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*ディレイル視点

「これも失敗だ。」

ここ数日一度も成功していない回復薬の精製に苛立ちが募る。

でも、彼女が俺の可能性を信じて課してくれた試練だ。必ず成功させる。


もう一度作り直そうと籠に手を伸ばすと、中に薬草はもう残っていなかった。


「あれ?リルメリア?」

彼女が薬草を取りに行ってから随分経つ。

なんだか嫌な予感がして探しに行こうと席を立つと、深刻な顔をしたリーン先生が部屋に入ってきた。



「デル、一度中断してこっちに座りなさい。」

俺はリーン先生の前のソファに座り、先生の手元の手紙に視線を送る。


「デル、少し面倒な事が起きた。マリード所長がリルメリアさんを監禁した。」


「はあ?なんでですか!」

すぐに所長の所へ行こうとした俺を先生が止める。


「落ち着きなさい。リルメリアさんは無事だ。どうやら魔法で育成した薬草の出所が誤解されたようだ。」

マリード所長の娘がリルメリアに薬草を盗まれたと嘘を付いて父親に泣きついたらしい。

あの娘はまわりにいい顔をしながら、ここでの立場を確立していた。将来はウィルフレイ様の妻になって薬草園の女主人にでもなる気でいたんだろう。

ウィルフレイ様と仲の良いリルメリアが邪魔になって排除しようとしたか。馬鹿らしい。


「先生、今すぐ所長の所へ行って、リルメリアを助け出しましょう。」


「いや。今は行く必要はない。」

先生は俺に手の中の手紙を見せた。


リルメリアの優しい綺麗な筆跡で書かれた手紙には俺宛にいくつかの頼み事が書かれてあった。


「ははっ。」

思わず笑いが込み上げる。

悔しいけど、彼女はただ助けを待つお姫様にはなってくれないようだ。





『私はデルがどうしても欲しいから頑張るよ。』

リルメリアに言われた、俺を救い出してくれる魔法の言葉。


母を、家族を捨てた父に強制された騎士への道は、俺にとって絶望でしかなかった。

父から送られてくる手紙は死刑宣告のようで、開けることも出来なかった。


父親のようにはなりたくない。

大切な人も守れないような人間ではいたくない。

全てを失う生き方はしたくない。


必死で逃げてここまで来たのに、俺はまたあの絶望へ帰るのかと恐怖した。


そんな時に彼女はもう一度光ある道を見せてくれた。俺でも誰かを助けられる道を。


リルメリアは俺の希望そのものだ。




あれだけ騎士になりたくないと抵抗し続けてきたのに、彼女の騎士になりたいと思った自分に乾いた笑いがこぼれる。



でも彼女は自分を救い出してくれる王子も騎士も必要としていない。


だからリルメリアはいつも眩しいんだろう。

俺はそんな彼女の隣に居続けたい。

守れなくても、戦えなくても、彼女を癒せる存在でありたい。




「リーン先生、すぐに準備しましょう。」

いつか、当たり前のようにリルメリアが俺を頼ってくれるように。

今は俺が出来る事をする。


窓の外の青々した薬草畑を眺め、俺は彼女の勝利を願った。








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