「散歩」の約束を叶えるため、お姉ちゃんは頑張ります。〜プロローグ〜
プロローグ
「お姉ちゃん、生まれ変わりって信じる?・・・わたし、次に生まれ変わったら、健康な体に生まれて、お姉ちゃんと一緒に散歩したいんだ」
「散歩?散歩でいいの?」
「他にもいっぱいしたいことはあるよ?でも一番したいのは、お姉ちゃんとゆっくり散歩。」
「・・・他にはどんなことがしたいの?」
「・・・お姉ちゃんは、異世界って信じる?異世界に転生って本当にあると思う?わたし、次の人生は、異世界で魔法使いになって、勇者と一緒に冒険者になりたいなぁ」
「小説の読みすぎじゃない?」
「えぇ?お姉ちゃんは生まれ変わりは信じないの?」
「う〜ん・・・そうだね、異世界での次の人生、あったらいいね」
病弱で15年という短い生涯をずっと病院のベッドの上で過ごした最愛の妹。
「わたしは冒険者になるの。お姉ちゃんは冒険とか好きじゃないでしょ?だから、お姉ちゃんは聖女さまなんてどう?けが人や病気の人たちを治すの。そして、最終的には王子様と結ばれて、幸せな人生を送るんだよ。」
「じゃぁ、りなは?」
「わたしはね、勇者でもいいし、騎士さまとかもいいかなぁ?わたしはお城で大人しくしてるなんてまっぴらゴメンだから、一緒に世界中をとびまわれる人がいいなぁ。で、ね、お姉ちゃんとわたしは、生き別れていた姉妹で、わたしが冒険者として有名になった事で、お姉ちゃんがわたしを見つけてくれるの。」
「えぇ?一緒に暮らせないの?」
「始めはね。でも感動の再会を果たすんだよ。お姉ちゃんもわたしもお互いが死んじゃったと思い込んでて、ある時ひょんな事でお互いが生きてるって知るの。で、大聖女のお姉ちゃんがわたしを見つけ出してくれるんだよ」
妹が亡くなる数日前に交わした会話。
それを胸に、わたしはひたすら執筆を続ける。
妹が胸に描いていた夢を具現化すべく、文字を綴る。
生前、妹がよく小説を読んでいたネット小説サイトにその小説を掲載すると、ありがたいことに出版社の方の目に留まり、あれよあれよと言う間に出版され、ベストセラーへと上り詰めた。
第2の人生を夢見た最愛の妹のため。
わたしの拙い小説を待っていてくれる読者のため。
命を削って執筆を続けた・・・・結果。
過労で命を落としたわたしが目を覚ました先は・・・自分の書いていた小説の中の世界だった。
続く