亡霊島の秘密 (1)
「お疲れさま。」
ラピスは回収した亡霊石を撫でながら、ハデスを褒めてやる。
「思ったより被害が大きかったです。」
亡霊石を守るために防衛していた兵力のほとんどを失った。
任務が失敗に終わる危険もあったため、ハデスは頭を下げて報告した。
「大丈夫よ~。亡霊石さえあれば、大半の被害は回復できるから。」
そんなハデスを見て、気にするなと言わんばかりに手を振り、寛大に答える。
「ところでハデス、この亡霊石がどう使われるか知ってる?」
「よくは分かりません。」
ラピスの命令で回収しただけで、ただ重要なものだということしか知らない。
「それじゃ、ついてきなさい。」
ラピスは亡霊石を手に、どこかへ向かって歩き出した。
亡霊島の地下室。
階段を下りると、湿った空気が漂ってくる。
階段以外は洞窟のような造りで、二人が通り過ぎると、壁に取り付けられた灯りが青白い炎を揺らめかせながら点いていった。
この場所に初めて来たハデスは緊張し、警戒を怠らなかった。
だが、亡霊石を抱えて楽しげに降りていくラピスを見て、やがてため息をついた。
「この亡霊島が空に浮かんでいるのは知っているわね?」
「知っています。」
「じゃあ、何がこの島を浮かせているのか、分かる?」
「……詳しくは分かりませんが、亡霊石と関係があるのだと思います。」
ラピスはまるで正解だとでも言うように微笑み、やがて階段の終わりへたどり着いた。
そこには巨大な……想像を超えるほどの紫色の結晶石が、堂々と鎮座していた。
結晶石の周囲には得体の知れない力が漂い、洞窟の壁に沿ってどこかへ流れ出している。
「これは『天空石』と呼ばれているの。」
「天空石……。」
その威容と美しさに、ハデスは目を離せなかった。
「この亡霊島が空を飛べる理由の一つが、この天空石から放たれる莫大な力のおかげなのよ。これのせいで私は苦労してるんだから。」
ラピスは苛立ちを込めて天空石を拳で軽く叩いた。
すると、まるで心臓が脈打つような不安定な気配が溢れ出す。
その不安定な力に誘われ、ハデスは思わず手を伸ばそうとしたが……。
「触らないように気をつけて。下手をすると死ぬわよ。」
ラピスはハデスの手をはたき落としながら言った。
「……申し訳ありません。」
洞窟内が一瞬、凍りつくような空気に包まれる。
「ははは、ごめんね。ここに来るとついピリピリしちゃうの。」
ラピスは笑って取り繕うが、その怒りは本物だったようだ。
ラピスはハデスに下がるよう手で合図すると、亡霊石を片手に、もう一方の手で天空石に触れた。
すると、亡霊石に蓄えられていた力がゆっくりと放たれ、天空石へと吸い込まれていった。




