スーテルとピンチラ
スーテルとピンチラ。
最近派手に動き回ってる殺し屋の二人組。
王子暗殺の件まで嗅ぎつけやって来た。
「ねえスーテル。何色がいい? 」
「ピンチラの好きにしな」
スーテルは貧しい生まれ。
生まれた時には両親がおらず近所で悪さをするピンチラに憧れて仲間に。
スーテルとピンチラは海沿いの町で育ったこともあり泳ぎは得意。
悪さをする時は決まっていつもまだ暗い海に逃げ込むのだった。
身長は両方とも百五十を超えるかぐらいで小さい。
ただピンチラの方がスタイルはよく胸も出ていて足も長い。
お尻だって大き過ぎず。理想の体型と言えなくもない。
そのせいでピンチラの魅力に惹かれ寄って来る男が後を絶たない。
甘い言葉を囁き掛ければ男などイチコロ。好きなだけ贅沢をさせてくれる。
ケチな奴は体の身を求める。その代償にスーテルの荒いお仕置きを受けることに。
ピンチラとスーテルのコンビは名も顔も知られることはない。
おかしな噂だけが飛び回るプロの殺し屋だ。
そんな時に交易の港町ラクエラに王子がやって来るとの情報をキャッチ。
それと共に腕利きの暗殺者を求めてるとの噂を。
しかも女限定と来たので浮かれるばかり。自分たちに持って来いの仕事。
急いで血塗られた招待状を奪い去る。
「だったら紫。気品があるから」
「嘘? 似合わないだろう? 俺たち殺しに来たんだぜ。目立ってどうする? 」
「ダメだってスーテルも言葉遣い。殺しも厳禁ですよ」
「申し訳ありません。数字の色でお願いします」
係の者が勝手に入って来て選ばせない。私たち一応女性なんですけど?
人殺しだけどさ。ははは……
「スーテル。声が漏れてる。もう少し抑えて。それから感情を表に出さないで」
ピンチラからの再三の要求にもう我慢の限界を迎える。
「だってこう言うの苦手で。一気に片を付けようぜ。ははは…… 」
係の男が行ってもう二人っきりだと言うのにピンチラは声を落としたまま。
もうどこまで臆病なのか? 見つかったら見つかったで始末してしまえばいい。
それにしても服を着替えさせる用意周到さ。
どこにナイフを隠せばいいのか迷うでしょう?
招待されてるのはか弱き令嬢でナイフなど見たこともない。
あああったか。ショーや演劇で笑いながら見るのか。
どいつもこいつも下劣な最低なブタ野郎だからな。
「さあスーテル行きましょうか? 」
「ああピンチラ」
俺たちは二人一組。招待状にもそう書いてあったからな。
だが晩餐会では初めての振りをする必要がある。
ピンチラが言うには敵は王子護衛隊だけじゃない。俺たちの仲間。
ははは…… 誰が仲間だよな。真っ暗な中でほんの少し顔を会わせたライバルだ。
あん時は本当にビビったぜ。ちょっと反抗的な姉妹を無慈悲に銃殺しやがった。
俺たちのいる目の前で。それこそまるでショーを見せられてるかのように。
何の躊躇もなくだからな。震えたぜ。それがワクワクするほどな。
俺がおかしいんだろうな? こんな感覚の奴はきっといないんだろうよ。
「ピンチラ…… 失礼しました」
もう本番だ。予行練習は嫌と言うほど。イメージトレーニングは繰り返した。
面倒臭いから王子をやっちまえばいいのに依頼人は別の奴を消せと。
まどろっこしいぜ。そこにいるクソガキ王子をぶっ殺しちまえばいいと言うのに。
頭が悪いんだろうな。回りくどい馬鹿どもだ。
さあターゲットはどこにいるのかな? 見つけた!
ではどさくさに紛れてあの世に行ってもらいましょうか。
王子に仕えるような立派な方だからきっと天国に行けるさ。
ピンチラはまたしても自分の武器を使って会場にいる僅かな男どもを誘惑してる。
俺だってそれが出来たらこんな裏方に回ってないさ。
ううう…… 気持ち悪い。さっき景気づけにウェルカムドリンクを一気飲みした。
しかも二本。派手なことして目をつけられたか?
だが構うことはないさ。ただのお酒好きでどうにかなるさ。
お酒好きな令嬢だっていくらだっているさ。仮面をはぎ取れば醜い本性を現す。
しかし俺ってば酒は飲むが強くないんだよな。すぐに酔いが回る。
「大丈夫ですか? 」
うずくまってるところを優しい箱入り娘に介抱される。
「ごめんなさい。俺…… 私ったら言葉遣いも直らなくて。
それで王子に会えるって緊張しちゃって。だから飲めないお酒をつい口にしたの」
まあこれは事実だからいいか。しかしなぜターゲットは俺の存在を無視した?
目の前でうずくまったっていうのに。どこかに行きやがった。
そう言えばピンチラはどこに? 相棒がピンチなら助けろよな。
「大丈夫。立ち上がらなくていい。ちょっとの間この椅子に座っていましょうね」
そう言って一旦晩餐会場から離れ隣の部屋に連れて来られる。
「ちょっと! 何をやってるんだ? 」
勝手に動き回れては困ると男が文句を言う。しかし体調不良だぜ?
「すみません。この方が体調を崩したようだから」
隊長? まずい。悟られたか? そんなはずないよな。
「分かった。では上に伝えておく。指示があるまで勝手にそこを動くな! 」
そう言うと男は行ってしまった。
続く




