第二十六話
「では、魔法についでですが…まずカナエ様とアキネ様がどの魔法を使えるか調べてみましょうか。確か…まだ魔力鑑定は済んでいらっしゃらないんでしたよね?」
魔力鑑定とは、その人が持つ魔法との相性や魔力量を調べることができるらしい。
CT検査みたいな機械でもあるのかな?それとも、ファンタジーちっくにどこかの占い師が使っているような水晶とかで調べたりするのかな?調べ方については聞いていない気がする。
「えっとその…ごめんなさい。まだ、調べてもらってません」
「そうですか。わかりました」
かなの返事にマリーンは追求などする事もせず、机の引き出しから何かを探していた。
・・・ごめんなさい、かな!私が悪かった。
昨日の夜、私があの場を逃げ出さなければ食事の後にでも調べれたかもしれないのに…。
「・・・ご、ごめん」
かなに聞こえる程度の小さな声で、謝罪してみた。
かなは予想通り、ふるふると小さくだけどはっきりと首を振って否定した。
「あきちゃんのせいじゃないよ。それに、昨日は遅かったしね」
かなも私と同じように小声で返してくれました。
かなの心遣いが身に染みる。
マリーンは目的のものを発見したのか、引き出しの中からファイルケースくらいのサイズの木箱を取り出した。
「じゃあ、まずは魔力鑑定をいたしましょう。これを三分ほど持っていてください」
にっこりと笑顔でマリーンが差し出してきたのは、木箱の中から取り出した真っ白なはがきサイズの紙を一人に一枚ずつ渡してきた。
私とかなに紙を渡し終えるとマリーンは木箱の中に一緒に入っていた砂時計を引っくり返し、机に立てた。
「「 ? 」」
これを三分ほど持ってってお嬢さん…何そのカップ麺みたいな待ち時間。
渡された紙を手に取る。私もかなもなにこれ?って感じで首をかしげながら、紙を眺めた。
引っくり返したりしても、それは真っ白のはがきサイズの紙だった。
しばらくすると、手に持った真っ白な紙は色を帯び始めた。
青と緑が波線のようにじわじわと白い紙を染めていく。
白い紙に踊る、青と緑の波線。線が太くなり紙の白が見えなくなったりもしたが、線が細くなったりもした。太くなったり、細くなったりと生きてるみたいだ。
色も濃くなったり、薄くなったりと見ていて面白い変化ではある。
どんな構造でこんなことになってるのかな?
かなの持っている白い紙も色を帯びている。かなのは私の持ってる紙と違って、一面の黄色一色だった。
黄色なんだけど、濃いと表現したくなるような深い黄色だった。
「真っ黄色だね…」
「うん。凄い黄色。…あきちゃんのは、なんだか面白いね」
横からかなの黄色に染まった紙を見て発言した私に、かなは私の紙と自分のとを見比べた。
確かに私のはかなのと違って、未だに太さや色が定まらない。
青と緑の波線なのは変わらないけれど、変動を続けていた。
「時間ですね。見せて頂いても宜しいですか?」
マリーンが木箱から取り出した砂時計を戻しながら、笑顔で言ってきた。
彼女は時間と言った。かなの紙は色が固定化しているが、私の方は未だに変動を続けている。だが、時間らしい。
かなは迷わず真っ白から真っ黄色に色付いた紙を、マリーンに渡した。
時間と言われたので、大人しく私も色の定まらない紙を渡した。
かなから渡された紙を見て、マリーンは驚いたような表情を浮かべ、嬉しそうな笑顔に変化した。
「・・・こんな見事な黄色は初めて見ました…。流石、女神に呼ばれた『神銀の乙女』…。今この国を含め各国に居る『神銀の乙女』も『神銀の騎士』もカナエ様のようにこれほど見事な黄色を出した者はおりません」
今度は私が渡した紙を見て、マリーンは少し苦笑いするような微妙な笑顔になった。
「アキネ様も珍しいと言えば、珍しいです。まだ色が変わり続けているのですね。私は話でしか聞いたことありませんでしたが、極稀に魔力量が一定じゃない人が居るそうです。どのような条件で変動するのかは解ってはおりませんが…」
珍しいのか…嬉しいような微妙なような。
だが、それ以上に、この世界に呼んだのは女神っぽい言い方だ。
…待て。自分今まで、きちんと召喚されたのかどうなのかということを、しっかり聞いた記憶はない気がする。
今のところ、人の話から推測しかしてないし…。
「あの、マリーンさん。もしかして…かなや私をこの世界に呼んだのは女神…様なのですか?」
「…リディル様たちからお聞きじゃなかったのですか?」
マリーンは少し驚いた表情の後、眉をひそめ怪訝そうな表情でかなの横に座っているリディルを見た。
「そういえば、聞かれてないのですっかり言いそびれてましたね…すみません」
リディルは謝罪の言葉を言っているけれど、謝罪をしているようで悪びれた様子が全くない気がする。
その様子があからさまだったのだろう。マリーンも溜め息を吐いた。
「はぁ…。リディル様たちって、どこか抜けていらっしゃるのでしょうか。私でよければ説明をさせて頂きます」
「あ、お願いします」
「『神銀の乙女』は女神の御使です。別の世界からお見えになられた『神銀の乙女』は女神自身が御呼びになったと記述されております。女神の御力が弱まったとき、女神の御力で呼ばれると書かれてありました」
「弱まったときに呼ばれれるの・・・?」
「はい。そして、女神自身が御呼びになった『神銀の乙女』に女神の力の断片を集めてもらうそうです。集め終えた力の断片を持って『神代の塔』へ向かうので、『神銀の乙女』の巡礼のような旅の最後の目的地が全部同じ『神代の塔』なのはそういった理由だと」
おい、さっきのリディルの講義ではそんなこと教えてくれなかったぞ…?
