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婚約者に事故死させられるはずだった伯爵令嬢、死を偽装して公開断罪いたします[全5話]  作者: 白昼夢


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第五話 断罪、そして完全勝利





アルフォンス・レイモンドは拘束された。


罪状。


・殺害計画未遂

・詐欺的相続干渉

・虚偽申告


だが。


彼の未来を完全に断ち切ったのは――


**世論**だった。



「財産目当てで婚約者を殺そうとした男」


その噂は、炎のように王都を駆け巡った。


貴族社会において信用は命より重い。


一度失えば、二度と戻らない。



侯爵家の声明は迅速だった。


「当家とは無関係の独断」


切り捨て。


あまりにも早く。


あまりにも冷酷に。



「家族にも見放されたのね」


エミリアが淡々と言う。


「当然よ。これ以上評判を落とせないもの」


アルフォンスは守るものを持たなかった。


だから――負けた。



数日後。


私は面会室を訪れた。


鉄格子の向こう。


かつての婚約者。


やつれた顔。


虚ろな瞳。



「……なぜだ……」


掠れた声。


「なぜ……ここまで……」


私は静かに答える。


「あなたが始めたからです」



「私は……ただ家を立て直したかった……」


「ご自分の家を、でしょう?」


沈黙。



「私を愛しているふりをしながら」


「殺す計画を立てた」


「違う……!」


空虚な否定。



「少し脅せば従うと思った」


「事故は、その延長――」


彼の言葉が止まる。


自ら認めたも同然だった。



「私はあなたを信じていました」


その言葉に、彼の肩が震える。



「でもあなたは」


「私を“手段”にした」



私は一歩下がる。


それ以上、責めない。


怒鳴らない。


罵倒しない。



それが最も残酷だから。



「助けてくれ……」


縋る声。


かつて私を奈落へ突き落とそうとした男の声。



私は微笑んだ。


「怖いですわね」


静かに。


優雅に。


「事故って」



アルフォンスの顔が歪む。


記憶が蘇る。


あの夜。


石段。


転落。


血。



「さようなら、アルフォンス様」


振り返らない。


背後で崩れ落ちる音が響いた。



侯爵家は没落した。


当主は隠居。


家名は辛うじて残ったものの、


社交界での影響力は完全に失われた。



アルフォンスは遠方の監視領へ送致。


二度と王都へ戻れない。


完全な終わり。



東の庭園。


あの石段。


今は修繕され、花が植えられている。



「終わったわね」


エミリアが呟く。


「ええ」


私は静かに答えた。


「でも私は、生きている」



父が歩み寄る。


「よくやったな、クリス」


母が涙ぐみながら抱きしめる。


「あなたを失わずに済んで……本当によかった」



温もり。


それが、私の真の勝利だった。



数か月後。


私は正式に伯爵家後継として公に立つ。


堂々と。


優雅に。


誰ももう、私を軽んじない。



夜会のバルコニー。


夜風が髪を揺らす。



「クリスティーヌ様」


背後から声。


振り向く。


見知らぬ青年。


真っ直ぐな瞳。



「求婚をお許しいただけますか」



私は一瞬だけ目を細め、


そしてグラスを傾けた。



「――選ぶのは、私ですわ」



もう私は、奪われる令嬢ではない。


運命に殺される女でもない。



舞台の中心に立ち、


すべてを掌握する者。



**断罪、そして完全勝利。**


――終。

ここまでお読みいただき、本当にありがとうございました。

少しでも楽しんでいただけたなら嬉しいです。

もしよろしければ、ご感想や評価をいただけますと今後の励みになります。

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