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悲しみの抱擁

晩餐会場の近くで一泊。

ビアンカはいつも勝手で呑気なんだから。敵と接触する人がいますか?

そう言うところがあるのよねビアンカには。

てっきり奴らと話をつけて来たと思ったのに敵と世間話? 冗談でしょう?

大体スーテルって誰よ? 私に似てかわいいなら分かりますががさつって何?

私は誰もが憧れるマリオネッタお嬢様なのよ?

どんな風に私を見てる訳? 詳しく話してもくれないし。

 

「どうして戻らないの? 」

命令に背けば命はない。まだここに泊まることを伝えてない。

これもすべてビアンカの判断。でも決して間違えないと信じている。

「仕方ないでしょう? 完全に予定が狂ったの。ここで引き下がれない。

マリオネッタはあんなところに戻るつもり? 」

まさか逃げる気なの? でもそれは最悪の選択。私だってあの日から考えたこと。

故郷を離れてもう随分になります。お父様はどうしてるか?

お兄様たちは戻って来たのか? お姉様は?

急に寂しくなる。今の現状を思い出せば震えるほど怖い。


「どうしたのマリオネッタ? 」

「ごめんなさい。故郷を思い出したらつい…… 」

「いいのよマリオネッタ。さあ私の胸で泣きなさい」

こうして二人で抱き合う。

見えない光を追い求めて闇の世界を進んでいく。


どれほど泣いたか? ビアンカは優しく受け入れてくれた。

いつの間にか彼女の顔も濡れていた。

怖いのも辛いのも恐ろしいのもビアンカだって同じ。

ただ彼女には自分を庇護する者がいない。私にはいるのに。

頼れる者がいない。それは泣き喚くことのできる私よりも何倍も辛いこと。


抱きしめて彼女の体温を感じるが彼女の心の中までは見通せない。

今私が冷静さを失えばビアンカまで影響を受ける。

考えてはいけない。何も考えてはいけない。

ただ命令を実行する暗殺者として役目を果たすことに集中するだけ。

でもそれでも涙は止まらない。零れる涙も手に伝わる涙も。

このままずっと抱きしめていられたら。


目覚めたらお屋敷のベッドに戻っていてストに朝寝坊を咎められるの。

そうして一時間近く説教されて泣きながら急いで朝の見回りに。

そんな風に元に戻れたらな。もちろんストはいなくてもいい。


朝起きたらベッドでメグレン様がおはようのキスをしてそれから……

いけない。何を想像してるのでしょう? いつの間にかメグレン様の虜に。

ああメグレン様……


どうにか冷静さを取り戻した。


「メイドなんだから掃除ぐらいしてよ! 」

「うるさい! 妹のくせに生意気! 二度とそんなこと言わせない! 」

ふざけてケンカはするがそれでも最終的には笑い合う。

「ふふふ…… ねえそれで奴らの計画はどうなってるの? 」

「さあ…… ただ私たちはまだ離れたところで見学かな。

実行犯が失敗したみたい。これがいい兆候なのかどうか…… 」

ビアンカは判断が難しいと。確かに暗殺者側からすればかなりの失態。

王子暗殺がやりづらくなったのは確か。昼間の件も含め警戒を強めているはず。

行方不明者も出ている。ここは厳戒態勢で臨むに違いない。


「まだ王子には言わない方が? 」

私たちの目的は王子暗殺阻止。どさくさに紛れて王子暗殺を食い止める。

そうしなければ私たちは王子を討った反逆者として追われることに。

大体お嬢様の私が賞金に目が眩んで王子暗殺するはずがないでしょう?

ですがいくら釈明してもことが起きれば言い逃れできない。

だからタイムリミットは王子暗殺まで。でもそれだと暗殺成功になるか……


「隙を見て王子にお伝えするつもりだけどタイミングが大事。

今言って保護を求めてもここにいる仲間と言う名のライバルに蹴落とされる。

本当にタイミングが難しい。まだ何も起きてない段階。

決定的なことが起きてしまえば暗殺者の烙印を捺され処刑される。

言い訳が通用するはずないの。そこだけは理解して」

ビアンカはどうやらまだだと。タイミングを計っている。

でも狙いはまだ王子に向いてない。今のうちに動くべきでは?


告白するとして誰にする? 愛の告白ならメグレン様。罪の告白ならお付きに。

すべて告白するなら王子? どうもあの王子は頼りにならない。

狙われてるのにヘラヘラしてるしまだクソガキだし。頭悪そうだし。

王子としての資質に著しく欠けている。無自覚お気楽王子。

悪口になりますがこれも王子を間近で見た上での評価。全然当てにならないお方。


「それで奴らは次どう動くと思う? 」

「さあ…… 」

計画の詳細を一切語らずに戦地へ赴かせる最低な奴ら。

私たちで王子を亡き者にするその計画。どこまで成功すると考えているのか?

強引に動こうとしないのが気になる。王子なんか一発でしょう。


「ねえ王子たちの即興劇についてはどう思う? 」

「恐らく違和感があってのこと。目立てば暗殺はないと踏んだのでしょう

恐らくあのお付きの方の判断」

「ああトルドの爺さんね。私あの人嫌い。何だか睨みつけるんですもの」

「失礼ですよ。それに下品」

「いいのいいの。本当のことだから」

少々大胆。銃でもない限り衆人環視の元では不可能と結論づけたのだろう。

よくやるよあのお爺さんも。


「それから…… 」

「もう寝ましょう。明日も早い。おやすみマリオネッタ」

そう言うと目を瞑り五分と経たずに寝息が。

タフな人。私はこの状況ではとても無理。大体明日の命だって保証されてない。

でも寝るしかないのか。


こうして王子暗殺作戦は一日目を終える。

これが予定通りなのかそれとも想定外のことなのか?

今のところまだ何も分かっていない。


                続く

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