その指輪を叩き落とす!
なんだか、もうぎゅっと詰め込み、短くしてみましたという感じ(´Д` )
こんな話あったら楽しいかなという、試作品です(ーー;)
9/1誤字発見の報告有。レシーブじゃなくて、アタックでした(;´Д`A
本当、ぬけてるヤツですみませんorz
「金は幾らでも使っていい。必要最低限は役に立て」
そうほざいた見合い相手が、高く投げて寄越した婚約指輪の箱。
中にはン千万もする馬鹿でかいダイヤモンドの指輪が入っているのをしっかりと見た。
弧を描く指輪の箱。
私はそれに向かって、高く飛ぶ。
そして、華麗にアタック!
「ざけんじゃねぇよっ!!お前と結婚するぐらいなら、家族と無理心中するっつーのっ!!」
鼻息荒く、高らかに宣言した私の視界の隅に、指輪の箱が転がっていた。
指輪が飛び出さないあたり、結構頑丈な箱なんだなと、頭の隅っこで思った。
私こと、名護 いろはは、しがない町工場の一人娘の30歳。
先月、取り引き先である大手企業から手を引かれ、にっちもさっちもいかなくなったうちの工場。
そこに現れた新たな取り引き先は、フラフラしている跡取り息子と私の見合の成功を条件にいれてきた。
結婚する気は全くなかった私だが、家族のためと思い、見合いを承諾。
幸い私は、二十代後半から彼氏なしの気ままなお一人様だった。
そして迎えたお見合い当日。
現れた男は、西條財閥の御曹司、西條鷹臣、27歳。
年下というだけで、ドン引きした私は無類の中年好き。男は四十過ぎがいい。少なくとも、自分より年下の相手を恋愛の対象に見ることはなかった。
しかし、家族と工場の命運がかかっているこの見合い。頑張って我慢した。
両家の親が挨拶を交わし、和やかに進むと思われたお見合いは、先程の男の言葉と私の言動でぶっ壊された。
わたわたと慌てる両親を尻目に、もう一つ付け加えてやる。
「お前と結婚する物好きは、ただの馬鹿か哀れな人形だけだよっ!!」
はんっ!と鼻を鳴らして、嘲ってから、両親の手を引っ手繰るように掴んで見合いの席を後にする。
誰があんな高慢なクズヤローと結婚するかっ!!
息を巻いて、両親を引きずるように自宅に帰った私は、帰ってから、両親に土下座した。
「ごめん…!!お父さん、お母さん!!」
冷静に考えるととんでもないことを仕出かした私は、カッとなりやすく冷めやすタイプだった。
そんな私に両親は、子どもを売るような取り引きは元から良くなかったと逆に泣きながら謝ってくれた。
それを見て、私は後悔に塗れる。
私を大事に育ててくれた両親に、愛着のある工場。たった一つのことで、恩返しも守ることすらも出来なくなってしまったのだ。
いつのまにか、三人固まってわんわん泣いていた。
見合いから一週間した頃、新しい取り引き先も決まらず、鬱々とした気分の私たち家族に、あの馬鹿御曹司が会いに来た。
お見合いの非礼を詫びた御曹司は、何をトチ狂ったか、再び私に結婚を持ちかけてきた。
「いろは、俺はお前の罵声に惚れた!どうか、俺を一生罵ってくれ!!」
そのプロポーズの言葉に、両親も私も引きまくった。
潤んだ瞳は無駄に色気があり、何故か若干荒い息は桃色吐息。
見合いの時は、どちらかというと冷徹でドSといった具合だった男が、今はMのド変態に成り下がっている現実。
なんとか変態御曹司におかえり頂いた私たちは、その夜、夜逃げした。
元々家族で経営していた小さな工場は、取り引き先が少なくなってから、従業員を雇っていなかったし、取り引き先も今月に入ってからなくなっていた。
再起をかけようとしていた見合いは失敗し、工場を閉めるか、もう少し頑張ってみるかの岐路に立たされていたところだった両親。
両親は、あの変態に娘をくれてやるくらいならと、大事にしていた工場を閉めることを選んだのだった。
西條財閥は巨大だ。そして、金の力は偉大だ。
逃げる先々に直ぐに現れる変態御曹司。
いつまでも逃げ回れないのはわかっている。
逃亡にも金がかかるのだ。
あの変態御曹司に捕まったら、嫌という程贅沢をさせてあげるから…。
お父さん、お母さん…、私の逃亡にもう少しだけ、付き合ってっ!!
私、年下も好きじゃなければ、人を罵って喜べるSでもないんだからっ!