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第十五話

「うわー、すっごーい!」

 かなが叫んだ先を見てみる。

 先ほどは湯気であまりよく見ていなかったが、お湯には所々に綺麗な花が浮かべてあった。

「綺麗……。素敵だね、かな」

「うん、早く入ろうよって……先に、体洗わないとね」

「お背中流しますよ」

 いつの間にか腕まくりの袖まくりしたサティが、側に控えていた。

 しかも、にこにこと笑顔で。

「ささささサティさん!? ど、どうしてここに!?」

 かな、動揺しまくり。

 メイドと聞いた時点で少しだけ、ほんの少しだけ予測はしてましたが。

 本当にするとは思っては無かったから、こっちも驚いていますけれども。

「サティさん。ご好意だけ受け取ります。かなも私も自分で体を洗えますから。石鹸やタオルとか借りてもいいでしょうか?」

「そうですか。それは残念です。石鹸とタオルですね。こちらをお使いくださいませ」

 動揺するのは内心で、表面には出さずに丁寧に断る。

 サティが大人しく引き下がって下さいました。

 よかった。食い下がられたら、どうしようかと。

 


 サティが持ってきてくれたものは、目の粗い感じのタオル。

 それと見慣れた感じの石鹸とは違う、まさに石。

 どこをどう触っても石の感触しかない、手に収まるサイズの楕円形の石鹸と呼んだ石を渡されました。

 これが本当の石鹸! いや、違うか……。

 普通の石鹸と同じように、タオルを水を付け軽く絞り、タオルと石鹸とをこすり合わせてみた。

 かなも同じようにしてみるが、泡が立たない。

「……? あのサティさん、これはどう使えば?」

 私もかなも、わからないから聞いてみた。

 どうやら使い方が、私たちの世界と違うのかもしれないし。

「石鹸は手桶に汲んだお湯に浸すのですよ。浸して少し混ぜて、そこにタオルをつけてください」

 言われた通りにしてみた。

 手桶にお湯を入れ、そこに石鹸を入れて混ぜタオルを浸す。

「そうしたら、そのタオルを少し揉んでください。そうすると、泡が立ちますので」

 浸したタオルを軽く絞って揉んでみる。

 すると、ミルキーなきめの細かそうな泡がどんどんたった。

 私とかなはそれで体を洗うことにした。

 きめの細かい泡に、かなは喜んでいた。

 私も肌の曲がり角になりそうな年齢です。このきめの細かい泡は嬉しい。

 シャンプーとリンスみたいなものも、サティに借りて全身をしっかりと洗った。

 




