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ライは私と目が合うと、ゆっくりとこちらに近づいてきた。
背筋を伸ばし私を見つめるライは、思った以上に身長が高かった。
以前、無造作に伸ばしっぱなしだった前髪は綺麗に整えられ、真紅の瞳に光が写り込んでいた。
「あの時は俺、泣いてばかりではっきりお礼も言えなくて申し訳ありませんでした。お嬢様、あの時はアリアを助けていただきありがとうございました。いつか必ずこの恩はお返しします。」
ライが深々と頭を下げた。
「私も!お姉さんありがとうございました。」
私に抱きついていたアリアもライに倣い可愛くお辞儀をしてくれた。
「良かった。素敵な兄妹の役に立てて。ライ、恩なんて気にしないで。これからもアリアを守ってあげてね。」
「はい。でもこれは俺の目標でもあるんです。必ず、お嬢様を守れる存在になります。」
ライの決意を秘めた真紅の瞳が真っ直ぐ私に向けられる。
視線を逸らすことが出来ない私の下にウィルが割り込んできた。
「リルは僕が守るから大丈夫だよ。君はちゃんと妹を守ってあげてね。」
「これからは、大切なものは全て守ります。」
ライもウィルも笑顔は無く、淡々と話している。ライラはそんな2人を気にする事なく笑顔だった。
もう話すことはないと、ウィルは私の方を向いた。
「リル、暗くなる前にそろそろ帰ろうか。」
そう言ってウィルはいつもより強引に私の手を握る。
「お姉さん、もう帰っちゃうの?」
アリアが寂しそうに私を見上げた。
「今日はアリアの様子を見に来たの。また遊びに来てもいい?」
「もちろん。アリア、お姉さんと遊びたい!」
「うん、約束ね。また来るから。」
私はアリアの頭をそっと撫でた。
「お嬢様。俺もお待ちしてます。」
アリアの横に並んだライがそっと囁いた。
ウィルに促され、私達は足早に馬車へと向かった。
「ウィル、ごめんね。もしかしてこの後予定あった?」
いつもより強引なエスコートを疑問に思い、馬車の中で素直に聞いてみた。
中々話出さないウィルに、怒らせてしまったかと不安に思っていると、ごめんと囁くような声が聞こえた。
「嫉妬したんだ。リルを守るのは僕なのに。」
「ウィルはいつも私を守ってくれているでしょう?」
ウィルはいつだって私に優しい。
ウィルは下げていた視線を私に向けると、身を乗り出して言った。
「リル。また教会に行く時は、僕も行くからね。必ず約束して。1人では行かないって。」
ウィルの有無を言わさぬ雰囲気に、私はただ、はいと答える事しか出来なかった。




