死者の依頼 (2)
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ハデスは標的である徴兵官に剣を向ける。
そして手に持っていた剣を握り直し、勢いよく投げつけた。
鋭く回転しながら飛んだ剣は標的に向かって一直線に迫るが、すぐ隣にいた隊長がとっさに剣を抜いてそれを弾き返す。
「貴様らは何者だ? どこの国の刺客だ!」
隊長が問いただすが、ハデスは無言のまま、落ちた剣を拾いながらゆっくりと歩み寄る。
「逃げてください。ここは私が食い止めます!」
その言葉に、徴兵官と取り巻きたちは慌てて場を離れ、逃げ出す。
「追え。一人も生かすな。」
骸骨戦士たちは一斉に逃げた者たちを追いかけた。
隊長は彼らを止めようと動こうとしたが、すでにハデスが目前に迫っており、剣を交えて進行を遮る。
二人の剣がぶつかり合い、力と力がぶつかる。
隊長はハデスを押し潰そうと力を込めるが、剣の刃は逆にじりじりと自分の方へ押し寄せてくる。
(この力……人間じゃない!)
圧倒的な力にバランスを崩し、そのまま地面に倒れ込む。
喉元まで迫った刃を両手で押し返そうとするが、ハデスはその剣を口にくわえ、ゆっくりとねじり始めた。
「た、助け……っ」
その言葉が終わるよりも早く、剣は喉を切り裂き、「パチン」と音を立てて首を落とす。
血に染まった剣を手に、ハデスは立ち上がり、顔に付いた血を拭いながら死体を見下ろし、
「十六。」
と呟くと、残った者たちの後を追う。
しばらくして、骸骨戦士たちにより取り巻きの三人はその場で殺され、ただ一人残った徴兵官は、傷を負ったまま地面に倒れていた。
「た、助けてくれ……何でもする……!」
地面に這いつくばりながら、ハデスの足にすがりつく徴兵官。だが、ハデスは不快そうに彼を蹴り飛ばす。
「金……金ならいくらでも出す……!」
袖の中から金貨の袋を取り出し、必死に命乞いをする徴兵官。
だがハデスはその金貨ごと、横一文字に彼の体を斬り裂いた。
「うぐっ……!」
短いうめき声とともに、金貨がばらばらと地面に散らばる。だが、それでも彼はまだ死んでいなかった。
「殺すのは、俺じゃない。あいつらだ。」
そう言ってハデスは、自分の背後を指差す。
彼の後ろからやって来たのは……生きる死体。
正確にはゾンビ。いや、先ほど虐殺された村人たちの亡骸だった。
「俺は……お前みたいな奴が嫌いなんだ。」
地を這いながら必死に逃げようとする徴兵官。
だがゾンビたちはハデスを通り過ぎると、彼を両手で押さえつけ、そのまま牙を立てて喰らい始めた。
「……撤収する。」
ハデスは彼を放置し、部下たちに撤収命令を下す。
断末魔の悲鳴が響く中、彼は振り返らずに歩き続けた。
やがてその叫び声も、食いちぎる音も、静かに消えていく。
ハデスは彼を背に、ぽつりと呟く。
「二十。」
紫の霧が村全体をゆっくりと包み込み、そして――消えた。
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