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メイドさん

街頭インタビューに真っ先に答えてくれた優しいメイドさんの心の中を暴いちゃうぞ♡

「マルチルダ王女様。お茶が入りました。」

「ん。」

マルチルダ王女様は今日もお美しく、聡明でいらっしゃいます。今も書類に素晴らしい速さで目を通していらっしゃる。

「リー、275+40985は何」

「41260です」

私は、僭越ながら計算は得意なのでマルチルダ王女様はよくこうやって私に計算をさせます。

いわば、これが私の仕事でもあるのです。他の掃除洗濯ばかりやってるメイドたちとはわけが違うのです。まあ、経費削減のため王宮にはメイドが二人しかいませんが。

「ん・・・。え、嘘!」

「どうして私がマルチルダ王女様に嘘をつきますでしょうか。」

「勘定が合わないわ。何処に12円消えたのかしら?」

12円ぐらいどぶに捨てておけばよいのに。と思いますが、そう言ったらマルチルダ王女様はお怒りになるので、私は慎重に言葉を選んでご意見致します。

「誰かが事故で落としたのでしょう。気にしない方が良いと思いますが。」

「ふぅ、リー。この王宮は全てカード式なのよ。12円だけ余分に引き落としたならば、それは確実に故意だわ。」

何をおっしゃってるのでしょうか。私は数学以外はからっきしなので、「こい」とは「恋」にしか思えないのですが、文脈がオカシイですよね?

「しかし、マルチルダ王女様。あまり難しく考えすぎるとお茶が冷めてしまいます。もったいないですよ」

「そうね、このお茶も金が絡んでるものね。」

私は難しいことが分からないことを誤魔化すことに成功しました。マルチルダ王女様はもったいないに弱いです。

「失礼します。マルチルダ様。ご来客です。」

渋い声がドアの外から聞こえました。この声は王宮ただ一人の執事のセレスティーですね。あやつはマルチルダ王女様に対して不遜な口のきき方をするので嫌です。嫌な奴です。

「ん。もうそんな時間かしら。いや、早く来やがったわね。計画が狂うから止めてほしいわ。時は金なり。」

マルチルダ王女様は時は金なりという言葉が好きです。というか金が喚関係する言葉が好きなんだと思います。

「マルチルダ様。変な事口走っていらっしゃらないで、来客が待っておりますよ。」

何て失礼な口のきき方なんでしょう。しかしそんな失礼な執事にも広いお心で接するマルチルダ王女様は、怒ったりなさりません。

「今日の来客は誰?」

「把握してらっしゃらないのですか!アナベル伯爵様ですよ。」

「ああ。あの金持ちね。」

マルチルダ王女様は、人の事をたいてい金持ちか否かで区別してらっしゃいます。分かり易くて素晴らしいと思っております。

「ドリアーヌさんはついて来られますか?」

ドリアーヌとは私のファミリーネームです。いい思い出がないので皆さんと同じようにリーと呼んでください。と何度言っても頑なにドリアーヌと呼ぶのでその件に関しては諦めました。だからセレスティーは嫌いなのです。

「私は、ここでマルチルダ王女様の書類を完成させておきますので。」

「・・・そうですか」

「はい。私は、数字を見つめることの方が好きですので。」

「じゃ、リーあとの計算任したわよ。絶対余計な事しないでね。」

「もちろんです。マルチルダ王女様。」

マルチルダ王女様は嫌なセルスティー・・・愛称セルストさんに導かれて出て行ってしまいました。何故かセルストさんは名残惜しそうな顔でこちらを見つめてきましたけど。

セルストさんも計算したかったのでしょうか。

私は書類に目を通します。ああ、数字がいっぱい並んでいるので興奮しますね。

私は数学は底なしに得意なので、別の事を考えながら勘定が出来るのです。

私のささやかな自慢なのですが、いつの間にか別の事中心になってしまうのが私の悪い癖です。それにしてもマルチルダ王女様が仰った余計な事とはなんでしょうか?

