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接触

怪しいと思われたのか隣の爺に睨まれる。

「はい? 私は初めてだから…… 」

どうにか言い繕うが言葉にならない。

緊張が伝わってしまったらしい。これは大変まずい展開。もし王子に悟られたら?

そうでなくてもあまりにも不自然で奴らに無能判定されたら?

そのことが頭の片隅にあるものだから思い切ったことができない。

もうただのか弱い妹を演じるしかなさそう。


「申し訳ありません。妹のマリオネッタは旅が初めてなものですから。

不慣れな妹をどうぞお許しください」

どうにかビアンカの機転で怪しまれずに済んだ。

「申し訳ありません」

「ははは! 構わない。構わない。かわいいじゃないか」

王子はなぜか上機嫌。かわいいだなんて人前で言っていいはずがありません。

一国の王子ですよ? それでも言わざる得ないのはきっと私に好意を抱いたから。

これで王子暗殺…… じゃなくて王子の心を奪えるかもしれませんね。


それにしても王子ったら正直で呑気な人。もう風前の灯火だと言うのに。

これはぜひ知らせたくもなる。もちろんそんなことすれば始末されるのは私たち。

でも待ってよ。今すぐにすべてをゲロすれば。

おっと…… どれだけ下品なのでしょう?

さすがにこれはよろしくない。王子の御前でもあるのだから。

見苦しいことも下品なことも禁止。

でも早く気づきなさいよこの無能王子。

笑ってる暇があったら今ある危機を感じ取りなさいっての。


「ははは! 睨まれてるのかこの私は? 鋭い眼光だ。ははは! うん愉快愉快」

なぜか上機嫌の王子。王子がこうでは周りは大変だろうな。

「お待ちください王子! その者たちは大変危険でございます」

「危険? 殺気など微塵も感じられないが」

どうやら殺気は完全に消せてるよう。これは意外とうまく溶け込めたでしょうか?

後は言葉遣いに気をつけて微笑んでいれば気に入られる。


「何だその不気味な笑顔は? 引きつっているではないか! 」

王子の隣で口うるさい爺が咎める。私この人苦手。何だか凄くうるさい。

しかも私たちは下に見てる。蔑んでいるようで気に食わない。

ああそうか。あの冷徹な男とタイプが似てるんだ。第一印象は最悪。

でも実際に話してみると違うかもしれませんが。とにかく鼻が利いて口うるさい。


「ええ…… 」

まずい。つい現状を一番理解してるものだから。私はすべて知る者。

そこに守られているガキこそが王子で私はその王子の暗殺の依頼を受けた。

だからいくら自然に振る舞おうと緊張が顔に表れてしまう。

ああ王子今すぐお逃げください。私がこの手で抹殺して差し上げます。

こんな風にふざけられたらな。できるはずがない。トラブルになるに決まってる。


「もうよい。それで二人は何しにここへ? 」

「それはもちろん王子暗殺に……  ほほほ…… 冗談ですよ。

ただ王子主催の晩餐会にご招待されていまして。

それまで見て回ってるところでございます。そちらは? 団体旅行にでも? 」

もう面倒臭いな。もう正体を知っている。でもそんなことを言えば疑われる。

そんな無能ではない。私はきちんと暗殺者としての役目を果たすんだから。


「黙れ無礼者! この方はな…… 」

最初だけ迫力満点でそれからは大人しくなる。

どうやらあちらさんも正直に言えないので苦労しているよう。

まさか王子だと明かす訳にも行きませんよね。

「よかろう。私がその王子だ。晩餐会まで暇を持て余したので視察に訪れたのだ。

お前たちまさかそのことを初めから知っていたのではないか? 」

「王子! いえ…… 何を? 」

あまりに突然の告白にどう反応していいのか分からない。

ただの民であれば驚愕のあまりパニックに。

初めから知っているだけに余計難しい。


意外にも鋭いガキと言うか王子。もう少し大きく包容力があるならよかったのに。

生意気な病弱王子。私の好みとはかけ離れている。

ですがビアンカはそうでもなさそう。

王子の権威にひれ伏したのかどうも頬を赤らめさせて単なるメイドになり果てた。

情けないな。この程度のことで恥ずかしがらないでよ。ただのクソガキじゃない。


「王子はおいくつになられるのですか? 」

会っていきなりこのような質問をするのは大変無礼だと承知している。

ですが話が進まないだけでなく大変重要なこと。

「ほお…… 民には隠しているからのう。教えてやらんでもないがな…… 」

どうももったいぶる傾向にある。面倒臭い王子。

これほど幼いなら私が真剣になる必要もないか。

ただ守ると言う意味では真剣にならねばなりません。


「よしそちらも名を名乗れ」

王子の命令なら逆らえない。

「私たちは辺境の村からやって参りました。姉のビアンカです。

こちらは妹のマリオネッタ。姉妹で招待を受けた次第です」

自己紹介を終えて王子の視察に付き合うことに。

まずい。ただのメイド姉妹のつもりが招待を受けた令嬢になってしまった。

まあいいか。そちらの方が信用されるか。


                続く

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