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Epilogue

薄暗い部屋だった。目の前には牢屋、シードは牢屋の中を覗いていた。シードはここに居るがここはロゼーではない、王都……いや、今は“首都”ボルーキの軍事刑務所だ。

「クレインさん、ハリー……ニルスさんから連絡があった。終戦協定が結ばれたらしい」

王はこの国からいなくなった。ウィル王子は生きていたが隠れて過ごすことにしたらしい……

「北にあったオレクスの森は結局エアリーに取られた。最後の最後にシレーナを取られたのが痛手だったみたいだが……」

「元々シレーナはロデッサのすぐ北……領有上エアリーが有利だ。しょうがない」

久々にクレインの声を聞いたような気がした……最後に聞いたのはいつの頃か?

「だけど死の土地の領有権はこちらが得た」

あんなところを貰ったってと思うかもしれないが神の枝の中和効果は素晴らしく今ではワクチンを打たなくても防護服程度で入ることができる。ヒロキによればあと一年も経てば人も暮らせるし畑もできるだろうとのことだ。しかもこの土地には現状ジライソウが生息していない……しばらくして生えてくるかもしれないが今のうちにヤカタノキを植樹しようとの動きがある。

「それにビッグニュースが一つ、死の土地の地下に天然ガスが眠っていることが分かったとのこと……向こう100年は持つほどの貯蔵量らしいです」

「調子に乗ってオレクスの時みたいに無駄遣いしないことだ」

今度はハリーが突っ込んできた。

「そしてフォイップは王政から卒業、初の大統領選を迎えるわけだが……」

これは完全にアレン親子の思う壺であった。目の前にいる親子は王制を倒して自分がトップに立ちたいのではなく単に王制を倒すだけが目標だったのだ。つまりウィル王子が父親に反抗心を燃やしている中でガデム国王を処刑するクーデターを起こすだけで彼らの目的は達成されたことになる。




一頻り話し終えて部屋を出た。ここは牢の中でもとびきりにシークレットな場所だ。シードですら初めて入ったほどである。第重罪人だとか歴史的殺人鬼が投獄されている。ここ自体は平和であるが空気は物々しかった。正直早く出たいところだが生憎今日は1人で来ているわけではない、連れを待つ必要があった。

神の枝が地面に落ちて早1ヶ月、この間に様々なことが起こった。毒沼のなくなった死の土地は現在“パッツア平原”と呼ばれている。由来はもちろんパニィ・パッツアの名だ。命を貼って戦争を終わらせたパニィのせめてもの慰めになればと思う……

ヒロキは大学に戻ることはなかった。現在は死の土地の調査にあたっており品種改良した植物を植えている。死の土地の地下に発見された天然ガスは“少し聞きかじっただけの知識”らしく調査と運用は専門家に任せるらしい。そのはずなのに専門外な電力事業に手を出していた。なんでも植物製の風車を使って雷の力を得るらしい……オレクスを取られてもエネルギーには困らないそうだ。

ライナスはエアリーに戻った。脱走兵扱いにならにゃしないだろうかと心配したが彼いわく「仕事が終わったんだから故郷に帰らせろ」と……

ローサはフォイップ軍に入隊した。といっても兵士ではなく職人だ。彼女の故郷、キオラは狩猟民族の村、そこの弓は高級品だったが現在は途絶えている。それを復活させようとのことだ。正直ローサの目と指は兵士にしておきたいのだがフォイップ軍総司令となったニルスは「武器がなきゃ始まらない」との事だ。

そしてミリアはと言うと……ちょうどここに来たところだ。

「よお、面会は済んだのか?」

「うん」

ミリアが面会したのは父親、マティ・バーンであった。行方不明と思っていたらちゃっかりと投獄されていたのである。それも情報がもれないように厳重に……ミリアが探しても見つからないわけであった。投獄された理由だが別に彼が罪を犯したわけではない、彼はあのオレクスに可燃性の樹液があることを発見した人物だったのだ。しばらくオレクスの事を黙っておきたかったガデム国王により“脱走兵”の名目で厳重に拘留された。

「少し痩せていたわ……まあ私がお腹の中にいるときに捕まったから初対面なんだけど」

母親もなくなった。娘は兵士になった。積もる話もたくさんあっただろう……

「ま、今日はここでいいわ……というのも心の準備が出来ていなくてね」

「どうすんだこれから?」

ミリアは少しの遠くを見ていた。

「フォイップで暮らすことになるけど目的は考えていない……父さんも近々釈放されるって言っていたし」

「奇遇だな、俺もだ」

だけどこれだけは言える。


目的はなくても目的を見つければいいって事だ。

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