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2-40

 私が植物の育成魔法を披露した後、ウィルはすぐに薬草園の一画を私達以外立ち入り禁止にした。

そこは私が借りている実験室に近く、日当たりの良い薬草畑だった。

しかし、以前使っていた畑よりも広くなった為人手が足りず、侍女のラナとネル、そしてヘンリーにも手伝ってもらうことになった。護衛のロバート達にはこの場所の警備をお願いしている。


「お嬢様、こちらの採取した薬草はどうしますか?」


「ありがとう、ネル。実験室に置いて来てくれる?他のものと混ざらないようにメモを付けておいてね。」


「かしこまりました。」

ラナとネルは成長した薬草の採取をしてくれていた。

ヘンリーは普段からお父様の秘書をしているためか、几帳面にデータを集めてくれている。



「リル、さっきからずっと魔法を使っているけど大丈夫?」


「うん。これで最後だから終わったら休憩にしようか。」

ウィルはみんなの仕事を手伝いつつ、度々私の様子を確認しに来る。

私を心配してくれているのか、魔法を監視しているのか、どちらとも言えず私は複雑な心境だ。






「リルメリア、あとどれくらい残ってるんだ?今リーン先生がデータを集計してる。」


「分かった。これで終わりだよ。」

私は近くに置いた籠の中を確認して、最後の種を土に埋めた。

さあ、これで最後。集中して魔法を発動する。触れている土がほんのりと暖かくなった。


「綺麗だな。」


「え?」

無事に最後の薬草を育成し終えて安堵の息を吐き出すと、隣にいたデルの呟きが聞こえた。


「あっいや。リルメリアの魔法は綺麗だなって。」

デルが焦りながら私の魔法を誉めてくれた。嬉しい。


「リルメリアが魔法を使うと、瞳が輝くんだ。夜空の月が瞳に浮かぶみたいに。」

初めてそんな風に言われた。魔法を使う時、自分を見ることは無いから少し恥ずかしい。

デルを見ると、デルの顔も赤くなっていた。


「あの、リーン先生の所に行こっか。」


「そ、そうだな。」

お互いおかしな態度のまま、実験室へと向かった。







「お疲れ様。最後のデータだけ取り終えてしまうからリルメリアさんは先に休憩してて。デルはこっちの手伝いを頼むよ。」


「はい、先生。リルメリアは行ってていいぞ。」


「分かった。先に休憩してるね。」

リーン先生に育成した薬草を渡して、私はテラスへと続くドアを出た。




「お疲れ様です、お嬢様。今お茶をお入れしますね。」

ラナとネルがテラスに軽食を準備してくれていた。


「ありがとう、ネル。でも2人もちゃんと休憩してね。」


「はい。ありがとうございます。」

いつも私を支えてくれる2人には本当に感謝している。





「リル、お疲れ様。やっと一段落したね。」

私より少し遅れてウィルもテラスへやって来た。


「ウィルもお疲れ様。手伝ってくれてありがとう。」


「あれ?何か良い事でもあった?すごく可愛い表情してるよ。」


「え?」

ウィルの指摘に私は両手を頬に当てて自分の顔を確かめた。


「さっき嬉しいことを言って貰えたからかな。」

デルに魔法を使っている自分を褒められたのは少し誇らしかった。


「へー。後で言った本人に聞いてみようかな。」

詳しく話していないのに、ウィルはどうしてデルだと分かったのだろか。






「お疲れ様です。お嬢様、ウィルフレイ様。」

お茶を飲んでいると、ヘンリーが紙の束を持ってこちらへやって来た。


「お嬢様、集計が終わりました。こちらが結果を纏めた報告書でございます。」


「ありがとう、ヘンリー。アルト商会の仕事もあるのに手伝わせちゃってごめんね。」

ヘンリーが今回私に随行したのは、アルト商会とリングドン家の事業提携を水面下でまとめる為だった。本来であれば、お父様の部下が複数人で行うところを、私を目立たないようにする為にヘンリーが1人でやらなければならないことになってしまった。ただでさえ負担が大きいヘンリーに今は私の手伝いまでさせている。本当に申し訳ない。


「いえ、お嬢様の隠蔽もアルト子爵に任された仕事ですから。」


え?隠蔽?


「えっと、ヘンリーもちゃんと休憩は取ってね。」


「はい。」


横からはウィルの笑う声が聞こえた。










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