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婚約者に事故死させられるはずだった伯爵令嬢、死を偽装して公開断罪いたします[全5話]  作者: 白昼夢


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エピローグ2 可憐な共犯者の微笑(妹視点)

妹視点の後日談です。

**エピローグ2 可憐な共犯者の微笑**






 夜会の喧騒が遠ざかり、バルコニーには静かな夜風だけが残っていた。


 私は柱の陰から、姉の背中を眺めている。


 深紅のドレス。


 誇り高く、誰よりも優雅で、誰よりも強い背中。


 ――ああ、本当に。


 お姉様は美しい。



「クリスティーヌ様」


 青年が声をかける。


 真っ直ぐな瞳。緊張で強ばった指先。


「求婚をお許しいただけますか」


 甘い響き。


 よくある光景。


 けれど。


 私は無意識に扇を強く握っていた。



 お姉様は一瞬だけ目を細め、


 そして、微笑む。


「――選ぶのは、私ですわ」


 完璧な返答。


 場を支配する声。


 誰も逆らえない気品。



 青年は頬を染め、深く頭を下げた。


 周囲の令嬢たちがざわめく。


「さすがヴァレンシュタイン伯爵令嬢」


「格が違うわ……」


 ええ、そうでしょうとも。


 お姉様は特別なのだから。



 けれど私は知っている。


 あの優雅な笑みの裏側を。


 あの静かな瞳の奥にある冷徹さを。


 そして。


 あの復讐劇を、共に完成させたのが――誰だったのかを。



「……お姉様」


 小さく呟く。


 届かない距離。


 でも、心は絡みついている。


 あの夜からずっと。



 アルフォンス。


 愚かで、浅はかで、救いようのない男。


 ……本当に、それだけだったのかしら。



 ふと、胸の奥に引っかかる。


 あの書簡。


 あまりにも都合の良い内容。


 あまりにも稚拙で、あまりにも露骨。



 あの男が、あそこまで計算できた?


 違和感。


 小さな、しかし消えない棘。



 思い出す。


 事故前。


 彼の不自然な焦り。


 時折見せた、理解の追いつかない自信。


 まるで――


 誰かに「大丈夫だ」と囁かれているかのような。



「……考えすぎ、よね」


 小さく笑う。


 だってアルフォンスは、


 自分の欲望すら制御できない男だったのだから。



 けれど。


 もし。



 もしもあの計画が、


 あの愚かな男自身のものではなかったとしたら?



 背筋を夜風が撫でる。


 少しだけ、冷たい。



「……まあ、いいわ」


 私はそっと視線を上げる。


 光の中のお姉様。


 完璧な勝利者。



 仮に誰かが裏にいたとしても。


 お姉様は負けない。


 私がいる限り。



「……ねえ、お姉様」


 私は微笑む。


 誰にも見えない位置で。


 静かに。


 甘く。



「次は、誰を壊しましょうか?」



 夜風が吹き抜ける。


 音楽が再び高まる。


 お姉様は振り返らない。


 まだ。


 気づかなくていい。



 だって私は――


 可憐で、無邪気で、愛らしい妹なのだから。


 誰よりもお姉様を愛している、


 完璧な味方。



 ……今は、ね。


**――終**

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