「うーーー。極楽~~」

「ほんと。気持ちいいねー」

 全身を洗って、湯船に浸かる。

 強烈にではなく、ほのかに香る花の香り。

「そういえば、サティさん。ハーブの薬湯って言ってた気がするけど……。この浮いてる花がハーブですか?」

 脱衣室の出入り口で待機しているサティに聞いてみた。

 かなもサティのほうを一緒に見ている。

「左様でございます。その花はハーブの一種で、薬湯に良く使われる種類です。効用は疲労回復と美容によかったかと記憶しておりますが……」

 かなと二人でまじまじと花を見る。

 浮かんでいる小さく花は控えめだけれども、可愛らしい花。

 お湯から一枚掬って、手にとってみた。



「カナエ様、アキネ様。湯加減はいかがでしょうか?」

 湯気は出ているが、思ったよりも熱くはない。

 どちらかと言えば、私は熱めが好みだ。

「もう少し熱いほうが好きかな。……かなはどう?」

「私も、もう少し熱いほうが好き」

 二人の意見を聞いていたサティは、にっこりと微笑んで言った。

「少しだけピリっとくるかもしれませんが、何も問題はありませんので。少しだけ我慢して下さいね」

 そう言うとサティは、露天風呂の天蓋になっている屋根の柱に近づき、何かを探し始めたようだった。

 すぐに目的のものが見つかったのか、柱の電気のスイッチがありそうな位置に蓋のような小さな窓が現れた。

 サティはその窓を開け、中にあったスイッチに触れるた。

「っきゃ」

「いたっ」

 サティがスイッチに触れるとすぐに、静電気のようなピリっとしたものが体に走った。

「……? 今の何?」

 ほんの一瞬だけだったが、サティの言った通りピリっとしたものがきた。

 それに気をとられていたが、少しするとお湯の温度が上がり、ぬるい温度からちょっとだけ熱めの温度へと変化した。

「暖かくなってる……」

 熱くなった露天風呂に浸かりながら、疑問が胸を締める。



「サティさん、今のは?」

 気になったんだろう、かながサティに聞いてみる。私も聞いてみたい。

 二人の視線がサティに集中する。サティはおどけた様にして、言った。





 そう、ここは異なる世界と書いて『異世界』。

 何があっても不思議じゃないんだ……。

 ちょっとだけ胸が躍る。

 今のが、科学なんかとかじゃなく、魔法とかだったらと。


「ふふふ、今の何だと思いますか?」

「わからないから聞いてるんです。もったいぶらずに、教えてください」

 サティとかなが言い合う。

 それを聞きながら、私の手は湯船に浮かぶ花を弄っている。

 

 ああ、どうか予想が当たってると嬉しいな。面白そうだし。

 サティさん、どうか裏切らないで、欲しい答えをください!


「今のはですね、魔法ですよ」


 今のこの瞬間、サティが女神に見えました。

 異なる世界、異世界万歳。


「魔法……ですか? さっきのピリってきたのが魔法?」

「はい、そうです。先ほどのは、魔法です」

 驚いているかなに面白そうに説明を始めるサティ。

 それを私は嬉しいと思いながら聞いている。



 だって、異世界だもん。

 やっぱり魔法とかあってなんぼでしょ!

 これで、亜人種とかいたらなぁ……。

 獣耳とかリアルで見てみたい気がする。後、尻尾。

 犬の尻尾とか猫の尻尾とか、ぱたぱた振られてるの見ると掴みたくて仕方ないけど。



「ここにスイッチがあって、微弱な魔力を流すことで、中にある増幅機により魔法による加熱でお湯の温度が上がったのです。魔力を流したので、ピリッときたはずですが人体に影響はございません。だからご安心くださいませ」

 サティは先ほど探し当てた、柱の蓋の部分を指しながら言った。

 電気じゃないけどスイッチがあったそうです。

「……魔法……」

 驚きというより、呆れ顔にも見える、かな。

「あの……この世界の人は皆魔法が使えるのですか?」

 使えたらいいな。

 もしかして、私やかなも使えるかもと、淡い期待。


「はい。この世界は大人も子供も、老人も。誰でも使えます。過去の文献に『神銀の乙女』も使っていたとありますから、きっとカナエ様やアキネ様も使えるはずです」




 うん、都合のいいときだけだが、こう言おう。

 神様ありがとう!

 魔法万歳!

 やっぱり、ゲーム好きは一度は思う。

 魔法を使ってみたい! と。

 やはり、人間一度は思う。

 魔法を使ってみたい! と。



 異世界に来たという状況は悲観すべきだが、私たちの世界では決して叶えることのできない夢が叶うかもしれない。

 魔法を使ってみたいが、過去の事例にも無い異端な存在の私には使えるのだろうか?

 サティは『神銀の乙女』と言った。

 私はそれに該当しない。

 もしかすると、私は使えないかもしれない。だが、かなは使えるかもしれない。



 もし私だけ使えなかったら、私グレてもいいですか?




やっとで魔法の存在が出てきました。大分悩んだ。

魔法の有る世界にするかどうか。

でも、やっぱし異世界物なんだし、魔法があったほうが面白いかなって思ったのでつい・・・。

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