。


そんな場所簡単に用意できるわけない。

と、いうことはこれは計画的な犯行なのだろう。

未だに動機は不明だけど。



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