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第六話

 部屋は明るく窓から日が差し込み、光の強さが人が動き出す時間を教えていた。


 バンッ!


 勢い良く開いた扉の音は、夢の世界で遊んでいた私を現実の世界に突き落としてくれた。


「ぅあ? ……? ……ここどこ?」

 あれ、さっきまでゲームセンター居て、ファーストフード食べに行こうかーって話をしてたんじゃ……?


「あきちゃん!」

「……かな?」

 先に起きていたかなが、私が起きたことに気付き近寄ってくる。

 心配そうに覗き込んでくる、かな。

「あきちゃん、大丈夫?」

「かな、おはよー。……ここ……どこだっけ?」

 学校の保健室……にしては、大きいし。それ以前にもう学生じゃないし。

 起き上がってきょろきょろと周りを見回す私。その様子を見て、かなは安堵した表情になった。


「おはよう、あきちゃん。大丈夫そうで、ホント良かった」

「大丈夫……? 大丈夫って私が……?? ……ぁ!」


 ああ、やっと思い出した。

 私とかなは異世界? に来ちゃったんだ!?

 そして、着いた早々凶暴な化け物に襲われ、かなを庇って右腕を負傷したんだった。


「あ~~うん。まあ、たぶん大丈夫。利き腕なのがつらいけど、かなが無事でよかったよ」

 昨日よりかは、右腕痛まないし。起きるとき痛くなかったから、すっかり忘れてた。


「あきちゃん! 私があきちゃんの右腕になる!」

 うん、かなはかなだ。

 何事にも精一杯で、こっちまで頑張らないとって思うわ。

「そりゃまた無理な。でも、ありがと。難しいときは頼ませてね」

「任せてよ!」


 かなの笑顔につられて笑う。

 ああ、平穏っていいな。平穏だといいな!


「おはようございます。カナエ様。アキネさん。昨晩は良く眠れましたか?」

「おはようございます」

「おはようございます、リディルさん」

 はい、名前を忘れてたのは秘密です。かなはえらいね、ちゃんと名前覚えてるよ。

 リディルは丁寧にお辞儀をして、笑顔を振りまいた。

 昨日の暗い部屋の中で見たときより、明るい部屋で見たときのほうが、リディルはとても美人さんに見えました。今日も眼福であります。

 昨日は暗くてはっきりとはわからなかったが、やはりリディルの瞳の色はかなと同じ銀色だった。



「リディル! 『神銀の乙女』が来たって聞いたぞ!」

 扉を勢い良く開けたであろう人物が、そう叫んだ。

 あの人が、私の安眠を妨害した人か。

 返せ、私の照り焼きバーガーを!(まだ、頼む前だったけど)

「カナエ様の御前ですよ。カナエ様、五月蝿くして申し訳ありません。彼は、一応この国の王子です」

 リディルは扉を開けた人物に向かって叱り付け、かなのほうを向いて笑顔で教えた。

 かなも私も、扉を開けた人物を見る。


 彼は年のころ十代後半といったところ。

 背丈は私より10cmくらい高い程度。リディルよりかは背が低い。

 顔のつくりは、どちらかというと中華系に近いんじゃないんだろうか。

 高校に三人か四人くらいいそうな程度の美形くん。

 髪の色は奇天烈な、深い緑色。目の色も、髪の色と同じ深緑。

 なんてファンタジーな色合いの人だ。天然物だからなのか、違和感がないのがすごい。


 そういえば、リディルはヨーロッパ系にいそうな顔のつくりだけど、このファンタジーな世界は人種とかあるのだろうか?



「ああ、これは失礼した。『神銀の乙女』は……こちらの方か」

 そう言って、彼はかなのほうへと向き直り、お辞儀をして言った。

「私は、スニクス国の王子、エルサレム・レン・クルースと申します。エルとお呼び下さい」

 爽やかに微笑んだエルは、すごく幼く見えた。

「あ、はい。ご丁寧にありがとうございます。私は、神武 香奈恵です。こっちは、親友の高木 明音ちゃんです。宜しくお願いします」

 そう言って、かなは私を紹介した後、お辞儀をした。


 あ! かなも私のこと「親友」って……。

 すっごい、嬉しいんだけど!


