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第27話 決着?

 曖昧なものは確信とは言えない、そもそも確信とは「確実に信じられる」と書くのだ。しかし自警団団長のミクロはこの確信という文字を「確実に信じる」と捉えていた。ミクロはパニィの事はよく知っているがシードのことはよく知らない。だがミクロでさえ”よく知っている”はずのパニィの動きについて行けた事はないのだ。シードはパニィの動きをわずかな時間で見極め反撃に出ていた。だからこれは確信だ……シードとパニィがいればあんなクーデター派なんてちょちょいのチョイのお茶の子さいさいだ。

「このとにかくあいつらをぶっ殺す!このアオヤを守る!」

心に決めた。正確には心に決めていた。そんなもの最初っから決まってる。

「畜生!新手……自警団の連中か!?」

声が似ている……この声は先ほど船のから聞こえてきた声だろうか?と、いうことはこの部隊のリーダーとのことだ。ミクロのこの察しに関しては100点満点の花丸だが正直言って彼は詰めが甘かった。ミクロはそのリーダーの顔を直に見るまで彼の正体に気づかなかったのだ。

「あいつは……まさか」

彼と最後に会ったのは5年ほど前、自警団を設立した時だった。あの時はまだ戦争が始まる前だったが本職の兵士がいなくなりミクロがアオヤの街を守るために彼と組織したのだ。

「久しぶりだなミクロさんよ!まだこんなところで自警団やっていたか?」

「まさかダイゴか!?」

ダイゴ・ミンク、ミクロが自警団を設立するときに関わったメンバーだ。最もミクロは兵士のいなくなった街を守るために自警団を設立したわけだがダイオは単純に歴史規模に続く王政を打ち倒すべく自警団に協力した。彼は自警団設立後、首都へ出稼ぎに行ってしまったのでそれ以降あっていない。しかしよく考えればこのクーデター、彼が参加していてもおかしくはない。ダイゴはアオヤにいた時、王政反対のデモをしょっちゅうしては当局に睨まれていたのだ。

「ミクロ邪魔~!!」

ダイゴに接近を試みるミクロだったがそれを拒んだのは敵ではなく味方だった。

「パニィ!」

「そいつが隊長ならアタイがやる!」

パニィが大鳥から飛び降り攻撃に移る。そうか……ダイゴは5年前にこのアオヤを去ったわけだがパニィはその後に自警団に入った。2人は面識がないのだ。

「パニィそいつはアオヤの者だ!殺すんじゃない!」

私情もいいところである。先程はパニィと同じくアオヤを恐怖に陥れるものを打ち倒そうと意気込んでいた。だが相手が知っているものとわかるとこんな有様だ。

「ミクロぉ!無茶言わないでよぉ!」

頭から落ちていたパニィだったわけだがこれを体重移動で足から落ちるように体制を変える。そして構えているナイフを収めて足蹴りを大槍にかましてやる。

「くそっ!」

子供とは言え重力の力を借りたその蹴りの力はとんでもない、それなりに鍛えているつもりだったダイゴもその衝撃に耐え切れず大槍を落としてしまった。

「はぁいくら知り合いだからって……ミクロが許してもアタイは許さないんだからね~!」

呆れたパニィはその後も文句を言いながら落ちていき大鳥に拾われる。

「情けは無用だぞミクロ!と言いたいところだが槍がなければ勝負にならない……さっきの嬢ちゃんみたいに護身用ナイフで戦えるほどこちらは腕に自信がないのでね」

ここでダイゴは右方向へチラリ、続いて左方向へチラリ……大体の兵士は例の右腕と例の少女に押されている。2人とも武器を叩き落すなどして相手を傷つけさせない戦い方をしている。情けを全面に押し出した戦い方だが逆に考えるとそれだけ技術力があるということである。

「撤退だ勝ち目がねぇ!クレインさんに何言われるかわからないが言い訳はつくだろう」

翼を翻しクーデターの戦艦へと飛び去る。一枚だけ羽が抜けて宙を舞っていた。

「ダイゴ、俺だってお前は知らない中じゃないさ……」

誰にも聞こえないようにポツリ……彼がクーデター側に立ったことを知って思ってみれば彼が首都に旅立った本当の理由は出稼ぎなどではなく王族をなぎ倒すために首都に行ったのではないか?そう思ってきてしまった。そして悔やまれるのは5年前に彼と別れたときだ。あの時は正直喧嘩別れ、意見の不一致だ。アオヤを守る目的と王族反対の抗議団体……かち合うはずもない目的だったのだ。あの日はだいぶ言い争った。




 何はともあれだ。クーデターの連中は去りアオヤの街は守られた。ミクロ的には気になることが大量生産されていたのだがアオヤを守れたという自警団の目的を果たせただけよしとしたのだ。これもシードとパニィのおかげである。