私はマルチルダ王女様に対して余計な事をした思い出などないのですが。

あれ、マルチルダ王女様漢字間違ってらっしゃる。

訴額決算(そがくけっさん)』ではなく、『総額決算そうがくけっさん』でしょう。私はそれぐらいの事は覚えましたよ。私も成長しているのです。

手元にあった赤ペンで大きな『訴額』の部分に×を書いて『総額』と上に書き込みました。マルチルダ王女様の助けになれてとても嬉しいです。


私はしばらく素晴らしく甘美な数学の世界へと耽溺いたしました。

ちなみに『甘美』『耽溺』はマルチルダ王女様が使っていたから使ってみただけで、意味は少しわかりません。

とりあえず『耽溺』していたので気付かなかったのです。

後ろから忍び寄る女の影に。気付いた時にはもう遅く、私は怒鳴られました。

「リーちゃん!なんでこんなところでのんびり計算してるの?」

「あ、チエリさん。私は計算している時は興奮しています。」

「どういう答え!?そんな事言ってる暇無いよ。リーちゃん!」

「まあ、まあチエリさん。時は有限です。そして、金です。焦らないでください。」

「言葉と行動がちぐはぐだよリーちゃん!」

あれ、何か間違えたでしょうか。よくマルチルダ王女様が『時は有限にして金なり。』と言っているのを聞いたことがあるので真似してみたのですが。

「もう、その様子だと絶対忘れてるね。今日はセレストさんの誕生日だから、サプライズでお誕生日会するって言ったじゃない。」

「存じ上げません」

「断言しないの!ちゃんと伝えたよ、伝えたの私だもん」

ダンゲン?・・・ま、大したことない言葉でしょう。ええ。

「存じ上げませんね」

「『ね』付けても断言には変わりないからね!?」

またダンゲン?これは意味が分からないと会話が成立しませんね…。

「チエリさん。」

「な、何。改まっちゃって。思い出した?」

「いえ。ダンゲンとはなんでしょうか?」

「・・・・リーちゃんの馬鹿!」

「下町の出なので言語には詳しくないのです。」

チエリさんは急にワタワタして『気にしなくてもいいと思うよ!』とかなんとか騒いでますが、私は気にしてません。

「そんなことはともかく。セレストさんの誕生日会の方は宜しいのでしょうか」

「良くないよ!リーちゃんの馬鹿!」

そうかもしれませんが。いちいち馬鹿と言われたくないものです。

「ついてきてよね!もう」

何故かチエリさんは怒りながらずんずん進んで行きました。私は、馬鹿では御座いますが。ダンゲンの意味を教えて貰って無い事は覚えていますよ。


「うぜぇ!リー!てめぇ・・・喧嘩売ってるだろ。俺に。」

「売ってませんが」

「じゃあなんだ!俺の指示通りに動けっつてんだろ?てめぇの脳みそは空っぽか?」

「だから私はこうして指示どおり動いているではありませんか。」

お手伝いをしているのに不遜な方ですね。ちなみにニックさんはコック長さんで偉い人です。でも、なぜかいつも目の下にくまがあって、怒ってる姿はとても怖いです。ちょっと粗い喋り方ですが、貴族出身らしいです。

「はぁ、もう触んな。俺の食材たちが悲鳴を上げてやがる。」

俺の食材?変な言い方をする人ですね。

ともあれ、私はかきまぜ途中だった卵を取り上げられてしまい、暇です。

結局サプライズお誕生日会と言っても、一使用人な上、マルチルダ王女様はとてもお金に対して厳しいので、ケーキとお手紙くらいになりました。

で、私はといえばお手紙も書き終りましたため、ケーキ作成を手伝っていたのですが。

何がいけなかったのでしょう?私には分かりませんね。

そりゃ少しばかりは卵さんたちが投身自殺をしておりましたが、微々たるものです。

でも、することも無いので自分の手紙に誤字脱字が無いか確認しておきましょう。


『おたんじょび、おめでとござます。

ひびいそがそにしてて、たいへんそだ、とおもてます。

おめでとです。』


ええ。完ぺきですね。

書くことが無さすぎて少し文を考えるのに時間がかかりました。

「あ、リーちゃんもう書き終ったの?見せて。」

チエリさんが私の手紙をお読みになられて一言。

「リーちゃん、漢字書けないの?っていうかそれだけじゃないよね。何で喋れるのに書けないの?それとも、あれ?母音に何か個人的な恨みでもあるの?」

はて。私は普通の文だと思いますが。

・・・ボイン?・・・胸?汚い言葉遣いですね。それに、胸がボインな人に恨みは有りません。

そう言えば、チエリさんは私に比べてはるかにぺちゃんこな胸をしておいでです!

むしろボインに恨みがあるのはチエリさんの方では・・・?

私にしてはちゃんと考えられたではありませんか!

「別に、チエリさんはぺったんこだからって気にすることは無いと思います。」

「どうしてよ!なんで今、その話!?どうして急に馬鹿にされたの、私!」

「落ち着いてください、チエリさん」

「原因がぬけぬけと!」

ヌケヌケ。何かの音でしょうか。ええ。マルチルダ王女様から擬音語というものが存在することは教わりました。

ヌケヌケという音が指し示すのは・・・!!ええ。

「ええ。何を抜くのでしょうか。チエリさん。」

「ごめんなさい。」

謝ってもらっても少し困ります。


次回は男らしいコックさんです!

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