 ご丁寧に、かなに紹介されました。

 親友です。ふふふ、羨ましいだろう。って、誰に向かって思ってるんだか。

「あ、高木 明音です。宜しくお願いします」

 まだ、ベッドの上だったので深々とはできないので、会釈程度。


「親友……ですか。宜しくお願いします」

 エルは意外そうな顔で、私を見る。

 ええい、悪かったな。平々凡々な一般庶民的な顔で!

 かなは私と違って、どちらかと言えば可愛い系の美少女の部類に入るだろうし。高校のときは男友達から、かなを紹介してくれと言われたこともある。


 エルは私を少し見た後、視線を少し下へと下げた。

「腕は……?」

「名誉の負傷ですよ」

 即座に横から答えが飛んできた。リディルが答えました。

 ってか、名誉ってなんだ?名誉って!


 エルは不思議そうな表情をした。そりゃそうだ。

 あれだけで、判るわけないでしょ!

「あの、私を庇って……あきちゃんが……」

「かなのせいじゃないよ!私が勝手にした。ってか勝手に動いちゃったんだから。かなが悪いわけじゃないから、気にしないの。いい?」

 かなは昨日のことを思い出し、痛々しいような泣きそうな表情に変わった。

 私が必死に弁明していると、かなは少しだけ笑ってくれた。

 その様子を見ていたエルは、一人納得したようだった。


 コンコンッ


 開けっ放しにされたドアを、律儀にノックする人がいた。

 ドアをノックしたのは二人の男性だった。

「お話中のところを失礼致します。『神銀の乙女』カナエ様。王が謁見を申し入れております。つきましては、朝食を済ませた後、王との謁見をして頂きたいのですが。宜しいでしょうか?」

 ドアをノックした男性は、片膝を床につけ騎士のように頭を垂れた後、顔を上げ一気に言った。


「クラウ。せめて、自己紹介してからにしなさい」

 リディルはため息をつき、片膝をついた男性に向かって言った。

「申し遅れました。私はクラウ・ソラス・アガートと申します。クラウと呼び捨てになさってください」

 ドアをノックした男性はクラウと名乗った。その後ろにいた男性も名乗りを上げた。

「フーガ・レギン・ラグムート。フーガと」

 口数少ないな後ろの男性。


 クラウは私たちと同じ日系にいそうな顔のつくりで、どちらかというと年下だけど格好良いねって感じの美男子さん。

 年のころは二十歳くらいだろうか?

 髪の色は、これまたファンタジーな色合いかと思いきや、茶色でした。それでも、瞳の色はリディルやかなと同じ銀色。

 だけど、なんかどこかで見たことあるような感じだ。どこだっけか?


 フーガはこの場に居る誰よりも背が高かった。

 背丈の順だと、かな<私<エル<クラウ<リディル<フーガっぽい。この中に猫背が居る場合、実際の身長よりも低く見えるから、まあ見た感じの背丈順。

 フーガは褐色の肌に、ファンタジーな色合いのなんと青色の髪!

 アジア系の顔のつくりは、渋いけど格好いい感じ。彼もどちらかと言えば美形ですね。

 そして、瞳の色は銀色。


 昨日、リディルに聞いた話を思い出す。

 男性の場合、銀の瞳を持つものは女神と『神銀の乙女』に剣を捧げると。

 剣を捧げるってことは、騎士なんだろう。

 ということはだ、リディル、クラウ、フーガのこの三人は女神とかなの騎士ってことか。


 しかしだ。

 なんとも居づらい。

 美男美少女の中に、平々凡々な一般庶民な顔のつくりの私じゃ。

 ですが、まあ眼福です。


「さて、王が謁見を申し入れてるわけですが。カナエ様。クラウの申した通り、朝食をとることにいたしませんか? お腹もすいてきているでしょう? ですが、その前にしていただきたいことがあるのですが、宜しいですよね?」


 そう言って、リディルはにっこりと微笑んだ。

 若干、笑顔が怖く感じます。断ることなんて許しませんよって感じだ。

 こいつ、地味に腹黒なんじゃとか思ってません。

 まあ、別に今拒否する理由などないから問題なんてないのですけどね。





 でも、まあ。お腹すきました。

騎士が3人出ました。王子まで出ました。イケメンばっかりです。

腹黒い人が一人居るだけで、物語って動かしやすいです。お付き合い願います。


普通に間違えてた不等号。ご指摘ありがとうございます!

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