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第三十話

(かな…?)

かなに「お母さん」と呟かれた女神は、かなの母親とは似ても似つかないそんな容姿だった。

ホログラム映像のような女神は人間と同じ形だが、人間とは思えないほどの美しい美貌で…あまりにも美しすぎて彼女が人間などではない女神なのだと感じる。

彼女はとても綺麗で、とても綺麗で綺麗すぎて、怖い。

『神銀の乙女』や『神銀の騎士』などの職業?があるように女神は銀色だった。銀の髪に銀の瞳。服は真っ白なふわふわのドレスのような服に、そのドレスの細部に銀色の刺繍があり、艶やかだった。

雰囲気も神秘的な感じのなかに、全てを包み込むような母のような優しさが溢れていた。

全身で女神と言っているといっても過言でない気がした。


私は彼女もとい女神を観察するようにじっと見ていた。

いきなり女神はこちらを向き、視線がぶつかった。

「あなたが…アキネですね」

にこりと微笑を浮かべた女神。

女神。

女の神。

この世界の神々の一柱。

目の前に、神様がいる。

でも、実感が沸かない。

「あ、はい。そうです」

なんとも間抜けな返答をしたものだと、後で思うような返事をしてしまった。

私は今、思いっきり緊張しているのだろう。

そうでなければ、平常であれば、気づけたかもしれないものに、今の私は気づけなかった。

「私はイシュタリア。カナエ、アキネ。良く来てくれました。歓迎します」

女神は微笑を浮かべたまま、私とかなを歓迎した。

「あ、あの女神様。私たちを元の世界に戻してください!」

「お願いです!元の世界に帰してください!」

建前も何も無い。ただ、私もかなも思っていることを女神にぶつけた。

「カナエ様!!」

女神の後ろにいるクラウが声を荒らげた。直ぐ様、横に居たリディルに制されて、次の言葉を発せられずにいた。終わったら…もしかしたら説教でもされるかもしれないな。

本音をぶつけられた当の女神は、ただただ哀しそうに顔が歪んだ。

折角の綺麗な顔が台なし…と思ったけれど、それすらも美しい。

麗しい美貌は哀しい表情すら魅力とするようだ。

「ごめんなさい。カナエ、アキネ。今の私には二人を元の世界に戻すための力がありません」

ああ、やっぱり思った通り…教えてもらった通りに女神の力の断片集めの旅になるのか…?

私は視線を女神から下げた。視線を上げる前に少しだけ、かなを見た。

かなの表情は沈んだような、落ち込んだような表情に見えた。

「カナエ、貴方を呼んだのはそのためです。この世界に散らばる私の力の断片を集めて来て欲しいのです」

・・・あれ?私の名前は呼ばれなかったし…お二人とかも言われてない…。

それよりも、昨日から少し気になったことが一つ。

この世界に来て直ぐに疑問になったことが一つ。

私は女神に聞いてみることにした。答えてくれるといいんだけど…。

「あのすみませんが、二つほどお伺いしても宜しいでしょうか?」

「私に答えられることなら」

緊張で、手が震える。

欲しい答え…。それはきっと貰えないんだと思う。それでも、聞かずにはいられない。

「一つは、力の断片を集めるのに何故この世界の『神銀の乙女』じゃ駄目なのですか?」

女神は一度目を瞑り、軽く頷くような仕草の後、答えをくれた。

きっと、過去に聞かれたことがあるのかもしれない。

「貴方の言う通り、この世界の人で済めば私もそうします。ですが、この世界の人には私の力の断片を受け入れる事ができません。だからと言って、何もしないままこの世界を、私の愛しい子供たちを殺してしまうような真似もできません」

女神は一度言葉を区切り、痛々しそうな表情になった。

「私は…この世界に生きる愛しい子供たちを守りたい…。勝手に呼ばれた貴方たちの気持ちも、少しは解るつもりです。それでも、私は私の愛しい子供たちを守るために、私の力の断片を集めることが出来る人をこの世界に呼びました」

「そう・・・ですか。分かりました」

なんだろう…女神というより、誰かの母親と話してる気分だ。

いや、実際そうなんだろう。

この世界の住人にとっては女神は偉大な母親なのだ。

そして、女神にとってもこの世界の住人は愛すべき子供なんだ。



「アキネ、二つ伺いたいと言いましたね。もう一つはなんですか?」

「あの・・・私はどうして呼ばれたのでしょうか?」

その質問には、女神の奥にいる女王や騎士たち、きっと隣にいるかなも驚いたような表情になった。

「『神銀の乙女』以外がこの世界に召喚されたことは過去の事例にはないと教えてもらいました。でも、私は『神銀の乙女』ではありません。『神銀の乙女』はかなであって、私は違うみたいだし。じゃあ、どうして私は呼ばれたのでしょうか?女神様、教えて下さい?」