とか思い、リディルの方を見ると、ものすっごくいい笑顔でした。漫画とかで何かを誤魔化す人が凄いイイ笑顔な、あれによく似ている。よもや、リアルでそんなのを見れるとは・・・。
「リディル様からお聞きじゃ・・・なかったようですね」
マリーンは少しリディルの方をじっと見つめて・・・というか、睨みつけているようだった。
「…リディル様、貴方はカナエ様とアキネ様のこれからの不安を煽らないために、と言ってなかったのですか?」
リディルが言わなかったのは私たちの為だったのかと問うマリーンの発言に対してリディルは、凄いイイ笑顔で答えた。
「言いそびれていただけだよ」
「・・・わかりました」
それ以上追求しても無駄だと判断したのか、マリーンは再び私たちの方を向いて説明を続けた。
「えっと…どこまで説明しましたか…。ああ、巡回の旅をするという説明まででしたね。明日の『聖帝の祭日』で女神にお会いすることが可能なはずです。きっと、その時に女神からカナエ様へ説明をされるんじゃないかと思われます…。多分ですけど」
最後の方は自信なさ気に、マリーンは苦笑いをしているようだった。
「さて、大分話が逸れてしまいましたが、魔法に関しての講義を続けても宜しいでしょうか?」
サティ譲りだろう人懐っこい笑顔でマリーンが聞いてきた。
「あ、はい。すみません、違うことを質問して…。お願いします」
「はい。魔法のない世界からお見えになられていた場合は少々解りにくい説明かもしれませが、お付き合いくださませ」
私が少し焦ったようにすると、マリーンがくすりと笑った。なんだかその様子が凄く大人の女性の仕草に見えてしまいました・・・。同じ位の年頃だって聞いてた気がするんだけどなぁ…。私がガキっぽいだけなのか…なぁ?
「この世界には大きく分けて二種類の魔法があります。神々の寵愛を受けてる者だけが使える『神魔術』と、人が己の魔力だけで発動させる『人魔術』があります」
昨日、お風呂で少しだけ説明をしてもらったのは神魔術で、私が腕に追った傷はその神魔術によって治してもらったらし。
「先程神魔術は神々の寵愛と言いましたが、一般的には女神の寵愛と認識されています。ですので、神魔術といったら女神の魔法と思って下さって構いません。他の神々の魔法もありますが、その殆どは人魔術との区別が付き難く、本人も知らずに使っているようなケースもあるくらいす。そのため、女神イシュタリア様以外の神魔術はあまり知られておりません」
マリーンは一度言葉を区切り、先程かなが魔力鑑定に使った真っ黄色に染まった紙を見て、かなを見て言った。
「神魔術は使える者が極一部で、その大半は『神銀の乙女』や『神銀の騎士』の方々です。カナエ様、これは先程魔力鑑定で使った紙です。真っ黄色に染まっていますね」
そう言いながら、マリーンは真っ黄色に染まった紙を私やかなの見える位置に置いた。
「カナエ様、魔力鑑定の紙の色で黄色は神の色とされております。何故銀色に染まらないのかは解りませんが…。兎に角、黄色に染まったということは、神魔術が使えるということです」
机の見える位置に置かれた、魔力鑑定に使った紙は真っ黄色に染まっている。一部分ではなく、全部が真っ黄色に染まってる。
「これ程見事な濃い黄色を出した者は、今現在いません。カナエ様以外。カナエ様は神魔術の使い手で、それもかなり高位の使い手です」
かなは・・・女神の寵愛を凄い受けているって事なんだろう…。少し羨ましい気がする。
ほら、だって魔法とか使えるなら高度なのだって使えると楽しそうじゃない?
誰に言い訳みたいなこと言ってるんだか・・・。
そう思うと…私のあの変動しっぱなしだった青と緑の波線の紙。
結果を聞くのが、ちょっと聞くのが怖いです。
説明ばかり続いてます。会話が多いから一行にびっしり文字が詰まっちゃいました。上手く説明出来ていると良いのですが。
今回は絡みは薄いですね。説明ですから。
でも、友達とか良いとか誉められてるの聞いたら喜ばしいけど、その後の自分の発表とかって怖くなりません?ドキドキっというか。そこら辺、頑張って次か次の次くらいにでも表現したいと思ってます!