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回収作戦 (2)

「亡霊石」の周囲に、臨時の陣地を築こうとしていた。

使える建物は残し、死角ができそうな部分は村を壊して防壁を作る。防壁の前には地面を掘り、廃棄された武器を突き立てた落とし穴を設置した。

時間さえ許せば、もっとまともな陣地を築きたかったが……目的は亡霊石の回収まで時間を稼ぐこと。これが最善だった。


陣地の構築がほぼ完了した頃――カラスたちが飛び立ち、陣地の周囲を旋回しながら鳴き声を上げる。

(感知網に侵入者が引っかかったようだな)


作戦は単純だ。回収まで残り三時間。兵力の大半は築いた陣地を守り、ハデスは少数の兵を率いて奇襲と撤退を繰り返し、敵と交戦する。

もし敵がハデスを捕らえるため別働隊を差し向けてきたら、各個撃破する。


「始めるぞ」

どうか、無事に終わってくれ――そう願うばかりだ。


「星位国」の兵が森に足を踏み入れ始める。周囲をうろつくゾンビを一体、また一体と処理しつつ、「死の気配」に汚染された地面の一部を浄化しながら進んでいく。


「ただの調査と聞いていましたが……これは面倒なことになりそうですな、指揮官殿」

「……仕方ない。この原因の震源地を突き止めるまでは帰れん」


精鋭兵士多数と、冒険者チーム一組からなる部隊。兵士隊と冒険者隊、それぞれのリーダーがこの森について話を交わしていた。


「浄化作業の進み具合はどうだ?」

「進入路に限って浄化しているので問題ありません。ただ、少し時間はかかりそうです」


浄化作業を担う神官たちは着実に道を切り開いているが、動かせる兵力が限られているため、投入できた神官は数名に過ぎない。


「殿、多少の被害を覚悟してでも震源地を確認しては?」

「……ならば、洗礼を受けてから行くぞ」


浄化せずに生者が踏み込めば、生命力を吸われる。さらに酷ければ死人となってしまうが、神官の「洗礼せんれい」を受ければ進入は問題ない。


「冒険者チームへの洗礼は完了しております」

「では……ん?」


その時、茂みの中に不自然な動きが見えた。単なる風か、それとも徘徊するゾンビか――そう疑った瞬間、矢が彼らへと飛来した。


「盾を構えろ!」


指揮官は飛んできた矢を剣で弾きながら命令する。兵士たちは一糸乱れぬ動きで盾を構え、矢の雨を防ぎ切った。


「殿! 奇襲です!」

「わかっておる!」


声を荒げ、盾の陰から矢の飛んできた方向を睨む。追加の矢は飛んでこなかったが、足音が近づき――やがて一人の男が飛び込み、盾へ剣を叩きつけた。


鉄製の盾が歪む轟音と共に、弾き飛ばされた兵士たちの前に、その男は立っていた。

(こいつか……人間? いや、少し違うな)


指揮官は一見して人間だと思ったが、そこから放たれる邪悪な気配は、人のものではないと感じた。

最初の奇襲に混乱していた兵たちも、敵の姿を目にすると一斉に斬りかかる。


先頭の一人が勢いよく剣を突き出す。

だが男はそれを軽く避け、背中を押して転倒させると、そのまま背後の敵の首を刎ねた。首を失った肉体を盾代わりにし、突き出された槍を防ぐ。

身体に刺さった槍を一閃で断ち切り、死体を兵たちへと投げつける。


投げつけられた死体は、あまりの力に五体がバラバラとなり、倒れた兵たちの心に恐怖を刻み込んだ。


「どけ! 俺がやる!」


ただ者ではないと悟った指揮官は剣を抜き、男に向かって駆ける。

しかし男は迫る指揮官を嘲笑い、地面に転がっていた片腕を投げて視線を逸らさせると、現れた茂みの奥へと一目散に逃げ込んだ。


「逃げるだと……?!」


追おうと声を上げたが、再び矢が飛び込んできて、思わず身を伏せる。矢が止んだときには、男の姿はもうなかった。


(くそっ……何者だ?)


正体不明の男の襲撃で、部隊は損害を受けた。

指揮官は、この任務が単なる地域調査ではなく、何か途方もない事態に巻き込まれていることに怒りを覚える。

しかし、始まった以上は終わらせねばならない。


「冒険者チームは震源地へ向かえ。我々は再編が終わり次第、すぐに追う」

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