表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/308

2-45

 日が登ってから少し経つと窓の外から人の声が聞こえてきた。

私は風魔法で外の声をこっそり拾う。


 初めの内はこの状況に困惑しているような会話が聞こえていた。やがてマリード所長の大声が響くようになると、薬師達が薬草を調べ始める。

薬師達が語る自論は的外れな方向へ進み、少しの間私を楽しませてくれた。


 リリーさんの可愛らしい声が聞こえると、1人の老練な声の人物が会話に加わってきた。


「リリー殿、この薬草は全て高濃度の魔力を帯びております。貴女がアルト嬢に盗まれたと言っていた薬草と同じですな。」

その人が厳しい口調でリリーさんを問い詰めている。

良かった。薬草の魔力に気付いてくれる人がいて。


「ふふ。」

私はつい声を出して笑ってしまった。



 私は手紙で倉庫の周りに沢山の薬草の種を蒔いて欲しいとデルに頼んでいた。

今朝、その種を一気に魔法で成長させた。

成長させた薬草はもちろん全てが魔力を帯びている。

今夜光を放つこの薬草を見たらどんな反応をするか楽しみだ。


その後、リリーさん達は言い争いになり、ここから離れていってしまったようだ。



 それからは人を集めて薬草の撤去作業が始まった。しかし、高濃度の魔力を持つ薬草は魔力の低い者には簡単に切ることが出来ない。

一向に進まない作業にマリード所長の怒声が響く。


その内、リーン先生とデルの声が聞こえてきた。リーン先生とデルも作業に参加させられているらしく、上手く切れないような演技をしながらモタモタと作業していた。

その2人のやる気の無い声に私は再び声を出して笑ってしまった。


 一日中私は、外の大変そうな声を聞きながら、優雅に読書の時間を楽しんだ。


 

 夜になると、窓から状況を知らせた手紙が届く。

先程まで外で作業していた人達は、光出した薬草を見て逃げ帰ってしまった。どうやら妖精の仕業だと思ったようだ。妖精に森に連れ去られるとでも思ったのだろう。


 静かになった外を見ながら、私は先程届いたリーン先生からの手紙を読んでいた。

先生からの手紙にはマリード所長達のこれまでの行動が書かれていた。


 マリード所長は表面上だけでもどうにかしようと薬草の撤去を命じたが朝から開始した作業も殆ど進んでいないようだ。

途中で私をここに閉じ込めている事を思い出したが、薬草が光出すのを目撃し、他の薬師達と共に逃げ帰ってしまったそうだ。

今は薬師のまとめ役をしているブランネルさんが薬師達と対策を検討しているらしい。


 リリーさんはブランネルさんと言い争いになってから部屋に引きこもって出て来ていない。相変わらず使用人達の信頼は得ているが、今の薬師達にリリーさんを気遣う余裕は無いそうだ。


 ブランネルさんは魔力を帯びた薬草をリリーさんには栽培出来ないと結論付けており、私と接触する方法を最優先で模索しているとリーン先生は手紙で注意喚起してくれた。



 初日は思惑通り、マリード所長達を分裂させることが出来た。

私は窓から手を出して、もう少し薬草の生息域を広げていく。

今朝のように淡い光が輝き、風に揺れてゆっくりと流れていった。

暗くてどこまで広がったか確認出来ないけれど、魔力の流れから広範囲に広がったはずだ。


私は窓を閉めて、手紙の最後の一文をもう一度読む。



『こっちは順調だから心配するな。リルメリアの好きなようにやってやれ。』


デルは回復薬の精製を頑張っているのだろう。私がここを出る頃には完成させているかもしれない。


私も頑張ろうと早速手紙を書き始めた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