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真実

王子に間もなく会える。

その希望が私たちを絶望の淵へ叩き落すとは思いもしなかった。

でもその兆候はところどころに見え隠れしていた。

不運だったのは血塗られた招待状。

あれが判読可能だったらこのような怪しげな場所に誘い込まれることもなかった。

後悔…… でも今更遅い。遅すぎるのです。



王子は女の子の憧れの存在。メイドだけでなく城下町の大金持ちも当然そう。

私の田舎屋敷とは比べものにならない。そんなお屋敷が城下町にはゴロゴロ。

そんな大金持ちの令嬢たちと張り合って王子のハートを射止めるんだから。

イチイチ決意が揺らぐようなこと言わないでよね。


「では承諾書にサインを」

どうも律儀なのよね。この程度のことで承諾も何もないでしょう?

そもそも王子のハートを射止めるのにいいも悪いもない。

大体これは王子の気持ちの問題であって決して射止める側の問題ではありません。

つまらないことをさせるなんて本当に笑っちゃう。何様?

いいですよ。覚悟を書に。求めると言うならいくらでも書こうではありませんか。


「はいはい。ここに名前を書けばいいのよね」

マリオネッタと下手な字でサインする。

これは私が悪いんじゃなくてサインは代わりの者が。

今回だってビアンカが。ですが本人直筆でないとダメらしい。

まったくどこまで細かいのよ。


こうしてついに契約を交わすことに。でも一体なぜこんなことを?

うーん。王子に会うのは相当なことなのでしょう。

簡単に会えると考えていた自分が浅はかだった。

田舎者のお嬢様と馬鹿にされる? 憧れの王子に会えるのだからそれでもいい。


「王子はどちらへ? 」

「さあどこにいるのやら…… 」

肝心の王子の居場所を知らないと。ふざけてるの?

「でも…… 」

どうも話が嚙み合わない。どうして王子がいないなどと言えるの?

これは王子主催の晩餐会でしょう? 主役不在でどうするの?

不思議で不思議で仕方がない。


「ではお金の話と行きましょうか。王子暗殺できた場合成功報酬としてその額を。

そうでなくてもサポートしたとしても一定金額お支払いします。

失敗した場合でも口止め料と言う形でお支払いします。

いいですか。絶対に成功させてくださいね! 」

男はついに具体的に話しだした。でも思ってもみないことだらけ。

怒濤の急展開にもはやついて行けない。言葉もない。


「ちょっと待って! 」

私に代わって今まで大人しくしていたビアンカが噛みつく。

「はい。ご質問があればどうぞ。暗殺計画にはご理解が必要かと」

「だから…… 暗殺計画? 」

「はい。招待状にもきちんと。ああ血まみれで隠れてしまったのか。

ですがあなた方は積極的にやって来た。当然理解しているのでしょう? 」

こう言われては何も反論できない。まさか嵌められたの?

王子のハートを射止めるのではなく暗殺するだなんて悪い冗談。

まるで悪夢。これはきっと夢に違いないのです。

だから目を瞑り現実逃避しよう。そうすればきっと正しい世界に導いてくれる。

そんな気がする。ただ気がするだけではダメでしょうが。


「済みません。このお話なかったことに…… 」

ビアンカは決して怯まない。もう交渉を始めている。

そうよビアンカ。強く出るのです。もうここで止めなければ。

引いては相手の思う壺。ここは強い意志を貫きなさい。

それが立派なメイド。ストへの第一歩なのだから。


「ほう。お前は断ると言うんだな? 」

険しい表情の男。さっきまでの作られた笑顔が消えた。

脅す気満々。最低男の称号を与えるに相応しい。

「はい。残念ながらこのお話なかったことに…… 」

さすがはビアンカ。

うん? どうしたんだろう? 嫌な予感がする。もう止まらない。


「もう一度確認するぞ。本当にそれでいいんだな? 」

「ハイ! 」

ビアンカの意志は固い。

しかし本当にそれでいいの?

現実を理解してるのでしょうか? もう嫌な予感しかしない。

これは破滅への第一歩。ここで抵抗すれば命はない。

男の後ろに人影が見える。このまま無事に帰すはずがありません。

邪魔者と裏切り者は排除する。それくらいの考えを持っていてもおかしくない。

もう逃れられない。


「待って! 私たちその仕事を受けます! よろしくお願いします! 」

そう言って下げたくもない頭を下げる。

嫌な予感がずっとしていた。それが何なのかどうしても分からなかった。

この血塗られた招待状が私の心を不安にさせていたのでしょう。


「しかしお嬢様! マリオネッタお嬢様! 」

ビアンカも引かない。でも私たちに選択肢などありはしない。

人影が妙な動きをしている。これは危険な兆候。もう抵抗してはいけない。

ストの追及を受ける時もこの諦めと逃げがあったからこそどうにかなっていた。

彼女は確かに優秀なメイド。

だけどまだ若いし駆け引きも修羅場も死線もさほど潜り抜けてないはず。

ただの田舎の一人娘で世間知らずだったに違いない。

私を守ろうといろいろと無理をさせていた。でも今はビアンカに任せておけない。

ここは穏便に済ます為にお嬢様として我がままに振る舞うのがいいでしょう。


もう今は王子に現を抜かしている時ではない。

目の前の脅威に対処する。その為には王子の命さえ奪って見せます。

ついに本当の意味で覚悟を決める。


                 続く

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