ストに叱られて
純粋な男の子たちの誘いに乗りつい泳ぐことに。
しかし当然のことながらビアンカに止められる。それでも強引に。
もはやビアンカを見てない。視線は楽しく水浴びをしてる子供たちへ。
「ちょっと何を? 」
「いいからいいから。あなたも一緒に…… そうか泳げなかったんだっけ? 」
「お嬢様! 」
「もうビアンカは心配性なんだから。声ガラガラだよ。風邪でも引いた? 」
そう言って振り返るとストの姿が。ビアンカは私のドレスで隠れようとしている。
そんなことしても無駄無駄。隠すなら私の方でしょう? 早く渡しなさいっての。
「お嬢様! 何をなさっておいでですか? 」
鬼の形相のスト。さすがはベテラン。迫力が違う。
「げげ! スト…… 」
ついいつものくせで。少々下品だったでしょうか?
「それを脱いでどうなさるおつもりですか? 」
ストの追及が始まる。ネチネチとしつこいのよね。寒いんだから早くしてよ。
「それがさっぱりしたくてつい…… 」
危ない危ない。ギリギリセーフ。まだ辛うじて全部脱いでないから言い訳できる。
「いい加減になさいませ! 」
「ひい…… ごめんなさい! ご勘弁を! 」
ああストの前だとただの問題児。実際そうでしょうが。
でも私はお嬢様であってメイドではないんですよ。
私を注意する前にそこのビアンカを教育するべきでしょう。
言えたらな。でも言えない。表情にも出せない。反省してないと思われるもの。
「それで正直に答えな! さっぱりしたくて裸になったと? 」
怒り狂ってる。言葉遣いもどんどん荒くなる。
これはまずい。どうにか言い訳しないと。
でもどうすればいい? 裸になる理由ってあるの?
「どうしたのですか? 破廉恥な真似をしようとしてあたふたするのです? 」
怒りを抑えてるのが分かるから余計に何も言えない。
「ほら…… あれですよあれ…… 」
「ううん? 」
「お父様がですね…… 」
「アアン? 」
ダメだ。お父様を出しても一歩も引かない。大体お父様の命令で裸になるって何?
これではお父様にあらぬ疑いが掛かる。ただの言い訳にお父様を犠牲にできない。
私は良識のあるお嬢様なのですから。
やはりここはビアンカのせいにするのが一番いい。
エラになった記念にお嬢様が脱いでみせる。うん。これでどうにか。
ダメ。ビアンカがこれ以上の追及を受ければ何もかも吐いてしまう。
あらあら吐くだなんて下品だったでしょうか?
「ですから…… 」
ドンドン追い詰められていく。ああ私はどうなってしまうの?
まさかお屋敷から素っ裸で放り出されるの? それだけはどうにか避けたい。
「言い訳できませんよね? 自分が何をなさってるのかよく考えなさい。
本当に愚かで馬鹿なんだから! 嘆かわしい。奥様が草葉の陰で泣いてますよ」
そう言われては本当に返す言葉もない。でも私の前ではお母様の話は避けてよね。
自業自得とは言え関係ない。あの時の記憶をもう思い出したくない。
「これはその…… サービス」
「サービス? オービス? 」
「そうサービスですよ。読者サービス。サービスシーンを入れないと」
「読者? 何を言っておられるんですか? 頭でも打ちましたか? 」
「ほら読者が飽きないように。私の美貌で」
「ほぼ女性でしょう? 何を見当違いなことを言ってるんですか? 」
「そんなことない! これは大事なことなんですよ! 」
「読者…… そうだ読書はどうしました? 」
まずい。また余計なことを。いくら言い訳の為とは言え思い出させてしまった。
スト命令で一か月で五冊読めと言われていたんだった。無視して遊んでたけど。
「先日お渡した本はどうでしたか? 」
一行だって読んでないってのに感想を求められる。これもお嬢様の宿命。
「はいはい。大変よろしいかと」
無難に。これでいいでしょう? 文句ないよね?
「具体的には? 」
「いい作りだったなあ」
「ですから具体的には? 」
許してくれない。これは誤算。どうしましょう?
「その…… 本の材質が素晴らしく感動しました。あれは何でできてるんです?」
「バカ! 読んでないねあんた! 」
「読みました! それで材質は? 」
「パピルスだよ。大体全部そうだろうよ! 」
「ああ…… バブルス君で作られてるんですね? まあ痛そう」
「そうだよ。皮を剥いでね。えへへ…… ってバカ! 」
まさかストったら本気? 私はお嬢様なのよ?
「まったく本当に呆れるんだから。誰が殿方の御前で裸を晒そうとするんです?」
「もうかたいな。大体相手は子供だよ。一緒に泳ごうって」
「誘われて断るのが良識ある令嬢ではありませんか!
それをこんな破廉恥な格好で誘惑して。先ほどだって半裸の者に触れて。
本当に汚らわしい! どれだけ非常識か! 反省なさい! 」
まずい。相当怒ってるし止まらない。これは最大のピンチ。
別に裸ぐらい晒したっていいでしょう? 相手は気にもしてないんだからさ。
ここは平和な国。そんなところで男も女もない。
ただ好きなようにすればいい。のんびり田舎生活を満喫すればいい。
男の人が危険なのは夜だけ。変身するから近づくなとお父様の教え。
そう朝も昼も皆さん立派な方々。素敵な戦士なのです。たぶんだけど。
続く
また明日!




