ドラクエラ
市長の娘乱入による一騒動あったがどうにか落ち着きを取り戻した。
こうして晩餐会は再開される。
「ええ…… 」
王子主催の晩餐会だと言うのに先ほどから一人で話してる女。
王子は紹介されてニコニコ。
一言もらって以来ただ座っているだけ。暇を持て余している様子。
その代わりにこの女がさっきからずっと喚いてやがる。
話好きなのはいいが聞いてるこっちの身にもなってくれ。
その長い話が終わらないと乾杯ができないし暗殺も始まらない。
「それでは皆様お手元のグラスを手に取り乾杯致しましょう」
ようやく乾杯にたどり着けた。願いが通じたらしい。それしても疲れたな。
このおかしな晩餐会を執り行うのはラクエラ在住のドラクエラ。
王子主催と言ったところで王子がホストの役目を果たす訳もなくドラクエラが。
王子はラクエラからの招待を受けている。
ゲストは近くの村々から集まったうら若き乙女たち。
有名どころの令嬢やラクエラの権力者たちの娘で構成されている。
それが三十人以上。そこに俺たち十六名の偽招待客が参加する。
残り一組はもしもの為に会場の外で待機している。
俺も大概だがそいつらと来たら言葉も乱暴だし学もない。
いくら奴らに調教されても改善されない。
直前になって待機組に回された。本来この役割は組織の奴らが担うはずなのに。
これでより組織の介入が難しくなっていく。
俺たちが裏切ったり逃亡しても本当のところどうにでもなるのではと考えている。
まあ俺はミスをしないし逃亡する気もない。ただ金に転ぶこともあるだろう。
他の奴よりもそう言うとこは強かで計算高い。
それは俺と言うよりも相棒のピンチラがそうだからだ。
そうそうドラクエラは有名人だ。
この街のシンボルででっかい銅像が立っている初代ドラクエラ市長の孫娘。
現在の市長はその者の推薦により十年前に市長になったらしい。
正式にはド・ラクエラが一族の正式名。
その者が創設したのでドラクエラシティー。
これもピンチラからの情報。
「いいですね皆さん? 合わせてくださいね」
歓声が上がる。
「では乾杯! 」
「乾杯! 」
王子主催の晩餐会は大盛り上がり。
「あの…… 」
ついに動き始めるピンチラ。俺はサポートに回るために後ろに着く。
ナイフを取り出した彼女は標的である王子護衛隊長のビックの横に建つ。
準備万端。後は予定通りライトが消えればいいのだがなぜか明るいまま。
おい早く消せっての! 何をやってる?
合図を送っているのにそのくそ野郎は仕事をしない。嘘だろう?
ダメだ。奴らでは当てにならない。怖気づきやがって。
ここはどうにか光を消すか騒ぎを起こし視線が他方に向かわせるしかない。
急がないとピックが逃げちまう。どうしたんだよ?
それは王子暗殺作戦ともなればトラブルは付きものだがよ。
ただ明かりを消すことさえできないのか?
うん? おかしな被り物をした者が会場内に乱入してきた。
ラッキーと思うのも束の間ターゲットのビックが異変を察知して駆けて行く。
もうこれでは逆効果。誰なんだよあいつ? ふざけた野郎。
晩餐会を盛り上げようとおかしな被り物をしやがって。
目立ち過ぎだよ。ふざけやがって。暗殺が失敗に終わるじゃないか。
いい加減にして欲しいよな。
文句を言ってもどうにもならない。しかしこれだと俺たちのミスにされかねない。
もうこれ以上余計な動きをすれば怪しまれるし。
ここは一切動きを見せずに周りに合わせる。
それができるのが俺たちって訳だ。
「そこの者止まれ! 止まらんか! 」
隊長のビックは必死に止めに入るが相手は動じない。
まさか予定変更? どうなってるんだこれは? 俺はまったく聞いてないぜ。
こんな話は聞いたことない。何がどうなってるのか?
もう滅茶苦茶じゃないか。計画が台無しだ。
うん? 晩餐会開始からちょうど一時間経ったところ。
これはあちら側の演出では? 予定通りな気がしてならない。
恐らく何も聞かされてないお気楽令嬢たちが拍手。
絶対にハプニングなどではなくショー。ただのショーだ。
危なくないように乾杯の場所からも離れた場所で。
これは配慮してのこと。
そして暴漢に駆け付けたのが隊長のビックだ。
つまらない演出を見せられていい気分ではない。
こいつらのせいで暗殺は失敗に終わったじゃないか。
まだチャンスがあると思いたいが始末される恐れもある。
これは俺たちのせいじゃない。王子側のつまらないお遊びだ。
練りに練った暗殺計画も予想外の動きにはついて行けない。
これでは暗殺計画も見直すしかない。
本当にふざけやって! こっちは遊びじゃないんだぞ?
ターゲットのビックは運よく難を逃れやがった。
ついてるよな。どれだけの強運なんだ。俺もあやかりたいものだ。
おっと…… ボケっとしてては目立つ。ここは一旦退散。
続く




