狙われたお嬢様
立て続けにトラブル発生。
まずはトレインが急停止。再開のめどが立たない。
次にビアンカが誘い出され独りっきりのところをおばさん三人組に囲まれる。
これは最悪の展開。どうする? ごきげんようで切り抜けられる場面ではない。
逃げる? 戦う? 大声を出すと言う手もある。
でも相手は武器を持っている。これではいくらビアンカが有能でも頼れない。
ここは大人しくポケットの中を出すのが正しい選択。
強情を張って拒否するのは最悪。
「ああん? どうなんだい? はっきりしな! 」
このお嬢様の美貌に嫉妬したであろう田舎のおばさん三人組からの催促。
ああどうしてこんな目に遭うのでしょう?
美しさとはそれだけで罪なのでしょうか? 魅了したいなどと思ったこともない。
本当についてない。あまりにもついてない。
「ハイどうぞ」
そう言ってポケットのものをすべて捨てる。
下手にノロノロしていると誤解されるから勢いよく。
ここにはあなたたちの見た目がよくなるような魔法のアイテムはないの。
それでもいいならいくらでも見せてあげる。
「何だいこれ? キャンディーにクッキーにチョコ? それと包み紙って…… 」
「どうぞお好きなのを選んで。お使いでラクエラに行くんで奮発したんだから」
お使いメイドの妹キャラはプライドが許さないですが仕方ない。
お嬢様だと舐められる。それはだけは絶対に嫌! 舐めるのは私の方なんだから。
「ふふふ…… あんたが招待状を持ってるのは知ってるんだ。早く渡しな! 」
睨みつける。お嬢様だから簡単に脅し取れると思ったらしい。
ですがそれは甘い考え。
どうやら敵の狙いはあの血塗られた招待状。初めから分かってはいましたが。
そう簡単には王子の元へたどり着かせてくれないらしい。これも試練の一つ。
この試練を乗り越え待ってるのが王子との新たな生活。
ここで簡単に渡してなるものですか。そもそも私は持ってないのだから。
持ってないものを渡す芸当はできない。
「何のことを言ってるんですか? 私はただのメイド。旦那様の使いで…… 」
どうメイドに見える? この高貴なオーラではさすがにメイドには見えないか。
一生懸命なりきってみるもどう考えても私がメイドには無理がある。
「往生際の悪い子だね。だったら裸にするよ。それでもいいのかい? 」
ついに実力行使に。ですが負けません。
そもそも招待状がないならそんな脅し無意味。あれば出せるがない。
「はい。構いませんよ」
即答する。別に本当に構わない。やってあげようじゃない。
周りが騒がしくなった。どうやら興奮してきたのでしょう。
つい相手のペースに乗せられる。いけない。冷静にならないと痛い目に遭う。
「裸になるのは構いませんがその前にあなた方が裸になるべきでしょう? 」
まずはそちらからお手本を見せる。それが常識。私はその後で。
「はあ? あんた頭おかしいのかい? 」
「それが礼儀だと言ってるんです。ねえ皆さん? 」
そうだそうだと大盛り上がり。
これで聴衆を完全に味方につけた。
トレインが止まって退屈していたところにこの騒動。
聴衆の熱気は相当なもの。
まずは目つきの悪い年齢不詳のご婦人方に裸になってもらいましょう。
「どうします? やりますか? 」
つい焚きつけてしまう。悪いと思いながらどんどん追い込んでいく。
どうしてこうなったんだろう?
「いいさ! こっちが脱いだらあんたもだからね? 」
そう言うと三人の中でよくしゃべるご婦人がゆっくり脱ぎ始める。
聴衆は大騒ぎ。もはやトレイン内はパニック寸前。
「申し訳ありませんが後が詰まってるので急いでお願いします」
思いっきり煽る。ああ最低な行為。でもこれは私のせいじゃない。
聴衆と一体となった為に起きた偶発的な出来事。
私はただの美しいお嬢様。世間知らずのお嬢様に変わりないのです。
しかし…… まさか一人目が本気で裸になるとは思いもしなかった。
ここは諦めて一旦出直すところですよ。
自らの言葉で足元を掬われるとは少々同情する面はありますがこれも定め。
「ほらあなたも早くしたら」
ついいつもの調子で。感じ悪かったかな? でもこれもすべてビアンカのせい。
ビアンカが生意気言うから私が爆発するの。
大体いつになったら戻って来る訳?
「もう何の騒ぎですかお嬢様? 」
噂をすればビアンカ。いつもの癖でお嬢様と。今は姉妹なのに。
「ああごめんなさい。放っておいたわねマリオネッタ」
言い直すビアンカ。さすがは優秀な専属のお世話係だ。
「それが…… 」
一部始終を話す。とても言い辛いですが何でもきちんと報告しろとうるさいから。
「もうどうしてお嬢様は脱ごうとするんです? 」
呆れた様子。もはや姉妹を演じられてないビアンカ。どうせ誰も聞いてないが。
そう聴衆は皆大騒ぎで目つきの悪い三人組に集中している。
「もう! 面倒ばかりかけて! きゃあ! 」
どうやらトレインが動き出した。
「大丈夫? 」
「急ぎましょう! 」
そう言うと腕を掴まれて聴衆に紛れ込み隣の車両に。
急ブレーキをかけてトレインはラクエラに到着。
続く




