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不審者

トントン

トントン

「ひいい…… 入れ! 」

やせ我慢で格好をつけるトルド。先ほどからそわそわしておかしい。

まさかトルドが裏切り者? だとすればこれも納得できる。

でもそんなはず…… 誰よりも尽くしてくれたのがトルドだ。

だからと言って絶対に違うとは言えないのが難しいところ。

今のところ怪しい動きをする者はいない。少なくても私の目から見た場合だが。

違う違う。まだ何も起きてない。味方を疑ってどうする?


「見回り完了。今のところトラブルはありません」

トレイン保安員の報告は何もないばかりでつまらない。欠伸が出るぐらい。

「本当か? 何もないと? 些細なトラブルもか? 」

トルドは焦った様子。一体何が気に入らないのか? 旅にトラブルはつきもの。

これでは飽きると言うのがトルドの主張なら納得もするが違うだろう?


「珍しく皆さん大人しい客ばかりで驚いております」

保安員は当然だが毎日業務についていて今と同じ曜日にも時刻にも乗車している。

それでも今日は特別大人しいと笑っている。

トラブルがまったくないは決して悪いことじゃない。歓迎すべきことだ。

ただ呑気に喜んでばかりいられない。それはただ統制されているだけ。

隠密である以上王子がお乗りになっているから大人しいもあり得ない。


「ははは! いつもこのようにトラブルもなく大人しいのだろう?  」

汗を垂らすトルド。

「まさかあり得ません! それは帰省の時はうるさくて激しく堪りませんが。

通常は人の数も僅かで。しかしトラブルはいつでも嫌と言うほど。

それこそ大きいのから小さいのまで。それが今日は小さなトラブルさえない。

しかも何度も見回りしてるにも関わらず」

そう喜ぶがこれは違う。我々は今大変危険な状況にあることが瞬時に理解できた。


「トルドまさか…… 」

「はい。どう考えても不自然です。これは異常だ! 」

「私もそう思う」

「王子! 」

「よし警戒は怠るな! 」

厳戒態勢に入る。これで多少は安心できるだろう。

どうも今度の旅は仕組まれていた可能性が高い。

すべての情報が筒抜けだなんて間抜けにもほどがあるぞ。


ダンダン

ダンダン

いきなりの打撃音に驚きを隠せない。

「何だ? 」

「失礼します! 見回りを終え戻って参りました」

隊長が息を切らして戻ってきた。これは随分と走り回らせてしまったか?


「隊長か? よし入れ! 」

トルドは確認することなく入室を許可する。

しかし相手は見えない敵。あり得ないとは思うが声色を使っても不思議はない。

暗殺者がその程度の能力を有してないはずがない。

念の為に身構えて後ろに下がる。


「はは! 不審人物を三名連れて参りました」

無力化された不審人物三名が通される。

おいおい何を考えてるんだ? 近づかせてどうする? 遠ざけるのが仕事だろう?


「怖がらずとも結構ですよ王子。もはや手も足も出せません」

そう言って拘束された三人を目の前に。余裕のビック隊長。

ああ何て大胆なんだろう? 信じられないような暴挙。

これが隊長のやり方なのか? しかし三人とはどう言うことだろう?


「説明をしてくれないか隊長」

「ははあ! 」

目の前に乱暴に投げ捨てられたのは男二名に女一名。

早く拘束を解けと騒ぐ一方で女の方は沈黙を保っている。

この場合怪しいのは沈黙を保っている方だろう。


「この男はトレインの屋根にへばりつていたトカゲです」

それではまるでトカゲだと言ってるようなもの。

これだけ怪しければ逆に怪しくなくなる。


「お前はなぜそのようなおかしな真似を? 理由があるなら聞かせてくれないか」

この私自ら直々に取り調べることに。これはこれで大変名誉なことなのだろうな。

「誰か知らねえけど放っておいてくれ! 金がねえから仕方ねえじゃないか」


金とは具体的には国王銀貨のこと。

我が国では国王が代替わりするごとに銀貨が発行される。

それまで使っていたものはゴミとなる。

その前に指定交換所で引き換えるそう。その時ばかりは大勢の国民が姿を見せる。

引き換え期間は三日のみ。その間に何度か並び直してすべて交換。


その場面を見ることは今のところないが国王の気持ち次第で譲位もあり得る。

その時に王位継承の第一候補の者が次の王に。

但し国王と帝国の王の承認を得れなければ別の者に代わる。

王位を受け継ぐのを拒否すれば第二王子が代わりに王となる。


国王も帝国の王も形だけの承認。

そもそも国王が崩御して譲位するのでまずあり得ないこと。

帝国の王もそこまでの介入をすることはまずない。

ただ最近関係が少々悪化しているのが気がかり。

ちなみに帝国の王とはこの世界を支配する巨大国家のことでその力は絶大だ。

争うことも反論することも許されない。それほどのカリスマ的存在。

帝国の王がいるからこそこの混沌とした世界がどうにかまとまっている。


                  続く

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