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レスボス魔

〈夏だらり横断歩道横たはる 涙次〉



【ⅰ】


 永田です。八重樫火鳥、ますます我が襤褸アパに入り浸つて、だうやら「押し掛け女房」に彼女は成りたいみたい。私に「あなたの才能は分かり難いけれども、確かに地に足着けた人の文章になつてゐるわ」と云ふ。要は凡人愛に目醒めたつて事か・笑。

 安条展典は最近分裂症染みて來てゐる、と云ふ。悦美さんと遷姫さんとの、レズビアン冩眞集が出したい、とか云つてゐるらしい。


 カンテラさん、にやにやしつゝ、「いゝんぢやないの? 美×美は、更なる美、であるだらうから」とか、その事は許可してゐる。悦美「えー、わたしがレズビアンに目醒めたらだうするのー」カン「きみに限つてそんな事はなからう」と、大した自信。自分に惚れ込んでゐる悦美さんには、レズの目は、ない。と確信してゐるのだ。



【ⅱ】


 カンテラが悦美に、レズ冩眞集の事、許可してゐると聞き、金尾くんも、遷姫さんに「是非、やつてごらんなさい。貴女の美しさを、世の男性がたに知つて貰ひたい」こちらは、ほんのちよつとの虛榮心に依る、薦め。遷姫さん、溜め息を吐きつゝ、「世ノ殿方ノ事ハイザ知ラズ、問題ハ重悟、アナタニアルンヂヤナイノ?」と鋭い金尾くん評。だが、結局、彼女も承諾し、安条の新しいプロジェクト、開始の運びとなつた。



【ⅲ】


 初めは恥ずかしがつてなかなか打ち解けなかつた悦美さん・遷姫さんであるが、そこは腐つても鯛、安条のフォトグラファーとしての導きは健在で、何とか「絡め」るやうになつてきた。禁断のキス・シーンも...「やつてみれば、難なく出來るのよ」と、悦美さんのカンさんへの報告。因みに「龍」は、撮影場の外で、大人しく待つてゐる。


 だが、この耽美の花園、實は【魔】の目の付け處となつてゐた。その名も「レスボス魔」なる、「ニュー・タイプ【魔】」が、彼女らの脳を、作り變へてしまつたのだ。次第に「本氣化」してゆくフォト・セッション- つひに齒留めが利かぬ狀態に... その詳しい模様は、余りにエロ過ぎて、永田、書く事及ばぬ。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈レスボスの島に巣食つた詩人たち詩と云へば良いが本氣(マジ)汁たらり 平手みき〉



【ⅳ】


 見学に來た、カンさん・金尾くん、「こ、これは」。エグい物を見てしまつた、或ひは、自分たちの薦めでかうなつた事を、早くも後悔してゐる感じ。だう見ても、悦美さん・遷姫さん兩名とも、本当にレスボスの道に目醒めたやうにしか見えない。安条は、何故だか(自分のプランが圖に乘つたにも関はらず)しよぼん、としてゐる。


「カンさん、これつて僕の實力つてより、【魔】の介在に依る物なんぢやないかな?」-「だつたら、だうしてくれる、と云ふんだ」-「僕にはもう失ふ物は何もない。僕が、【魔】と直談判してみます」


「直談判、でだうにかなる相手だつたら良いのだが-」カンさんには、自分の自信過剰から來たやうに思へる、この二人のサッフォーの末裔振りが目に痛かつたのだらう。


 で、案の定、【魔】との談判は決裂した。「あなた方、男性に飽き足らない女つて、ゐるものよ」-「レスボス魔」はさう云ひ放つた、と云ふ。カンさんは、またか、と思ひつゝも、安条が「レスボス魔」とだうやつて會見したか、訊いてみた。

「僕がキャメラを提げてゐるからかな?」念の為、安条が先頭に立ち、カンさん・金尾くんを案内する、と決まり、カンさん「夜迄待つてくれ」。これは勿論、金尾くんがゴーレムに成れる時間帯を指定したのだ。



【ⅴ】


 日が落ちた。二人固まり蠢いてゐる、陰獸化した悦美さん・遷姫さんを置いて、カンさん・金尾くん(のゴーレム)、安条の先導で、「レスボス魔」に會ひに。カンさんは無論、斬る心づもりだつたらうけれど。「龍」は遷姫さんが「あの調子」なので、てんで役に立たない狀態になつてゐた。


「間拔け面が揃つたわね。ぢや、わたしの使ひ魔たちに、後は任せるわ」わらわらと、サッフォー軍が湧き出でる。ゴーレムは、その一人一人を踏み潰して行つた。「ま、何てことするの、レイディたちに向かつて」-「レスボス魔」ご立腹である。だが、カンさん、「二人を元の二人に戻せ。さもなくば、斬る」-「わ、分かつたわ」-「よし」


 人間界。悦美さん・遷姫さん、どちらも「夢を見てた... 途轍もない快楽が伴ふ夢...」。目が醒めたやうである。カンさん「よし」。と、


「しええええええいつ!!」-「た、たばかつたわね。これだから男は汚い-」-「皆迄云ふな。そんな事は分かり切つてゐる、上での、貴様への贈り物(プレゼント)が、この一太刀だ」



【ⅵ】


 それから、悦美さんが、遷姫の事を「遷ちやん」と呼ぶやうになつたのが、カンさんの心配、と云へば心配だつた・笑。まあ、パートナーは大事にしませう。あなたがどんなセクシュアリティにあつたとしても。



 ⁂  ⁂  ⁂  ⁂


〈蚊も初で目出度きと云ふ揶揄ひよ 涙次〉



 お仕舞ひ。


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