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婚約者に事故死させられるはずだった伯爵令嬢、死を偽装して公開断罪いたします[全5話]  作者: 白昼夢


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第四話 死者、帰還



貴族会議。


王都大広間。


本来ならば、喪に服す伯爵家が出席する場ではない。


だが――


「今こそ、家を支えるべき時です」


そう主張したのはアルフォンス・レイモンドだった。


「伯爵は深い悲嘆の中にある」


「ならば私が補佐いたします」


あまりにも“出来すぎた献身”。


その必死さが、すでに違和感を生んでいた。



会議当日。


重苦しい空気が大広間を満たしていた。


黒衣の貴族たち。


低く交わされる囁き。


「……早すぎないか?」


「まだ葬儀から間もない」


「それなのに財産管理権の協議とは……」


疑念は、静かに広がっている。



「私は――」


壇上。


アルフォンスが沈痛な面持ちで語り始めた。


「亡きクリスティーヌの婚約者として」


計算された沈黙。


伏せられた視線。


「彼女の遺志を継ぎ、伯爵家を守りたい」


美しい演説。


非の打ちどころのない悲劇の婚約者。


……のはずだった。



――そのとき。


大扉が、ゆっくりと開いた。


軋む音。


一斉に向けられる視線。


ざわめき。



黒でも白でもない。


深紅のドレス。


光を受けて揺れる金の髪。


私は静かに歩み出た。



「その遺志――」


壇上を見上げ、微笑む。


**「本人に確認なさいます?」**



空気が凍りついた。


誰かが息を呑む。


グラスが落ちる音。



「……な……」


アルフォンスの顔から血の気が引いた。


「……ば……馬鹿な……」


「お久しぶりですわ、アルフォンス様」


私は優雅に一礼する。


「クリス……ティーヌ……?」


「ええ」


微笑みは崩さない。


「生きております」



「そんな……死んだはずだ……!」


その一言。


会場がざわつく。


“死んだはず”。


まるで。


死を確信していたかのような響き。



「確かに事故には遭いましたわ」


私はゆっくりと壇上へ進む。


「東の庭園で」


「足場の悪い石段で」


貴族たちの視線が彼へ集まる。



「ですが――」


医師が前へ出た。


「令嬢は奇跡的に助かりました」


「重傷ではありましたが、命は取り留めました」



「嘘だ!!」


アルフォンスが叫ぶ。


「私はこの目で……!」


そこで言葉が止まる。


――何を見たのか?


なぜそこまで言い切れるのか?


自ら墓穴を掘る。



「事故の直前」


私は静かに告げた。


「私は婚約者様にこう申し上げました」


静寂。


「“怖いですわ、事故って”と」



使用人が進み出る。


「そのお言葉、確かに聞いております」


「お二人きりではありませんでした」



さらに。


私は一通の書簡を取り出した。


封蝋付き。


見覚えのある印。



「……なぜ……それを……」


アルフォンスの声が震える。


「図書室に落ちておりましたの」


私は首を傾げる。


「事故前日に」



会議長が厳しい声を発した。


「アルフォンス・レイモンド」


「説明を」



「罠だ!!」


彼は叫んだ。


「これは罠だ!」


「ええ」


私は微笑んだ。


「罠ですわ」


一瞬。


希望の色が浮かぶ。



「あなたが私に仕掛けた罠を」


一歩、近づく。


「少しだけ作り替えただけ」



沈黙。


絶望が彼の顔を覆う。



「事故を装い、私を排除し」


「悲劇の婚約者として財産へ近づく」


「……浅はかですわ」



会場の空気が変わった。


同情は消え。


軽蔑が満ちる。



「違う……私は……」


崩れる声。


「私はただ……!」


言えない。


“金が欲しかった”など。


言えば終わる。



私は静かに告げた。


「私は生きています」


「伯爵家の長女として」


優雅に一礼する。



**「そして――裏切りは許しません」**



衛兵が動いた。


アルフォンスは抵抗すらできず拘束される。



彼の破滅は、


王都すべての視線の中で確定した。



だが。


これは終わりではない。



**――まだ、最後の仕上げが残っている。**


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