#4
舟に乗って川を渡っているときに、私は大きな石の上に帽子が落ちているのに気付いた。
「誰の忘れ物だろう!?」
そう思った次の瞬間には、私は暑い夏の日焼け焦げたような色をして、実際に焼け焦げたように熱されたアスファルトの上にいた。
私は、学生だ。そして、2、3日前から夏休みに入った。
夏休みに入って、部活動も何もやっていない私は暇になって街をほっつき歩いた。
たまに、背の高い建物が沢山立ち並ぶ、駅前を歩いては人通りの多さにむっとした。
私は、何もおもしろくない、この現状をぶっ壊したかった。家でテレビを見ていても何も面白さを感じない。だから外に出ていた。
私が生きているこの世界に何の値打ちもない。そう思っていた。
私は本気でこの世界からどこか違う世界へ行きたい。そう思っていた。
今日も夕方になったから、そろそろ家に帰ろうと、公園のベンチから立ち上がった。公園には縄跳びの練習をしている少女が2人。それ以外は誰もいなかった。この角を曲がったら、自分の家の立ち並ぶ路地に入る。夕方になってご飯を食べに帰る自分は放し飼いにされたネコ同様だなと思って空しくなった。私は家の近くもゴミ捨て場の前で立ち止まった。
そこには学校で使う様々な教材が捨てられていた。
私はろくに勉強もしたことのない数学の参考書がなぜかその時無性に気になって拾っていた。ほとんど無意識に。
でも、そこそこの厚みのある参考書の確かな紙の重みはあった。
私は、迷わず開いた。
次の瞬間私は、草むらの上に寝そべっていた。