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第二十三話

「かな、大丈夫?」

ドアの前で立ったまま、泣きそうなかなに声をかけてみた。

かなはびくっと反応して、こっちを振り向いた。

「・・・大丈夫・・・。うん、大丈夫」

かなは自分自身に言い聞かせるように言った後、窓辺へと近づき夜空を見た。窓を開けないまま。


「ねえ、あきちゃん。『この世界に来てくれて、ありがとう』とか言われても、困ると思わない?」

かなは窓を開けないまま、窓の外を見続けた。かなは私の方を向くことはなかった。


私には、わからない。

私は、この世界に望まれて来たわけじゃないらしいし。

そんなこと、言われたこともないから。

想像する程度でしかないけど。

そんなことを言われても、困ると思う。好き好んでこの世界に来たわけじゃないんだし。

かなには、家で今か今かとかなの帰りを待ちわびてるだろう父親もいる。

かなの父親には、もう、かなしかいないから。

かなもそれを解っているから、仕事が終わった後の飲み会など一切断って律儀に家に帰っていた。

最近は仕事以外で遅くなることも許して貰い始めた矢先だったのに。


何も言わないでいると、かなは独白のように続けた。

「・・・好意を持って接して貰えるのは、すごく嬉しいの。・・・でも、何で私がって思わずにはいられないの・・・。こんな世界、来たかった訳じゃないのに!」

離れて見ている私にも解るほど、かなはゆっくりと深呼吸をして、自分を落ち着かせてるようだった。

「でも・・・それを言ったら・・・またサティさんみたいに・・・。人を傷つけたいわけじゃないの・・・。だから、言えない」

「かな・・・」


何も、言えない。

かける言葉がわからない、見つからない。

ただ、かながこれ以上苦しまなければいいのにと思う。かながこれ以上傷つかないようにと祈る。


「あきちゃんが一緒でよかった。私一人だったらきっと、ヒステリーばっかり起こしてたと思う」

かなは私の方を振り向き、笑ったような気がした。

「かな・・・。私もかなと一緒でよかったよ」

「同じだね」

「うん、同じ」

私はかなに近づき、一緒に窓の外を見てみた。二人で小さく笑いあう。


私は・・・この他愛もな時間が好きだ。

かなと、他愛もないことを喋って笑いあうような、こんな時間が。

本当なら、DVDを見ながらあーだこーだ言って笑って寝てたはずなのに。


部屋の中から見る夜空。さっきも見えた、大きな月と小さな月。

「・・・ここ、地球じゃないんだね」

「うん。そうみたい。さっきね、フーガさんに聞いたの。あの大きな月が銀月。小さな月が金月だって」

「銀月と金月か。綺麗だね」

「うん、綺麗」

夜空に浮かぶ二つの月。

二人でそれを見ていた。


小さな溜め息を、かなが吐いた。

「よし、寝ようか。あきちゃん」

そう言いながら、かなはベッドへと潜り込んだ。

私もかなに習って隣にある、今朝私が寝ていたベッドへと足を運ぶ。

柔らかなベッドに入り、かなの方を見る。かなも私の方を見ていた。

「じゃあ、明かり、消すね」

そう言って、かなはベッドの脇にある棚の上の燭台の蝋燭の火を消した。

「お休み、かな」

「お休みなさ、あきちゃん」



しばらくして、部屋の暗さに目が慣れてきた。

布団を肩までかけ、寝ようとするけれども睡魔は訪れそうになかった。

今日あったことを思い出すべきか、と一瞬だけ悩み思い出すのをやめることにした。

やり掛けのゲームなどや、今度の週末までに仕上げないといけない仕事を思い出して、やめた。

戻る方法のわからない今は、無駄な気がした。


「かな・・・起きてる?」

小さく、でも聞こえる程度に呟いてみる。

「・・・うん、あきちゃんも寝付けない?」

もぞもぞと隣のベッドで寝返りを打ったかなは、私の方をみた。

「まあね・・・」

TVも漫画もゲームもお酒も何もない。

いや、まあ多分この世界の人は早寝早起きなんだろうとは思う。多分。

しかし、こう・・・寝付けないと厳しいものがある。今まで、物が溢れかえっていた日常に居たから。

ぶっちゃけちゃと、眠くないので暇。


TV・・・そういえば、DVDあれの続きってなんだったんだろう・・・?

「ねえ、かな。あのDVDの続きってどうなってたの?」

かなの方を向き、聞いてみる。かなは驚いたような感じだった。そりゃそうか、いきなりのDVDの話題だし。

「え?DVDって、借りてきてた伊勢君のやつ?」

「うん、そう。私、大分昔に見たリメイク前のしか知らなくてさ」

かなは少し考え込むようにして教えてくれた。


伊勢君の演じる青年は、老人から不思議な『魔法の本』を受け取り、それを開き文字を読んだことでファンタジーの世界へと旅立っていく。そして、その先で目的を同じとする仲間と共に力を合わせて世界を救うというの王道のようなストーリー。

かなが言うには見所は演技はもちろんのこと、殺陣もかなり練習したってTVで言ってた通り、その出来具合はスタントマンなんて顔負けよ、だそうだ。

エンディングは最後に倒した魔王の城の地下にあった蔵書庫で、『魔法の本』を見つけ、それを開くことで元の世界へと戻ってくる。戻ってきたその手に残ったのは、役目を終えた『魔法の本』。開いて読んでも中にある文字は輝かず、そこに書かれているのは伊勢君が先ほどまで旅してきた冒険譚だった、という終わり方らしい。


一時間くらいは二人でお喋りをしていたんだと思う。

先にかなが脱落した。

お休みと言って、今度こそ本当に寝た。しばらくすると、かなの寝息が聞こえてきた。

それにつられるように、私も徐々に眠くなっていった。



うとうととしながら、少しだけDVDを見始めてこの世界に来てからの今までことを振り返る。

化け物に噛まれて、ベッドで起き、『神銀の騎士』や王子に会い、サティに世話され、若く綺麗な女王様と朝食の後、玉座の間での謁見。

それから、遠乗りをして、かなと一緒にいっぱい泣いて、日本式な露天風呂に入って、魔法と言うものが存在すると教えられ、夕餉というか晩餐会というような会場である大広間に・・・入らずに逃げ出した。

逃げた先は城内のどこかの中庭で、フーガが探しに来てくれた。フーガはかなたちに連絡を入れると言って近くの連絡所に出向いた。その間に、名前も教えてもらえなかった金色の人に会った。

フーガが声をかけたときには、居なくなってた謎の人。案内され部屋へと戻り、今に至ると。

明後日には、女神に会える『聖帝の祭日』が来るという話。



うとうとしながら思うこと。




神様なんて、信じない。


早く、家に帰りたい・・・。

かなちゃんとのフリートークな時間。主人公にとっては癒しの時間ですね。かなちゃんにとっても、癒しの時間。


書くペースがばらばらだけど、頑張っていきます。文法とかおかしくなければいいんですが・・・。ご指摘があれば良ければ御教え願います。

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