神話「三種の神木」
途方もくれる大昔のこと、“世界”には神と女神がいた。逆に言えば神と女神しかいなかった。神と女神は1人ではなかったが2人でも寂しい思いをしていた。神と女神はある時、子供を作って世界を賑やかにしようと思いお互いに交わった。しかし生まれてきた子供は人の姿とは程遠い植物の種の姿をしていた。「こんなの私たちは求めていない」と女神は生まれたその種をすぐに放り投げた。すると不思議なことにその種は巨大化していき表面には海と大地が生まれそして生物と植物が生まれた。世界は初めて生命の伊吹に満ち溢れ賑わいを見せたのだ。神と女神は予想とは違っていたが寂しくなくなったので満足した。
しかし世界は動植物問わずに生命を食い散らかす動物、そして動物の排泄物や腐った植物のわずかな養分を吸い取る植物でそれは醜いものになった。神はそれこそが世界の賑わいだと思ったが女神は自分の子が汚らしい行為をするのが許せなかった。
女神は自分の体を一輪の花に変えた。その花は強烈な瘴気をあたりに撒き散らし世界はあっという間に死が広まった。神は「自分の子供を殺す親がいるか」と自分の体を一本の枝に変えて花の雌しべに向かって枝を刺した。花はバラバラに砕け散って瘴気が無くなった。枝は花がまた咲かないように空から監視することにした。こうして今の世界がある。
ユードラ半島に古くから伝わる神話であり誰もが知っている物語だ。この神話に登場する世界の種、女神の花、神の枝をこの世界では三種の神木と呼ぶ。