私は一気に捲し立てるように言った。

この世界に来て、教えてもらってからずっと疑問だった。

女神は少しだけ目を伏せ、少し悲しそうな表情をした。

もう、それだけで十分理解してしまった。

私は呼ばれてなんていないんだと。

表情に出てないといいな。

女神の後ろにいる人達に、情け無いような顔なんて見られたくないや。

「私は探し出して、呼びかけ、道を示すのが力。弟の力で、道を開きます。・・・今まで、こんなことは無かった。私にも、アキネ貴方が何故この世界にいるのか解りません。・・・弟が呼んだのか、それとも事故だったのか…解らないのです。ごめんなさい」


・・・まあ、なんだ・・・今更落ち込むのもあれだけど、やっぱり直接聞くと落ち込みますね。

弟に呼ばれたのかもと言ったが、そんな気がしない。

きっと私は・・・かなのおまけのようにこの世界に来ちゃったんだ。

・・・おまけのようにだ。


「・・・あきちゃん・・・」

私を気遣ってだろう、かなが心配そうな声色で呼びかけてくれた。

「かな・・・。大丈夫」

そう、大丈夫。

おまけだろうとなんだろうと、来ちゃったからには仕方ないさ。前向きに考えようって、この間決めたばかりだし。そう、前向きに!

かなを心配させたくなくて、頑張って笑顔を作ったつもり。

上手く笑えた自信は無いけど、伝わっててくれるといいな。




「女神様。かなと私が自分たちの世界に戻るためには、貴方の力の断片を集めれば、帰れるのですか?」

かなも作り笑顔だと解っただろうが、それでも察してくれたのかそれ以上は何も言わないでくれた。

私の発言にかなの視線は女神へと移動した。

「ええ。力さえ戻れば、貴方たちの居た世界を探し、道を示すことができます。道を開く力を持つ弟も、その場に居させます。そうすれば、貴方たちを元の世界に戻すことは可能です」

かなのほっとしたように小さく「よかった」と呟いた。



「では、リディル、クラウ、フーガ。貴方達三人がカナエの護衛として旅の共をしなさい。アキネ貴方は危ないので、スニクス国でカナエが力の断片を集め終わるのを待っていると良いでしょう」

「私も行きます!」

考えたりする前に、口から言葉が出た。

きっと、考えても同じ言葉しか出なかった気はするけれど。

「あきちゃん」

かなが少し嬉しそうに呼んでくれた。

目の前に居る、女神は少しだけ目を細めて言った。なんだか威圧感があります。

「危険な旅になります。それに、護衛対象が増えれば騎士の負担も増えることになります。ですから貴方はこの国に」

「待ってるだけなんて嫌です!お願いです。かなと一緒に居させてください!私にはかなが必要なんです。それに、私にも関係してることです。女神の力の断片が集まらなかったら帰れない…」

女神の言葉を遮るようにして、叫ぶ一歩手前のような声量で言った。最後の方は徐々に小さくなって声が震えていた気がするが、私の頭の中は混乱していたから気づかない。

この時私は何を言っていたのか、よく理解していなかった気がする。

ただ、置いて行かれたくないとだけ。その気持だけが、今私の口から言葉を紡いでいた。

「危険な旅なのに、自分だけ安全なところで待っているなんて出来ない。かなと一緒に行かせてください!」

少しだけ、沈黙が降りた。

女神が何かを言おうとする前に、聞き慣れたかなの声が広間に響いた。

「私からもお願いします。私もあきちゃんが一緒のほうが心強いです。騎士の方々には負担になるかもしれませんが・・・お願いします」


再び、沈黙が訪れた。

「危険な旅ですよ?命の保証など出来ません。騎士にはカナエの護衛を第一と優先させますが、それでも旅に着いて行きますか?」

女神は、ゆっくりと事実だけを淡々と述べた。

「はい」

ホログラム映像でも解るような溜め息を、女神がついた。

そして、至上の笑顔を浮かべて言った。

「カナエと共に私のところまで来て下さい」



これが、私とかなの旅の始まりの言葉となった。

やっと、あらすじで書いた部分までたどり着いた。めっちゃ遅い気がしますが許してください。書きたいと思ったこと書き連ねてたら…気づいたらこんな遅いところに…。会話ばかりで不明瞭な部分があるかもしれません。解りにくい部分がありましたら指摘でもしてください。頑張ってみます。

引き続き宜しくお願いします。

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