第十七話
私の言ったことをかなは理解してはいなかったようで、首をかしげていた。
「えっとね、だからさ。もし、もしよ、例えばの話なんだけど、考えすぎかもしれないけどさ、この国が崇めてる女神がね、邪神とかだったらどうする?」
「じゃしん・・・?悪い神様だったらどうするかってこと?」
かなはきょとんとしている。その頬は少し赤くなり始めていた。私もあまり肩まで浸かっているとのぼせそうなので、湯から上がり足だけ浸すことにした。
私ってば、考えすぎなのかな・・・?
「うん、そう。もしこの国の崇めてる女神が悪い神様だったらさ、それに加担するってことになるじゃない。流石に、人に危害を加えるようなことになったりとかは嫌でしょ?」
言いたいことが伝わったのか、かなはこくんと頷いてくれた。
こそっと、かなも足湯になってたりするが。
「だから、問題の一つとして女神が良い神様であるって証拠みたいなのが欲しいわけよね。で、次がこの世界に居るに当たっての基本的な常識とか。これについては女王の命令が役に立つってわけ」
「そうだよね・・・一般常識がなかったら、何こいつ変なやつって思われるし・・・」
「それに・・・月のものの処理の仕方とかも教えてもらわないと・・・かなは予定だと後どのくらい?私はまだしばらく猶予あるけど」
そう、度々思うこと昔の人とか異世界の住人とか女性の月のってどうしてるんだろうと。
そこのあたりも含めてしっかり覚えないといけない。
「実は・・・あと何日かで始まるはず・・・しっかり覚えないと」
「それで他にも問題があるとは思うんだけど、何分持ってる情報が少ないと思うのよね。今のところってさ、女神にやこの世界についての大まかなことだけじゃない。問題提起にしても情報がないと何が問題なのかすらも解らないと思うのよね」
「それじゃあ、当面の目的は情報集めってこと?」
かなの答えに対して私はうなずく。
「そう。これは予測でしかないけど、多分かなは私より行動が制限されると思うの。かなは内部の人から、私は接触できるようなら外部から情報を集める。こんな感じだけど、どう?」
「うん!わかった。頑張ろうね、あきちゃん!」
かなはぐっと両手で拳を作り、気合を入れてるようだった。
「それじゃ、腹が減っては戦はできぬ、ですね」
「ですね」
談笑しながら、サティが用意してくれた衣服に袖を通す。
用意してくれた衣服は、昼に比べると控えめな飾りで彩りも控えめだった。
下着の上に着るような襦袢があり、上着を脱げばその襦袢がパジャマになりそうだった。
ゆったりと湯船に浸かり、体も温まり、衣服を着たまでは良かった。
問題が発生した。
そう、ここはお城。
あの迷路のようにだだっ広い絶対迷うであろう広さのお城。
そして今ここには、私とかなだけ。
ここまで案内してくれたサティは居ません。
もう一度言います。私とかなだけ!
どうやって移動しようか・・・。
「か、かな・・・どうしようかね・・・?」
「うーん・・・私は道覚えてないから・・・もし、あきちゃんも覚えてないなら、二人で出歩くときっと迷うよね?」
「覚えてないから、二人で行くと迷子決定だね」
洋服を着替えて、脱衣室の外の廊下で二人で立ち往生。
「どうしよ・・・」
「どうしようか・・・」
途方に暮れている私とかな。廊下で二人して突っ立て居るだけ。
どのくらいの時間が流れたように感じたのだろうか。
「ベル・・・サティさんを呼ぶためのベルがあったよね?」
かなが思い出したように、私に聞いてきた。その表情は少し晴れやかだった。
「ああ・・・。そういえばそんなこと言ってたね。ベルどこにあったっけ?」
「部屋の中じゃ・・・」
「カナエ様!」
そう言って部屋に入ろうとするかなを、止める声が廊下に響いた。
「えっと・・・」
「クラウさん!」
はい。一回しか会ってないし、ほとんど話もしてない相手の名前を覚えてるほど頭のいい子じゃありませんよ、私。
かなを呼び止めたのは、かなが懸想してるアイドル伊勢君似のクラウ・・・なんだっけ。
とにかく、彼がかなを呼び止めた。そして、そのまま私たちのそばへと近づいてきました。
「どうしてここに?」
かなはお決まりな台詞を言います。
まあ、城内だから会うこともあるでしょ、とか私は思ってたりする。
近づいてきたクラウは物語の騎士がお姫様にするように、かなの前で片膝を床につきかなを見ながら言った。
「カナエ様。お待たせいたしました」
俄かにかなの頬が赤くなってる気がする。のぼせたとしておこう。
「サティに言われ、私がお迎えに参りました。どうやら、少々遅かったようで。申し訳ありません」
「い、いえ。そんな。ありがとうございます」
クラウはリディルと違い、爽やかな笑顔がとても良く似合っております。
とても、紳士な対応でかなは戸惑ってるようでした。
ちなみにですが・・・私は思いっきり無視されてる気がしないでもない。
まあ、口を挟むことはないから問題はないのですが・・・。
「さあ、夕餉のご用意が済んでおります。私が案内しますのでどうぞ」
といって、クラウは立ち上がって腕をさし出した。
映画とかで見る、パーティとかで男性が女性をエスコートするときのあの格好。
かなは戸惑いながら、どうすればいいの?って表情で私を見てきた。
私は頷くだけにしてみた。
エスコートされてきなさい。
私は少し離れて、見失わない程度についてくるから。
と目だけで訴える。かなに伝わると嬉しいなーとか思いながら。
かなは戸惑いつつも、クラウの腕をとった。クラウは嬉しそうに微笑んだ。
クラウの頬が赤いのも、気のせいだと思おう。それか夜のせいで見間違えたと。
クラウにエスコートされるかなを、十歩くらい距離をあけて追いかける。
二人仲良く歩く様は、物語に出てくる騎士とお姫様そのものみたいで・・・。
それ以上深く考えないように、暗くなった城内を二人を見失わない程度に見回してついていった。
そう、あまり深く考えないように。
そうしないと、自分が情けなくなりそうで。
やっぱり最初に思うことは。
神様の馬鹿やろうがー!!
前半と後半の文字のつめ具合が違うけど、だらだらと会話したりもするってことで。
どうも、主人公は人見知りしてる気がしないでもない。