メイドたちの噂
外国人風の男の方が出没するとのメイドの噂を聞きつけ隣村へと続く草原へ。
疲れた。いつもなら馬車で目的地まで。
しかし今回は噂の人探し。だから歩きでこっそりと。
ビアンカがいれば迷っても心配ないでしょうが。
「どう見えるビアンカ? 」
私よりも目のいいビアンカに頼る。
「またですか? ちっとも反省しておられてない」
文句を言う。勘違いしてるらしい。でもこれは違う。
純粋な好奇心からそのお方の正体を探ろうと考えている。
はっきり言ってこのような田舎の土地に旅行でもないだろうし。
一体何をしに来たのでしょうか? 疑問と言うかやはり好奇心から。
王子訪問と何らかの関係があるのかもしれません。
耳に入ってくる情報を無理やりくっつけてるだけ。
僅かな可能性にも賭けるのがこのマリオネッタお嬢様だ。
鎧を外した外国人風の格好をした髪の長い騎士。
どうやら隊から外れてこの地で一時的に静養されてるよう。
近くには食んでいる馬も。やはりメイドの噂通り王守りの騎士なのでしょうか?
彼から話を聞けば王子の情報が得られるかもしれない。
見た感じとてもタフで筋肉質。
あれほど日差しを浴びてるはずなのにまるで王族の方のように全体が白い。
「もうお嬢様! 魂胆見え見え。どうせ触れ合いたいと思ってるんでしょう? 」
ビアンカは心を読むように失礼なことを。でも逆に利用させてもらう。
「あらあらビアンカったら私のせいにしてお近づきになりたいんですね?
確かに素敵な方だと思いますが果たして現を抜かしていいのかしら? 」
「お嬢様何を? 」
「涎まで出てるじゃない。もう正直ね。これはストに報告しなければ」
「待ってお嬢様! そんな涎なんて…… 」
出てませんと必死。ふふふ…… コントロールできそう。
「いいからいいから。私の為に交渉して頂けませんか? 」
交渉とは少々大げさ? ですが気分を害されては口を閉ざすことになる。
「お嬢様! ですから私は…… 」
「はいはい。急ぎでお願いします」
「もう! 少しは私の話を…… 」
こうして男と接触を図る。
危険も多少あるがこれくらい問題ない。すべては王子様の為。
「君がマリオネッタだね? とても素敵だから緊張するな」
そう言って紳士に対応してくれる。思った通り優しそうなお方。
さっそくお願いを聞いてもらう。
「この傷は? 」
「ああ最初の戦いで喰らった奴さ」
古傷を自慢気に見せつける。意外にも深い。よく生還できたな?
それからも無数の傷を触らせてもらう。
「ううう…… やめてくれ! 舐めるのは反則だ」
つい癖で傷を舐めてしまった。大失態。
「し…… 失礼しました! 大変失礼しました! 」
頬を赤らめて顔を覆う。
「いやいいんだ。君が恥ずかしがることない。それよりどんな話が聞きたい? 」
あまりにも過剰な演技をしたから男が慌てる。うんやはり彼は紳士。
そして私ははしたない女。それがストの見立て。
こんなことばかりしていれば不幸を招くと不吉な予言。
でもきっとそれは思い過ごし。私の道は明るく開かれているはず。
それぐらいの強運を持ってるものです。お嬢様ですから試練など吹き飛ばす。
「自分は王守りの騎士。国王命令でこの辺りの調査に来ております」
そう言って笑う。どうやら王子視察の前に危険がないか調べてるのだろう。
間もなく王子がお越しに。それまでに一つでも多く危険な芽を摘み取ろうしてる。
「そうですか王子訪問の噂が…… ですがこれ以上自分の口からは何も言えない」
言い訳するがどうやら噂通り王子は近い内お越しになる。それはもはや決定事項。
噂で持ち切り。私だって一目王子に会ってみた。そして気に入られて……
傷を見せてもらう。でも王子には痛々しい傷跡は似合わないか。
「申し訳ない。自分はこれで。余計なことを言えば立場が危うい」
そう言うので無理に止めない。しかし噂が広がってるのはどう言うことでしょう?
王子訪問は正式にはまだだとか。彼が王守りの騎士だと言うのも事実だった。
この手の話は一体どこから流された? 漏れている?
そのことを一応は伝えておいた。だが彼はそこまで気にする様子はない。
ほぼ決定事項だからとも言えるがどうもその辺が気になるところ。
まさかとんでもない陰謀が渦巻いているのでは?
ビアンカたちに調べさせてみますか。適任はケミリたちがいいでしょう。
ケミリとはお父様直属の隠密部隊。
なぜそれを知っているかと言うと暴いたことがあるから。
ケミリにも大雑把な者もいて私がつい正体を見抜いてしまったのだ。
それをお父様に言いつけると観念し紹介してくれた。彼らは私に張り付いていた。
現在は平和になり動きを停止している。ただの村人に。
いつでも動けるように準備はしてる。彼らに調べてもらうのがいい。
お父様は平和ボケしてしまって察知能力が落ちてる。
でも最近は他国が動きを活発にしている。何か起きても不思議はない。
男と別れて森を抜ける。
続く




