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熱狂の中で

晩餐会も間もなくフィナーレ。

「すみませんお手洗いに」

女が一人勝手な行動を取る。恐らくこいつも今回の暗殺者の一人。

ライバルで仲間と言う複雑な関係。それが周りにはウヨウヨいる。

今のところ目星をつけてるのは数名。それ以外慎重なのか中々正体を明かさない。

完全に令嬢に紛れ込んでしまっている。


どうやら彼女は俺たちの失態に気づき外部と連絡を取ろうしているらしい。

しかしお生憎様。俺たちに責任はないし失態を犯したのは残念なことに奴らの方。

いやこれもチームプレイだとすれば奴らではなく暗殺者の側に。

計画をきちんと伝えればこんな失態を犯さずに済んだのに。

何を恐れてなのかメンバーはおろか詳細さえ語らない。

失敗は起こるべくして起こったと結論づける。

俺は優秀な暗殺者だから足を引っ張る者が心底勘弁ならない。

今すぐにでもこの場に引きづり出したいがそうも行かないんだろうな。

冷静に冷静に。もっとクールにならないとな。


「ふふふ…… あなたはどちらから? 」

とんでもなく呑気なお嬢様に捕まってしまう。こいつはただの招待客だろう。

俺では早々にボロが出るな。ここはピンチラに……

「ごきげんよう。体調はいかがですか? 」

自然に入って俺を逃すように連れて行ったピンチラ。さすがだ。俺とは大違い。

つまらない話などこれ以上して堪るか。反吐が出るんだよ。


「ねえあなたご気分は? 」

「ああん? 」

能天気な令嬢かと思いきやビアンカだった。俺を介抱してくれた筋金入りの善人。

こんなメイドみたいな奴が俺たちの仲間なはずないよな。虫だって殺せない。

「確か…… スーテルだったよね」

俺のことを覚えていてくれたのか。ちょっとだけ嬉しい。まあちょっとだけだが。

でも待てよ。俺は自己紹介してない。どうやって知ったんだ?

まあどうせ係の者にでも聞いたんだろう。名前は伝えてあるからな。

いちいち気にしてたら暗殺者は務まらない。


「ごめんビアンカ。俺…… 私動揺していてつい…… 」

失礼な態度を取ったと謝る。これはすべて俺が悪い。

優しい彼女は能天気にもお世話してくれた。そんな人に不快な思いさせて堪るか。

「いいの。それよりもお友だち見つかった? 」

「友だち? 」

そんな話してない。俺に仲間がいてそいつを探してるなどと言うはずがない。

それでは潜入したのがバレる。俺はそこまで愚かではないぞ。


まさかビアンカは俺のことを疑ってるのか? それで鎌を掛けた?

自分も同じ境遇だから告白しろと? 冗談じゃない! 

たとえ脅されても相棒のピンチラを売り渡す気はない。

それだけ俺たちは固い絆がある。ただの殺し屋じゃないんだ。

美学もあるしルールだって守るさ。プロだからな。それが生き残る術。

手当たり次第やって周りを巻き込むのは間違ってると思う。


「ごめん。別に悪気があって言ってるんじゃないの。妹がそんなことをちらっと」

「妹? ビアンカには妹がいたのか? 」

「ええ。次の機会に紹介するね」

嬉しそうに語るところを見ると本気らしい。


「妹も連れて来たんだ? 晩餐会場に家族を連れて来るのはまずくないか? 」

妹はいくつか知らないがどうせさっきの市長の娘みたいなクソガキだろう?

ガキの面倒を見るのは嫌だぜ。興味ない。

「まずくないよ。私たちは姉妹で招待されたんだから」

「へえ…… だから私にも? そうなんだ。でも私は一人で招待された」

てっきり二人一組は偽物のイメージだったが姉妹で招待を受けることもあるのか。

危ない危ない。動揺したがどうやら悟られてはいないらしい。

大丈夫。完璧だ。俺は王子に正式に招待された令嬢だぜ。

適当に名乗っても誰も分かりやしないさ。


「近くの友だちを探してるって…… ごめんね妹の勘違いだったかも」

「いいよ。気にしないで。もう戻ろう。怪しまれちゃう」

馬鹿! 俺の馬鹿! どうして余計なことを言うんだ?

これでは疑ってくれと言ってるようなもの。


「うん? どうかした? 」

「いえ。それではごきげんよう」

強引に話を終える。これ以上はいくら何でも危険だ。ビアンカはいい子だが鋭い。

その妹はもっと鋭い。油断ならない姉妹。でも敵意はないから大丈夫。


晩餐会は熱狂の中幕を閉じる。


「王子様! 」

「また明日おいで。待ってるよ」

「きゃああ! 王子! ハッチ王子! 」

「ああ興奮しないで。危ないよ」

丁寧に一人ずつ挨拶する気遣い。長旅で疲れていると言うのによくやるよ。

俺はそう言うのは願い下げだぜ。気色悪くて敵わない。

「待ってよ。君は興味ないの? 」

王子は不機嫌気味。それは構わないけれど疑われては困る。


「きゃああ! 王子もう離れたくない! 」

大げさに騒いで王子の自尊心を傷つけないようにする。面倒臭い奴だ。

「ははは…… また明日」

「ハイ王子様。必ずこの手で…… 」

「どうしたの? よく聞こえないよ」

「いえ…… おやすみなさいませ王子様」

「おやすみ」


こうして晩餐会はお開きとなった。


本番はどうやら明日のよう。

今日は様子見と言ったところか。

本当にまどろっこしい奴らだ。俺に任せれば一発で仕留めると言うのに。

まったく何を考えてやがるんだか。


               続く

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