本当の晩餐会
晩餐会当日。
運命の出会いを果たす。
「申し訳ありません。これで充分です。ありがとうございました」
ここらが限界でしょう。メグレン様に嫌われては元も子もない。
私としてはもっと荒々しい戦いの傷を舐めたいのであってこれは違うかな。
「この無礼者! 裸にして触れるだけでなく舐め回すとは無礼にも程がある! 」
怒り狂ったのは王子のお付きの方。でもメグレン様はいいと言ってくれた。
それなのに無関係のあなたが邪魔をするの?
爺さんの出る幕はないでしょう? 何であんたがキレてるのよ?
つい怒りの感情が。おかしなもの。
昼間から思っていたことですがこのお爺さんとは相性があまりよくない。
暴漢から救って頂いた恩も忘れメグレン様に甘えるように傷を見せてもらった。
間違ってる。お嬢様としても女としても。それだけでなく人間としても。
メグレン様の優さに甘えてばかり。自分で自分が恥ずかしい。
ああどうしてこうなるの? 興奮するあまり周りが見えてなかった。
今更後悔しても遅いですがもう少しおしとやかに振る舞うべきでした。
メグレン様だって本当は嫌がっておられる。少なくても困っていたでしょう。
おっと今はそのことよりもこのお爺さんのお相手。
酷く怒っているよう。私がメグレン様にいろいろ要求したから。
それにしてもメグレン様ってどのような方なのでしょう?
今日会ってすぐに惹かれてしまうこの単純な私をお許しください。
「どうされましたか? 妹が失礼な振る舞いを。申し訳ありませんでした」
ビアンカが謝罪。あー気持ちいい。私の為に謝ってくれることに幸せを感じる。
これが本来のメイドの役割。でもビアンカは姉として妹の不始末を詫びている。
そういつだって私は姉の庇護のもとに生きている。
「もうよい! 晩餐会が始まる。急ぐぞ」
そう言ってメグレンを引き離す。イライラしちゃっておかしな人。
それにしても一体彼らは何をしていたのだろう?
各地からやって来た招待客を出迎えてるの? 何だかおかしい気もする。
こうして晩餐会前のハプニングを経てついに晩餐会がスタートするのだった。
「晩餐会か…… 私初めて」
お父様が近所の方を集めパーティーを毎月のように開いてて私も参加させられる。
でも今回は規模もレベルも違う。違い過ぎるほど。
会場前の雰囲気も全然違うので圧倒されてしまう。ついつい吞まれてしまう。
当然招待状など個別に送られることはないから。
「まだまだマリオネッタは子供ね」
二人っきりの時はお嬢様だったのにもう切り替えたらしい。
相当警戒してるらしい。私が従わないのもまずいか。
「お姉様はさぞかし経験がおありのようですね」
たかがメイドにそのような経験があって堪りますか。
メイドとお嬢様を同列にできない。違いは明確にある。
「ふふふ…… 当然ではありませんか。これ位のパーティーなど恐れずに足りず」
大胆に出たな。足だって震えてるくせに。それでもこの感じ。
もしかしたら幼い頃に似たようなパーティーを開いていたことがある。
ビアンカはただのメイドではない。優秀な私専属のメイド。
実際その過去も経歴もよく分かっていない。
だから幼き頃は私と同様お嬢様だったことも考えられる。
まだまだ謎多きビアンカのことはどうでもいい。
今は王子を狙う仲間を見つける事。暗殺者とそれを見守る者が必ずどこかにいる。
もう気は抜けない。奴らの話では九組十八名が王子の命の狙っていることに。
その中には当然私たちも含まれる。実質八組十六名の正体を見破ることが重要。
顔も性格も分からない名もなき者を相手にする難しさ。
手掛かり一つあれば苦労ないのでしょうが生憎まったくだから。
さあ行こう! 王子の心を奪うのは気乗りしない。お命を頂戴するのはもっと嫌。
しかしこちらも正体を見せてない以上相手から察知されることもない。
ただ素顔を晒すのはどうなのか? 彼女たちが知らなくても奴らが教える場合も。
いえもうすでに売られてる場合さえある。これは気をつけなくては。
相手に知られると言うことは暗殺仲間に知られること。
お互いが敵に違いない。王子暗殺を一人で請け負えば莫大な報酬が得られる。
それを何人もで分けるほど奴らはできてない。
ほとんどの奴は殺し合って得たチャンスなのだから。
あの血塗られた招待状のように。警戒は絶対に怠らない。
さあ始めよう。壮大な作戦を開始する。
王子暗殺及び王子護衛及び王国の陰謀を暴く大作戦。
複雑でハードであまりにも無謀な作戦。
上手く行くといいのですが。大丈夫きっと上手く行く。
自分を信じるしかない。そしてパートナーを信じるしかない。
一人の力では難しくてもビアンカさえいればどうにかなる。
こうしてついに最後の一組が会場に姿を見せる。
王子狙うライバルを蹴落とし私が王子…… いえメグレン様の心を奪ってみせる。
決意を胸に暗殺現場へ。
果たして今から何が起きるのか?
きっと想像もつかない展開が待ち受けてるのでしょうね。
続く




