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尋問

個室に招かれた男女三名の不審者。

そのうち少なくても一名は何らかの悪意を持ってやって来たに違いない。

それぞれ単独ではなく仲間だと言う可能性さえある。

少しでも隙を見せれば敵はそこを突き言い逃れるだろう。

ここは慎重にやらないと。


まず一人目。言ってることは不自然ではない。

通称トカゲ男。かなりユニークな不審者だ。

「ほうお前は貧しいからこんなことをしてると? 」

トルドによる尋問が始まる。彼はその手のエキスパート。

嘘を見破り相手の意図や思惑を測る。その洞察力は本物。

しかし年々腕が落ちてるのも事実。少々不安だがもう年だから仕方がない。

「そうだ。唸るほど銀貨を持っているお前らと一緒にするなこの成金野郎! 」

捨て台詞吐く余裕のない男。随分老け込んでるがまだ隠居する年でもないだろう。

どうやら我々をただの悪趣味な金持ちだと思っているらしい。

トルドがそんな風に見えるなら役に立ってる。


「こら失礼を抜かすな! この方はな…… 」

「待てトルド! 充分だ。お前は下がっていろ」

「へいへい。大金持ち様よ。その息子か? 孫か? 随分生意気だな」

どうも勘違いしてるらしい。嫌味攻撃を受ける。

庶民は大変なのだろう。それだけにこの男には危険がない。

断定には早過ぎるがただの貧しき者。それ故に端金で雇われる事もなくはない。

念の為に身元の確認ぐらいはして放つかな。


二人目に移る。

「それでこの男は? 」

もう一名はやせ細った男。殺意どころか生気をまったく感じられない。

「俺はただの観光客だ。ラクエラに遊びに来た」

正直な男。しかしラクエラが目的地だと言うのはどうも引っ掛かる。

「それは嘘だろう? そのような身なりで観光する余裕などあるまい。

正直に申せ。悪いことは言わない」

「偉そうなガキめ! ただちょっと覗いただけだろう? 個室に誰がいるかって」

好奇心からこのような真似をしたと。あり得なくもない。


「お前に仲間は? 」

トルドに代わってこの王子自ら取り調べることに。

この中で一番冷静で分析能力に長けている。

このままトルドに任せておけば正体を言い出しかねない。

それにもう年齢もあるしすぐに怒り出すし尋問は得意でもキレがないのは明らか。

隊長は鋭いし適任に見えるが好戦的なので任せておけない。だから自ら。

ネチネチと細かいことを言うのがこの王子の正体。

王子らしくないと思われるんだろうな。


「仲間? それが何か関係あるのか? 」

「答えろ! いるのかいないのか? どっちなんだ? 」

「うーん。いるよ。三人で来た。呼んでこようか」

少々迷ったが正直に答える男。これなら問題ない。

どんなことがあっても仲間を売るようなことはしないのがプロ。

特に具体的に人数まで。わざわざ呼ぼうとする緊張感のなさ。震えてさえいない。

この男は何も知らないただの乗客。

確認を終え解放するように隊長に命じる。

どうせどこからか逃げて来たのだろう。ラクエラで雇ってもらう気なのだろう。

それはそれで問題だが今回は見逃すとしよう。


「ちなみにこの私が誰か分かるか? 」

「あの爺さんの孫だろう。まったく生意気なガキだ。年上を少しは敬えよな」

「何を! この方は…… 」

「トルド! 」

どうもトルドはこの私の正体を晒そうとする。せっかくの隠密行動が無駄になる。

告白する真似は控えろよな。ただの生意気なガキでいいではないか。

プライドも大事だが身の安全を優先すべき。余計なことを言えば気づかれる。

仮に気づかれなかったとしても違和感からしつこく探りを入れる場合だって。

そうなったらいつの間にか敵と手を結んで我々を襲撃しかねない。

芽を摘むべきだろうが相手はただの乗客。手荒な真似はできない。


続いて三人目。ようやく話の分かりそうな方に出会えたかな?

「おっと失礼しましたお嬢さん。さあその美しいお顔を上げてください」

つい女性だと気合が入ってしまう。しかし第六感では彼女が怪しいと。

だから彼女のすべてを知らねばならない。

「ハイ…… 」

それっきり何も喋るつもりはないらしい。まさか言葉が分からないのか?

あるいは震えて言葉が出て来ないのか? または王子のオーラにやられたか?


沈黙が続く中で突然車体が揺れけたたましい音が耳に。

うるさいな。いくら慣れても不快に変わらない。

少しはスピードを緩めてもう少しゆっくり進んでくれたらな。

無理な注文だとは思うがそれぐらい丁寧に運転を頼みたい。

この王子を乗せてるのだから万が一があってはならない。


「名前は? 」

「分かりません」

「何だと? 自分の名前も分からないと? そんなことがあり得るのか? 」

さすがにそれは嘘だろう。ではどうしてこのような場所に?

怪しい。美しさもあって余計に怪しくなった。

「ハイ」

「ではどこに向かっていた? 」

「さあ」

ダメだ。まともには答えない。これでは自分で怪しいと認めてるようなもの。

不審者と言うより暗殺者。黒に違いない。


               続く

また明日!

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