「シードをはじめとしたロゼーの皆、アオヤを守れたのは君のおかげだよ感謝する」

素直に謝礼をした。出会った時は酷い言われようをしてしまったが正直言って自警団だけでは危うかったかもしれない。だから素直に謝礼した。

「いや、当然なことだ」

そしてシードが素直に返事をした。

「ミクロぉう!アタイも頑張ったでしょう!」

パニィが頬をふくらませている。こちらも素直だ。

「あぁ、パニィも頑張った!」

パニィの頭をワッシャワッシャと撫でてやった。

「くすぐったいを通り越して痛い、痛いから……ってあああああああああ!!」

コメントの途中で叫び声を上げている。そして手足をバタバタとさせていた。

「決闘は?決闘はどうしたのさ!」

そういえば途中でクーデターの連中が入ってきてしまったので決闘はうやむやになってしまった。

「あぁそうか、そういや中止宣言も中断宣言もしていなかったな」

決闘のルールは相手に3回攻撃を与えることだ。現在2対1でパニィが優勢となっている。

「ほれよ」

決闘は今も続いている。だからパニィの脇腹にちょんと槍の側面を当てた。最も今は訓練用ではなく本物なのでほんとに優しくだ。

「はへ?」

どうやらパニィは状況が掴めていないようなのでもう一発お見舞いだ。

「そらよ」

「ひへ?」

しばしの時間停止、

「3対2で決闘は俺の勝利だ、まいったかパニィ・パッツア」

「ふへほぉぉぉぉぉ!?」

ここで状況理解、そして絶叫。

「ちょっとまって!今のは無しでしょ無効でしょどっからどう考えたってさ!」

それはもう大クレームである。腕を逆オメガの形にし“why”の意思表示をすると今にもシードに突っかかってきそうだった。

「だから言っただろう決闘は中止も中断もしていないって……俺は勝てそうにないときはどんな卑怯な手を使ってでも勝つさ、まぁそこまでになることは珍しい!パニィ、あんたは強かったぜ!」

「褒められても納得できないぃ!」

右足で地団駄を3回、後に左足で地団駄4回……それでも気は晴れないようだった。

「はっはっは!パニィさよ、シードが言う事も一理あるぞ?そこは本業様の違いかもな?」

「そんなミクロまでぇぇぇぇぇぇえ!!」

時刻は既に夕方だった。そしてその夕方にパニィ・パッツアのやかましい声がアオヤの街中に広がっていった。




 アオヤの一件から数日たった。あの一件、始めは軽い気持ちで引き受けた“説得”のはずだったのだが目的であったはずの説得は町長からかなり簡単にOKがもらえる……がオマケが2つ、自警団の説得とクーデター派の鎮圧だった。正直面倒な任務となってしまったがクーデター派の鎮圧に関してはこれも自警団の協力にて完了、実はその後にミクロの承諾も得たために見事にロゼーとアオヤの「兵士を送る代わりに物資を送る」関係を築くことができた。

「シィィィィドオォォォォォォ!」

ディナァをありがたく頂いていたシードのもとにやかましい声、もはや聞きなれたミリアの声だった。

「シード、何なのあの娘は!?」

「うるさいぞミリア、食事中だ」

「そうよ、女の嗜みだか品格とやらはどこに行ったのよ?」

向かいに座っていたローサまでもがデザートのレントウキビをチュパチュパ吸い、そしてため息の後にぼやいていた。

「パニィ・パッツア、あの娘よ!昼間に私に決闘だとか申し込んできて私が軽くあしらってやろうと思ったらあの戦法は何?飛び降り戦法なんて私は聞いてないわよ!」

そういえばそんな騒ぎがあったような覚えがある。結果は聞いていないがミリアのこの様子を見る限りだとミリアは負けたのだろう……聞かなくてもわかるし聞いたらミリアの温度が更に上がる事は目に見えている。だから結果は合えて触れないで話を先に進めることにした。

「あぁパニィ・パッツア……なかなかだろう?俺も卑怯な手を使わなかったら負けていたくらいだからな?」

「飛び降り戦法……面白そうね、私も一戦申込もうかな?」

軽はずみなのか?それとも本気なのかローサがそんなことをつぶやく

「シード、今“卑怯な手を使わなかったら負けていた”と言ったわよね?」

「あぁ」

「という事はあなたパニィとの決闘で勝ったということよね?」

「まぁ……」

あぁ、その方向に行ってしまうのか……

「あぁもう!これじゃあシードにも負けたようなものじゃない!」

食事時にこんな声を出すものだから食堂にいる。すべてのものがこちらを向いてしまった。

 パニィ・パッツアはロゼーに渡った。自警団のミクロ曰く「パニィには自警団では学べないものを学ぶ必要がある」とのことだった。先日のアオヤでの一戦でそれを感じたらしい……そういうこともありパニィはロゼーの仲間入りとなった。

「やれやれ、やっぱりというか……ここは更に騒がしくなるな」

素直にそう感じた。


ちなみにパニィ本人はロゼーに来る目的をこう言っている。

「シードにギャフンと言わせるため!」

だそうだ。

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