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ビアンカ豹変

ビアンカが水晶を。私は踊り子の真似事をさせられる羽目に。

嘘でしょう…… とっても恥ずかしい。私どうしたらいいの?

これが暗殺とどう繋がるの? まったく意味が分からない。


「ねえ他のメンバーは? 」

今一組が脱落した。私たちを含めれば九組十八名が参加することになる。

顔を合わせるぐらいしてもいいのでは? 

「互いを知れば何かとやりづらい。だから当日まで基本関わらない。いいな? 」

分かり易い話でもはや反論の余地はないのでただ頷く。


「それとこれを持っておけ」

本物の招待状。王子主催の晩餐会のご案内。

ついに手に入れた。一体どれだけの犠牲を払ったのでしょう? 

それでも手に入れたのだから無駄ではなかったと信じたい。


そうそうこれこそが探し求めていたもの。本物の招待状。

血塗られてもいない正式な招待状。

日時はちょうど今から三日後の夕方五時。

服装は自由で会場にてドレスに着替えてもらうそう。

多少きつかったり緩かったりするがそれは我慢するようにとのこと。

うまいやり方。これならば服に隠した凶器での暗殺はほぼ不可能。

王子たちもそこまで無警戒なはずない。


招待状は近隣の名のある者から選ぶ。

若くて美しい女性の中で王子のお気に入りを選ぶことになるのでしょう。

それが私ならどれほど幸せか。ただ王子にとってそれは最悪の選択となりますが。

私は暗殺側の人間。選べば破滅は間違いない。


もうその気になってしまう。いけない冷静に。落ち着こう。

どうか私をお選びください王子! それが本心なのですが……

実際に選んでしまうと地獄を見る。選んで欲しいような欲しくないような。

ああ美し過ぎるのは罪なのでしょうね? もうどうしようもない。

興奮状態。もう悲しいんだか嬉しいんだかも分からない。

王子との命懸けの恋。さあ逃避行と参りますか。


「よしもう質問はないな? 」

「一つだけ…… 他の者を排除するのは構わない? 」

ビアンカが恐ろしいことを言い出す。排除って何? そんな言葉聞いたことない。

まさか本気? 仲間を手に掛けるの? そんなこと私にできる?

いえ絶対に無理。人に刃を向けることさえ躊躇われるのに。まさか……

「ほう…… 積極的だな。その姿勢気に入ったぞ。それでこそプロだ。

結論を言うと作戦遂行の邪魔をしない限りにおいて許される。

だがまさか懸賞金を独り占めするつもりではあるまいな? 」

男たちからすれば協力しあって王子暗殺に導くのが理想なのでしょう。

それを拒絶するビアンカ。どう言うつもり?


協力しようが一人で仕留めようが暗殺に成功すればこの世界に混乱が生じる。

故郷やラクエラもただでは済まないでしょう。

混乱を乗り切りたとえ復活するにしても何年かかるか。

だからって作戦が失敗すれば我々暗殺者たちは奴らに始末される。

そうでなければ捕らえられて反逆者として処刑される。

そうなればお屋敷も家族も故郷さえもただでは済まない。

どちらを選んでも悲惨な未来しか残ってない。

だからってここで諦めてはダメ。どうにかしなければ。


「積極的な姿勢は支持する。しかし欲張って良いことなど何もないぞ」

「はあ? 何を言ってるの? あれだけの大金が手に入るのよ?

大人しく協力してろとは随分な言いよう。私はお金が欲しいの! 」

もはや見たこともないビアンカの表情。これがお金に憑りつかれた人間の姿?

醜い。何と醜いのでしょう? 


「よかろう。だが何度も言うが暗殺中の横槍は許さん。それだけは覚えておけ! 

まったく金に目が眩むとは…… まあそれくらいであって当然か」

そう言って勝手に一人で納得する。

まったく話に入れずに一人呆然としている。もっと分かるように説明してよね。

とにかく晩餐会までの間ここでお世話になりますか。


宛がわれた地下二階の埃臭い犬小屋のように狭い空間に閉じ込められる。

監視は二十四時間体制。逃げることは許されないそう。

実験しても構わないぞと余裕の表情を浮かべる。

まあこちらとしては逃げるつもりはない。でもやっぱり怖いな。

落ち着いたところでビアンカと向き合う。


「ねえあれはさすがにどう? まさか私まで排除する気? 」

聞きたいような聞きたくないような。そんな感じ。

放置できない。早いところビアンカの豹変理由を知りたい。

「はい。それしかないならば…… 」

真顔で答える。恐怖のメイドビアンカ。もう誰も信じられない。

ああどうしましょう? もう悪夢はこりごり。

どうしてこんなことになてしまったの?

ビアンカが極限状態で狂った。元々の人間性が出てしまったのでしょう。


「ビアンカ…… 」

「排除しますよ。私の邪魔をする者はね」

そう言って笑う。もう常軌を逸している。これがあの優しいビアンカなの?

私は彼女を勘違いしてたらしい。どこかのお嬢様でのんびりした性格だとばかり。

「そう……  」

あの血の招待状がすべてを狂わせてしまう。

もう決して以前の楽しい日々は戻って来ない。それは充分自覚してるつもり。


「もう! 冗談ですよマリオネッタお嬢様! 心配なさらずに」

演技派のビアンカに完全に騙されるところだった。

「冗談? 本気に見えたし聞こえたけど」

「何をおっしゃいます。これも作戦の内です。排除するのは悪人のみ。

ですがただ排除しようとすれば感づかれるし意図まで見破られる恐れがあります。

しかしさっきのように金に目が眩んだとなればそれは彼らの望む非情な殺し屋。

やる気と実力を示したようなもの。これで警戒も薄れるはず。試してみます? 」

そう言われたら面白そうなので乗ることに。

ダメ。これがいけないのよね。すぐに調子に乗るから痛い目に遭う。

でも分かっているけどやめられない。


それにしても手紙を書けってどう言うこと?


                続く

また明日!

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