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「皆様、この度は大変お世話になりました。アルト嬢、また王都で会いましょう。」
「はい。ルード卿、お気をつけて。デルもね。」
「ああ、すぐに終わらせるから、王都で待っててくれ。」
「うん。デルの研究室を用意しておくね。」
デルはルード卿と共に魔物に汚染された村を浄化することになった。
騎士団もその間、王都への帰還を遅らせるそうだ。
今回私は無事に、ルード卿と契約の詳細を決めることが出来た。この後、お父様と騎士団本部が本契約を交わし、契約締結となる。
少し余計なお土産も付けてしまったけれど、お父様に良い報告ができるはずだ。
私は肩の荷を下ろして、ルード卿とデルを見送った。
「お嬢様、報告書をアルト子爵に送りました。」
「ありがとう、ヘンリー。これで私達も胸を張って帰れるわね。本当にお疲れ様。」
「はい。お嬢様も初めての交渉お疲れ様でした。顧客獲得も流石ですね。ですが、子爵への報告書にはお嬢様の行動を時系列で事細かに記載しましたので、覚悟された方がよろしいかと。」
え?
「皆さんに心配を掛けたのです。しっかり怒られて下さい。」
「は、はい。」
どうしよう、すごく帰りたくない。
折角軽くなった私の肩に今度は違う重圧がのし掛かった。
「リルメリア嬢、本当に後悔はないのか?」
「もう!あなたったらそんな事言って!父親なんですからウィルをちゃんと祝福してあげて下さい。」
晩餐の席で、リングドン子爵は何度も私にウィルとの婚約を確認してきた。
「正直に言って、君を迎え入れることが出来るのは嬉しい。だが本当にこの愚息でいいのか?」
「父上。」
ウィルが無表情で子爵に視線を送る。
「私は子爵とお父様が許してくださるならウィルとずっと一緒にいたいです。」
「もちろんずっと一緒にいるよ。父上、認めてくださいますよね?」
隣に座るウィルが私の髪先に恭しく触れる。
「きゃっ!」
「ゴホン!」
夫人の悲鳴と子爵の咳払いが同時に聞こえた。
そんな両親に気にも止めず、ウィルは私の髪を自身の指に絡めて満足そうにしている。
子爵は溜息を吐きつつ、温かい眼差しをウィルに向けていた。
「分かった。アルト子爵家に求婚状を送ろう。アンネ、私は子爵に会いに王都へ行く。その間、ここを頼むぞ。」
「何を言っているんですか⁈私も行きます!私が行かなくてどうするんです!こうしちゃいられないわ。早く準備しなくちゃ。」
夫人は食事の途中で慌てて食堂から出て行ってしまった。
「アンネが済まない。」
子爵とウィルが大きな溜息を吐いた。




