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謎の暗号

ラクエラ・近所の教会。

「ではゆっくりして行ってください」

そう言うと姿を消す。これでチャンスは失われたか?

ううん。これで良かった。余計なことはやはり言ってはいけない。

もしかしたらこの教会もあの神父さんも奴らと何らかの関りがある可能性も。

ならば素直に告白すれば消されてしまうだろう。

ないとは言えないのがこのラクエラの恐ろしいところ。


私たちはここに来てまだ日が浅い。右も左も分からずに歩いているただの田舎者。

そんな私たちが光に誘われてこの教会に来るのは相手の思惑通り。

そうこれは罠。私たちは教会で神父さんに洗いざらい告白し明日処分される。

それが運命。裏切りに者には制裁を。

近くに教会。でき過ぎている。絶対言うものですか。

今すぐ逃げようとも救われようとも思わない。


ああどうしてこんな人間に? もう誰も信じられないだなんて悲しい。

疑ってばかり。これではよくしてくれた神父さんにも悪い気が……

それはビアンカも同じらしい。苦しくて辛い。

もう二人は前の関係には戻れない。お嬢様でもなければメイドでもない。

先ほどお嬢様と言ってくれたけれど。それでも……

深い絆で結ばれてはいてもそれはあまりにも暴力的。

お互いが暗殺者。相棒としてのみ見ている。

しかもどちらかがミスをしたり逃亡すれば片方も始末されてしまう。

いくら暗殺者と言っても自由がない。自分の意思もない。

ただ言われるままにターゲットを狩る。

ビアンカには水晶を。私にはおかしな異民族のダンスを強要する。

まったく意味不明。それでもこれで王子を暗殺することになる。

詳細は当日まで明かさない徹底ぶり。それが成功の秘訣だと。

ふう…… もう打つ手はないのかもしれません。


あの時余計な招待状を受け取らなければ。

そしてこっそり招待状を持って会場に向かわなければこんなことにはなってない。

たぶん今日も呑気に朝の見回りをしていたことでしょう。

調子に乗ってストに叱られる。そんな当たり前の日常はもうない。

自らつまらない平和な世界を捨てて刺激的な場所へやって来た。

悲しくないと言ったら嘘だ。でもそれを破壊したのも自分の愚行によるもの。

ストにもお父様にも顔向けできない。


「ごめんねビアンカ…… 」

つい堪え切れなくなり抱き着く。

「いいんですよマリオネッタお嬢様。このビアンカにすべてお任せください」

どうしたんだろうビアンカの目が輝いている。

もうどうにもならない運命に屈服し諦めていたのに。その目は死んでいない。

まさかここから本当に逆転できると言うの?

王子を暗殺せずに無事ラクエラから脱出し故郷に帰って来れると言うの?

仮にそうなっても負った傷は深くないでしょうが。


「ビアンカ…… あなた強いんですね。思った以上にタフなのね」

「そうです。私は強い…… ごめんなさい…… 全然そんなことありません」

ビアンカも堪え切れずに涙が溢れる。

どうやら強がりだったらしい。当然ですよね。この絶望感に苛まれては。

しかし彼女がこれでは誰に頼ればいいのでしょう? 救いを求められない。

互いに抱きしめ合う。もうどうすることもない現実。

それに気づくのが遅すぎた。逃げる方法は皆無。

ここには故郷とは違い他に頼る人物がいない。

庇護を受けることも相談することも叶わない。


「ありがとうビアンカ! 」

「マリオネッタお嬢様! 」

こうして互いに泣き合った。それにどんな意味があるのか不明ですが。

「うんうん。そうです。あなたたちは素晴らしい」

いつの間にか神父さんが慰めてくれる。

何も話してないのに優しい言葉を投げかける。

今なら正直にすべてを話せる。そんな決意みたいなものが。

しかし現実には口を噤み黙ったまま。


「これをどうぞ。お二人に幸あらんことを」

紙切れに謎の暗号のような数字。

迷いつつもその紙切れを受け取る。

神父さんは何も言わずにただ微笑んでる。だから私も礼を述べるに留めよう。

すべてを告白したところでどうにかなる訳ではない。黙っている。

試されているのかもしれない。


結局王子暗殺の件を一つも触れずに戻る。

こうして決意を新たに暗殺当日を迎えることに。


では晩餐会…… は夜なのでまずは視察に陰ながら同行することに。

どうやら王子の日程は筒抜けのよう。このままでは簡単に暗殺されてしまう。

それは私たち暗殺側の勝利を意味するのですがもう抜けられない。

だからそうなる前にどうにかする必要がある。


「ねえ眠いの。晩餐会は夜でしょう? もう少しゆっくり…… 」

つい昨夜は遅くまで考えごとをしていたので寝るのが遅くなってしまった。

「うるさい! 今更泣き言を言うな! 」

どうやら本気らしい。しかし私たちは最後の最後だと聞いている。

すべての作戦が空振りした場合のみ投入されると。

それまではただ仲間の仕事ぶりを見るに徹する。

とても面倒臭いが責任はなくのんびりしていられるのも事実。

緊張感などまったくない。かなりの退屈な時間。悪くないですけどね。

まったくどこまで用意周到なのでしょう? 呆れるほど。それが暗殺成功の鍵か。


「もっと大胆に行きません」

つまらない攻撃の積み重ねより手っ取り早く急襲しようと言う考え。

その方がこちらにとっては分かり易い。ただ一瞬で任務が完了してしまいそう。


               続く

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