出発!
同行依頼。当然喜んで引き受けるかと思いきやそうでもないよう。
「断るなら他の者に頼みます。そして専属メイドの地位を剥奪させます。
私のお世話ができなければ必要ありませんからね」
脅しと言うか当然のこと。交渉でさえない。果たしてビアンカの返事は?
「もう分かりましたよお嬢様。お供させて頂きます」
うん。渋々かな? 強引だったかな? でもこの言葉が欲しかった。
さあこれで心置きなく旅立つことができます。
それからはストに目をつけられないようにお嬢様らしい行動を心掛けた。
ストは私が心を入れ替えたものだと疑わない。
見回りだって我慢してる。男の方の裸を覗いたりも傷を触ったり舐めもしてない。
もう立派なお嬢様だ。
二日後に迫った晩餐会。その全貌が次第に見えて来た。
隣国の名家に招待状が届いたそう。これで証明された。
王子主催の晩餐会が開かれる。そこで舞踏会も。
分かってほっとしたがなぜこのマリオネッタ様には届かないのでしょうか?
食い違う部分もある。正式な晩餐会の方は少し先。こっちは二日後になってる。
本番は正式な招待状の通りでその事前段階の可能性もある。
要するに名家の令嬢を集め晩餐会に先立って事前確認しようとした?
その噂を聞きつけた私たちも非公式な会に参加することに。
好意的に捉えばそう言うことになる。果たして答えは?
どのみち王子に会えるなら構わない。早いに越したことはないでしょう。
すべては行ってみれば分かる。少々不安ですがこれも好奇心を満たすのにいい。
まだ見ぬ冒険の旅に出る。そう考えるとワクワクするな。
細かい違いが気にはなるが会場は恐らく同じ。ただ詳しくは載ってない。
とにかく今はこの怪しげな招待状を信じて行くしかない。
当日。会場を目指し出発!
晩餐会は夕方からなので充分に余裕を持って出発。
どうにか今日までビアンカ以外の者に言い触らさずに堪えた。
知れば皆行きたいと言い出しかねない。ですがこれは遊びじゃない。
非公式な招待とは言え名家の令嬢として招待された。
まだ正式な招待状は届いてませんが待ってられない。
名家のお嬢様だと言うのに私宛に招待状が届くことがない不思議。
それだけが不満。なぜ他の方に来るのになぜ私の元には来ない訳?
そのことが頭からなかなか離れない。ちっとも離れてくれない。
まずは屋敷から馬車では目立つので少し歩いたところで馬車を拾う。
そう簡単ではないだろうが私には優秀なメイドがいる。問題ない。
ビアンカにすべて任せてる。これで一安心と行かないのが彼女の憎めないところ。
前回道に迷ったのも彼女のせい。頼り過ぎては痛い目に遭うだろう。
ここは自分で見て考えるのがいいでしょう。
見送りは盛大とは行かない。あの招待状の存在を知るのは私とビアンカだけ。
ストにも他のメイドにも教えてない。秘密厳守。これは仕方ないこと。
ただ何かあった時にどうするか? 旅にはトラブルが付きものですからね。
その辺はビアンカに任せている。きっと大丈夫。
さあ一時間歩くとしましょう。今こそ朝の日課で鍛え上げた脚力を見せる時。
「もうダメ! 疲れた! 」
半分ほど歩いたところで限界。まさかビアンカに背負ってもらう訳にもいかない。
「急ぎましょう。これではいつまで経っても到着しませんよ」
「待って! もうそろそろ馬車に乗ってもいい頃じゃない? 」
ここまで来ればもう馬車を認めてもいいはず。
しかし五キロ地点に差し掛かってもその気配がない。
結局一時間歩いたところで馬車に乗り駅へ。
ハピエン駅。
トレインの終着点。ここからラクエラへ。
もうリラックスして構わない。気をつけるとしたら招待状を狙ってる連中。
ここは人の目があるので問題ないと思うがさっきからなぜか視線を感じる。
ビアンカは何も感じないと言う。こんなことってあるの?
まあこのトレインに乗ればもう大丈夫でしょう。
私を見ていたのはきっと美しくて惹かれたからに違いない。
ああ何て罪な存在なのでしょう? 気をつけなくてはいけません。
さあ間もなく出発です。
もしかしたらもう帰れないかもしれない。
おかしな連中に狙われてるのもそう。仮に王子に気に入られても戻るのは難しい。
それくらいの覚悟はもちろんあります。
出発時刻が迫る。
トレインは七つの村を繋ぐ。
その中心と言うか一番端で玄関口のラクエラ。
一番端のラクエラには三時間ほど掛かる。
そこから国王の宮殿のあるキングとその城下町アンダーへ。約五時間ほど。
ほぼノーストップなので快適なのですがそこまでに三時間掛かるから大変。
ラクエラにはお父様のお供で何度か。キングには七つの時に一度だけ。
国王様へお披露目の儀式で。この国の者は誰であれ一度はキングへ。
キングでは当然国王様のお姿を見たはず。ただあやふや。
恐らく国王様は当日緊急の用事ができて叶わなかったのだろう。
しかし当時ナンバースリーのワリト様の祝福を受けた気がする。
ああワリト様は今も元気でいらっしゃるでしょうか?
今回の王子来訪にはそのワリト様も姿を見せるのでしょうか?
続く




