*リリー視点
怒りを抑え切れず、つい皆んなの前で薬師のブランネルを怒鳴りつけてしまった。
こんなのいつもの私らしくないわ。
私は反省しつつ、一度冷静になる為に部屋に戻ることにした。
「リリー様、大丈夫でしたか?ケイル様も朝から慌てて、何かあったんですか?」
メイドの1人が私の下に駆け寄ってきた。
「大丈夫よ。そんなに心配しないで。そうだ、皆んなでお茶にしましょうか。私の部屋に準備をお願い出来る?」
私は笑顔の中に少しだけ悲しい表情を見せて、メイド達の同情を誘った。まずは彼女達から上手く動いてもらいましょう。
「え?妖精ですか?」
「そうなの。きっと妖精達の怒りを買ってしまったのね。私にも何か出来ることはないかしら。私だって所長の娘だもの。ここを守る為ならなんだってするわ。」
私は先程見た光景をメイド達に話した。何も無かった場所にいきなりあれだけの薬草が生えてくるなんて、どう考えても異常だった。だから私は妖精の仕業にすることを思いついた。
元々この地は妖精の存在を信じている人が多いから、疑う人なんていないはず。
「妖精達はいったい何に怒っているのかしら。それが分かればきっと解決するはずよ。それに薬草が生えている所はお嬢様が閉じ込められている倉庫の近くなの。早く助けてあげないと。」
「リリー様、もしかして妖精達はアルト嬢に怒っているんじゃありませんか?」
「そうですよ!この地の薬草を不用意に扱ったからですよ。その傲慢さに妖精達が怒ったに違いありません。」
ふふ。上手く私の思惑通りに進んでくれたわ。ここに住む人達って妖精を怖がっている癖に畏敬の念も抱いているから、余所者の行動に対して厳しいところがあるのよね。
「そうなのかしら。でもだからと言ってこのままでは可哀想よ。それに彼女はアルト子爵家のご令嬢なのよ。ここでもしもの事があれば、リングドン子爵様だけじゃなくてウィルフレイ様にも処罰が与えられるかもしれないわ。私そんなの耐えられない。」
泣き出した私をメイド達が次々に慰めてくれる。
「リリー様はいつも本当に若様の事を想っているんですね。」
「リリー様の優しさがきっと妖精達にも届きますよ。」
彼女達の心地良い賛辞がここでの私の立場を固めてくれる。将来薬草園の管理者になるウィルフレイ様も私の存在を認めるしかなくなるわ。
「今、お父様達が対策を考えているはずだから、どうか皆んなも協力してね。」
涙を隠さず、私は彼女達に縋るようにお願いした。
「はい、リリー様。私達も今から同僚達に声を掛けてきますね。皆んなもリリー様に協力してくれますよ。」
一緒にお茶を飲んでいたメイド達は、次々に部屋を出て行った。
残された私は1人でゆっくりとお茶を楽しむ。
どうやら上手くいきそうね。
このままこの騒動の責任は全てお嬢様に取ってもらいましょう。
リングドン家にとって大切な薬草園に混乱をもたらした我儘なお嬢様とそんなお嬢様でさえ助け出そうとする心優しい私、ウィルフレイ様はどちらを選ぶかしら。
今からウィルフレイ様が帰ってくるのが楽しみね。
私はこのひとりの時間を優越感に浸りながら楽しんだ。




