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シスターとライには、またアリアに会いに来ること約束して私達は教会を出た。
別れ際、ルード様にはデルと呼ぶようお願いされた。家名で呼ばれるのは苦手らしい。チラッと見えたウィルの笑顔が少し怖かった理由が分からない。
「またねリル。学院に行く日は、あとで手紙で知らせるから。」
「うん待ってるね。またねウィル。」
私たちは笑顔で別れた。次に会える日が楽しみだ。
自分の部屋に着いて一息つく。今日は本当に色々な事があった。
ラナとネルには今日のお礼を伝え、お父様の今後の予定を確認して来てもらう。
ラナが入れてくれたお茶を飲んでいるとルーデルが部屋に入ってきた。どうやらお父様が呼んでいるらしい。
「お父様、失礼いたします。」
執務室に入ると、お父様は秘書達に囲まれながら忙しそうに仕事をしていた。
「リル。そこに座ってちょっと待ってて。」
執務机の前のソファに座ると、お父様の従者がすぐお菓子とお茶を出してくれた。
「リル、今日は色々あったみたいだね。リングドン家の三男に会ったんだって?」
お父様は書類を置くと私の向かいのソファに座った。お父様に情報が伝わるのが早い。
「はい。そのことでお父様に報告したいことがあります。」
私は孤児の兄妹に会ったこと、リングドン子爵家のウィルフレイ様にご助力いただいたこと、医療魔法の解析魔法を成功させたこと、薬師の2人のことを順番にお父様に説明した。
「うーん。」
お父様はいつになく難しい顔をしていた。
「リルはどうしたい?」
「私は誰にでも使えるように医療魔法の魔道具化を進めていきたいです。でも私には医学の知識はありません。ですから身近に意見を求められる相手がいてくれると助かります。」
「セルゲイ・ルードの息子か。」
「ルード騎士爵様は、魔法騎士なんですよね?有名な方なんですか?」
「そうだね。爵位こそ低位の騎士爵ではあるけれど、国王陛下にも認められた優秀な魔法騎士なんだ。この件はちょっとお父様に任せてもらおうかな。リングドン家にも話を通さなきゃならないし。心配はしなくて大丈夫だよ。」
流石は頼りになるお父様です。
「問題はリングドン家の息子か。」
ん?
「医療魔法の方は今までの方法で進めていこうか。魔道具化はレイズと話し合っておくから、後で解析魔法を見せてあげて。」
レイズは、お父様が手がける魔道具部門の責任者で、変わり者の天才。他国の魔道具商会に捨てられたところを拾ってきたらしい。
レイズの所にはリヴァン先生にも一緒に行ってもらおう。レイズは興奮し出すと私では対処できない。
「ではお父様、医療魔法の件はリヴァン先生と報告書を纏めておきますね。少しお時間ください。それと近日中に学院に行こうと思います。」
「分かった。学院に行く日がはっきり決まったら教えて。」
「わかりました。」
私は静かにドアを閉めて、執務室を後にした。
疲れた。今日は本当に長い一日だった。手紙は明日にして早く休もうと、私はふらふらしながらベッドへ向かった。